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第2編 消えた人々の行方
親不孝者
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モールはかつて、同時に何人もの女の子に手を出して多額の金を無心していた。
しかし、そんなことを繰り返した結果、女の子たちに愛想を尽かされて、もはやこの街でモールに金を貸す者はいなくなった。
ガブリエルに至っては、一度たりともモールと金のやり取りをしたことがない。
今後するつもりもない。
うわべでは仲良くやっているけれど、あまり深く関わらないように距離を取っている。
ガブリエルはモールと同様この街の生まれなので、モールのことを幼い頃から知っていた。
モールの父親は早くに亡くなり、彼は母親に女手ひとつで育てられた。
モールの母親は、あちこちで悪さばかり働くひとり息子にかなり悩んでいたようで、ときに息子の借金を肩代わりしたり、代わりに謝罪することもあった。
そんな心労の蓄積が、よほど体に堪えたのだろう。
モールの母親は若くしてこの世を去り、モールは現在、母親が残した古い一軒家でひとりで暮らしている。
それ以降、この家の前を通ると酒の臭いがするようになった。
以前は母親が制止していたおかげでどうにかなっていたモールの酒癖が、母親がいなくなったことによって一気に悪化したのだ。
モールときたら、母親が死ぬと即座に質屋に走っていき、母親の数少ない持ち物をすべて売りに出したのだという。
おまけに、母親の形見とも言える遺品の数々と引き換えに得た金は、酒やギャンブルであっという間に消えて無くなったというから聞いて呆れる。
後にそれを知ったとき、ガブリエルは吐き気がした。
苦労して育ててくれたはずの母親の恩を、こんな形で仇で返す。
そんなモールのことを、ガブリエルはどうしても好きになれない。
早くに父親を亡くして、母親に女手ひとつで育てられたのはガブリエルも同じなだけに、理解に苦しんだ。
今では全員が全員縁を切っているとはいえ、モールに心惹かれた女性たちさえ、ガブリエルには受け入れがたい存在だった。
「女の子ってさ、誰がどう見てもよろしくない男が好きだよね」
母親が作ってくれた料理をたべながら、ガブリエルはモールに騙されて泣いていた女性のことを思い出した。
モールもモールだが、女性も女性のような気がしてならなかった。
「あらやだ、男だってガサツで荒っぽい女に心惹かれてたりするじゃない。お互い様よ」
「そうかなあ…」
ガブリエルは、あまり納得いってない様子で食事を続けた。
「それよりも、あなたの言ってるジャンティーという子が心配ねえ。この街の人たちはあの男の危なっかしさに気づいてるからいいけれど、その子は違うのでしょう?」
「そうだよ。ジャンティーは別のところから来たんだ。だから、モールのことはよく知らない。それにジャンティーは育ちがいいから、なおさら心配だよ。いいとこのお坊っちゃんって、ワルな男が新鮮に見えて惹かれちゃうことがあるらしいし。モールさ、なーんかジャンティーに慣れ慣れしい感じがするんだよね。ありゃあ、何か企んでるのかも」
そうこうしているうち、ガブリエルは食事を終えた。
そんなガブリエルの心配やモールの画策などつゆ知らず、ジャンティーはまた街まで舞い戻ってきた。
しかし、そんなことを繰り返した結果、女の子たちに愛想を尽かされて、もはやこの街でモールに金を貸す者はいなくなった。
ガブリエルに至っては、一度たりともモールと金のやり取りをしたことがない。
今後するつもりもない。
うわべでは仲良くやっているけれど、あまり深く関わらないように距離を取っている。
ガブリエルはモールと同様この街の生まれなので、モールのことを幼い頃から知っていた。
モールの父親は早くに亡くなり、彼は母親に女手ひとつで育てられた。
モールの母親は、あちこちで悪さばかり働くひとり息子にかなり悩んでいたようで、ときに息子の借金を肩代わりしたり、代わりに謝罪することもあった。
そんな心労の蓄積が、よほど体に堪えたのだろう。
モールの母親は若くしてこの世を去り、モールは現在、母親が残した古い一軒家でひとりで暮らしている。
それ以降、この家の前を通ると酒の臭いがするようになった。
以前は母親が制止していたおかげでどうにかなっていたモールの酒癖が、母親がいなくなったことによって一気に悪化したのだ。
モールときたら、母親が死ぬと即座に質屋に走っていき、母親の数少ない持ち物をすべて売りに出したのだという。
おまけに、母親の形見とも言える遺品の数々と引き換えに得た金は、酒やギャンブルであっという間に消えて無くなったというから聞いて呆れる。
後にそれを知ったとき、ガブリエルは吐き気がした。
苦労して育ててくれたはずの母親の恩を、こんな形で仇で返す。
そんなモールのことを、ガブリエルはどうしても好きになれない。
早くに父親を亡くして、母親に女手ひとつで育てられたのはガブリエルも同じなだけに、理解に苦しんだ。
今では全員が全員縁を切っているとはいえ、モールに心惹かれた女性たちさえ、ガブリエルには受け入れがたい存在だった。
「女の子ってさ、誰がどう見てもよろしくない男が好きだよね」
母親が作ってくれた料理をたべながら、ガブリエルはモールに騙されて泣いていた女性のことを思い出した。
モールもモールだが、女性も女性のような気がしてならなかった。
「あらやだ、男だってガサツで荒っぽい女に心惹かれてたりするじゃない。お互い様よ」
「そうかなあ…」
ガブリエルは、あまり納得いってない様子で食事を続けた。
「それよりも、あなたの言ってるジャンティーという子が心配ねえ。この街の人たちはあの男の危なっかしさに気づいてるからいいけれど、その子は違うのでしょう?」
「そうだよ。ジャンティーは別のところから来たんだ。だから、モールのことはよく知らない。それにジャンティーは育ちがいいから、なおさら心配だよ。いいとこのお坊っちゃんって、ワルな男が新鮮に見えて惹かれちゃうことがあるらしいし。モールさ、なーんかジャンティーに慣れ慣れしい感じがするんだよね。ありゃあ、何か企んでるのかも」
そうこうしているうち、ガブリエルは食事を終えた。
そんなガブリエルの心配やモールの画策などつゆ知らず、ジャンティーはまた街まで舞い戻ってきた。
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