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カルロの頼み事
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よく見ると、カルロの後ろにはエウジェニオもいた。
「こんな時間に何の用だい?」
ピノキオは冷静を装って問いかけたが、つい語調がきつくなった。
悪気はなかったとはいえ結構な失言をしてくれた旅人と、長年の付き合いがあるにも関わらず何の断りも無しに自分の秘密を暴露した知人が相手とあっては無理もないことだ。
「カルロさんが、お前に頼みたいことがあるそうだ」
言い捨てるようにして、エウジェニオは去っていった。
半ば取り残された格好のカルロは、気まずそうな、それでいてどこか嬉しそうな顔でピノキオを見つめた。
「それで、いったい何の用です?忘れ物でもなさいましたか?」
見つめられたピノキオは、仕返しにも近い形でカルロを見つめた。
なるだけ穏やかに振舞ってはみたけれど、カルロの反応を見るに、お世辞にも朗らかとはいえない顔になっているであろうことが、ピノキオにはよくわかった。
「あ…ピノキオさんは、この町に住まわれてかなり長いのですよね?」
「ええ、それが何か?」
なんだってそんなことを聞いてくるのだろう。
頭に疑問符を浮かべながら、ピノキオは訝しんだ。
「よろしければ、明日この町を案内してくださいませんか?」
「明日は仕事です」
ピノキオはとっさに嘘をついた。
それと同時に、おもむろに鼻を触った。
子どもの頃には、嘘をつくとどこまでも伸び続けた鼻は、今やピクリとも動かない。
「え?エウジェニオさんは、ピノキオさんは明日は休みだと伺ったのですけれど、違うのですか?」
──エウジェニオめ…
あの男ときたら、どこまで自分の秘密を漏らせば気が済むのだろう。
確かにピノキオは明日は休みだが、せっかくの休みをそんなことで潰したくはない。
そもそも、なんだってこんな辺鄙な町にやってきて、案内まで頼み込むのだろう。
観光地じゃあるまいし、はっきり言って、この町に案内できるような場所などない。
「そういえば、ここには何の用があっていらしたのでしょう?こんな何もないところに、何でわざわざ?」
ピノキオは返答をはぐらかすため、カルロの質問に質問で返した。
「実は…ワケあってここいらで働くことになったのです。働くまでにはまだ日にちがあるのですけれど、初日までにここでのことを知っておこうと思ったのです」
なるほど、そういうことか。
それなら合点がいく。
推測するに、カルロには親に勘当されたとか、何か取り返しのつかない悪さをして法に触れたとか、のっぴきならない事情があるのだろう。
それ以外で、こんな寂れた町にわざわざやってくる理由が思いつかない。
ピノキオにこんなことを頼むのは、この町では異端扱いされているに等しいから、どことなく共感するものを感じてのことかもしれない。
そう考えると、ピノキオははらわたが煮えくりかえるような気持ちになった。
「こんな時間に何の用だい?」
ピノキオは冷静を装って問いかけたが、つい語調がきつくなった。
悪気はなかったとはいえ結構な失言をしてくれた旅人と、長年の付き合いがあるにも関わらず何の断りも無しに自分の秘密を暴露した知人が相手とあっては無理もないことだ。
「カルロさんが、お前に頼みたいことがあるそうだ」
言い捨てるようにして、エウジェニオは去っていった。
半ば取り残された格好のカルロは、気まずそうな、それでいてどこか嬉しそうな顔でピノキオを見つめた。
「それで、いったい何の用です?忘れ物でもなさいましたか?」
見つめられたピノキオは、仕返しにも近い形でカルロを見つめた。
なるだけ穏やかに振舞ってはみたけれど、カルロの反応を見るに、お世辞にも朗らかとはいえない顔になっているであろうことが、ピノキオにはよくわかった。
「あ…ピノキオさんは、この町に住まわれてかなり長いのですよね?」
「ええ、それが何か?」
なんだってそんなことを聞いてくるのだろう。
頭に疑問符を浮かべながら、ピノキオは訝しんだ。
「よろしければ、明日この町を案内してくださいませんか?」
「明日は仕事です」
ピノキオはとっさに嘘をついた。
それと同時に、おもむろに鼻を触った。
子どもの頃には、嘘をつくとどこまでも伸び続けた鼻は、今やピクリとも動かない。
「え?エウジェニオさんは、ピノキオさんは明日は休みだと伺ったのですけれど、違うのですか?」
──エウジェニオめ…
あの男ときたら、どこまで自分の秘密を漏らせば気が済むのだろう。
確かにピノキオは明日は休みだが、せっかくの休みをそんなことで潰したくはない。
そもそも、なんだってこんな辺鄙な町にやってきて、案内まで頼み込むのだろう。
観光地じゃあるまいし、はっきり言って、この町に案内できるような場所などない。
「そういえば、ここには何の用があっていらしたのでしょう?こんな何もないところに、何でわざわざ?」
ピノキオは返答をはぐらかすため、カルロの質問に質問で返した。
「実は…ワケあってここいらで働くことになったのです。働くまでにはまだ日にちがあるのですけれど、初日までにここでのことを知っておこうと思ったのです」
なるほど、そういうことか。
それなら合点がいく。
推測するに、カルロには親に勘当されたとか、何か取り返しのつかない悪さをして法に触れたとか、のっぴきならない事情があるのだろう。
それ以外で、こんな寂れた町にわざわざやってくる理由が思いつかない。
ピノキオにこんなことを頼むのは、この町では異端扱いされているに等しいから、どことなく共感するものを感じてのことかもしれない。
そう考えると、ピノキオははらわたが煮えくりかえるような気持ちになった。
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