ピノキオは人間になった後、幸せだったのか？

人形の頃のピノキオ

ジェペット曰く、目ができた後はジェペットをジロジロと見つめるし、鼻ができたらぐんぐん伸びてきて、切っても切ってもまた伸びるを繰り返す。
口ができたら、何が面白いのかゲラゲラ笑い出したり舌を出す。
手ができればジェペットのカツラを剥ぎ取る。
足ができれば蹴っ飛ばす。
ジェペットからしてみれば、文字通りの踏んだり蹴ったりである。

そんなことを繰り返しながら、体が完全にできあがった途端、ピノキオは一目散に外に逃げた。
ジェペットはあわてて追いかけて、ピノキオを連れ戻そうとした。
しかし、ここでジェペットはとんだ災難に遭った。




すぐにピノキオに追いついたジェペットは、ピノキオの首根っこを掴んで怒鳴り散らした。
その怒り様ときたら。
あまりに大きな声を出したものだから、その様子を見ていた人々の目には、ジェペットがピノキオをいじめているように見えたらしい。
そのせいで、ジェペットは駆けつけた警官に連行されてしまって、帰ってくるまでにかなりの時間を要したのだった。

ジェペットが解放されて帰ってきた後だって、ピノキオは何かとジェペットを困らせた。

ピノキオときたら、ジェペットが警官に連行されて留守の間に居眠りしていたのだ。
しかも、せっかくジェペットが丹精こめて作ってくれた脚を火鉢に置いて眠ってしまったものだから、脚は焼き焦げて無くなってしまった。
そんなだから、ジェペットは帰ってきて早々にピノキオの脚を作り直すという重労働を課せられる羽目になった。

この上でさらにピノキオはやりたい放題を繰り返す。
ジェペットは、ピノキオの将来を案じて学をつけさせるため、学校に行かせようと考えた。
しかし、そのために必要な教科書がない。
そこでジェペットは、わざわざ質屋まで出向いて自分の上着を質入れして教科書を買ってくれた。
寒い時期にこんなことをしたものだから、この後で体調を崩したと後になって知った。

ところが、そのありがたみが理解できなかったピノキオは、新しい教科書を質入れしてお金に換えて、町に来ていた人形劇を見るための入場料に使ってしまった。

それからだって悪さは続いた。
くだらない詐欺に引っかかって追い剥ぎに遭ったり、またしても学校に行かずに夜の街に行って、子どもだというのに酒をのんだりタバコを吸ったりのやりたい放題。
結果、また悪い大人に騙されて無給の強制労働を課せられ、酷使された。

青い髪の女神に会ったのは、その最中であった。
彼女は不思議な力を持つ女性で、死にかけていたピノキオを蘇生させてみせた。
蘇生したピノキオはなんとか逃げ切って、命からがら家に帰った。

しかし、家には誰もいなかった。
なぜなら、ピノキオが夜の街に行ってしまって行方がわからなくなったとき、ジェペットは必死になって探し回っていたのだから。

探しに探し回っているうちに、ジェペットが大きなサメに食われたとの風の便りを聞くと、ピノキオはようやく目を覚ました。