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ライダ様との出会いから現在まで
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「お金の心配など要らない。僕が渡せば問題ないのだろう? 君たちが半年ほど過ごせるくらいの資金は出す覚悟だ。これで手を打たないか」
ライダ様の言い放った台詞は、思ってもみないものだった。
彼が私たちのために、出資すると言っているのだ。
明らかに怪しい。そこまで執着する理由がわからない。
確かにライダ様は地位も高く、財産も豊富な家柄だ。
けれど、半年以上の生活費の面倒をこの男が無性で見てくれるわけがない。
土地目当てだとしても、売ってしまったし、開発に時間をかけて農業でもすれば彼なら半年あれば確かに元は取れるだろうが、何か裏があっての提案であることは明白だった。
一番は彼の顔である。
嘘をついているのか、本音を喋っているのか、普段はポーカーフェースでわからないライダ様だが、感情的な口論となると色々とさらけ出してしまっている。
目が試すように、欺くように笑っているのだ。
仮にも愛する人に向ける目ではないことは確かだ。
やはり狙いは、チェルシーなのだろうか?
理由もよくわからないため、困惑することしかできず、しばらく頭を悩ませていると、
『スタスタスタ……』という足音と共に、『キンッ』鉄と鉄が擦り合わさるような高い音が静寂を破るように響いた。
何事かと思い、視界から逸らされていたはずの意識がすぐに戻る。
そして、目を疑った。
「ラルダ、何をしているの……?!」
「もしもの時はお守りする約束だったでしょう」
先ほどまで絶望したように、地面に膝をついていたラルダが、ライダ様に挑戦するかのように短い短剣で攻防を繰り広げていた。
一方でライダ様は、しっかりとした剣。刃もよく磨かれているようで煌びやかな光を放っている。
「ラルダ……お前、僕に逆らう気かな? 家名に泥を塗っただけでなく、こんなことまでするとはね……お仕置きが必要なようだ」
言いながら、ライダ様は大きな素振りをとって、ラルダの頭上から剣を振りかざした。
間一髪のところでそれを止めるラルダ。
短剣でこれだけ凌げているのは、戦闘技術の高さからくるものだろう。
それにしても、どうしてラルダが……あんなにも苦しそうにしていた彼が今私のために立ち上がっている。
逃げ腰になって、何かとれる対策はないだろうかと思案にふけっていた私とは違う。
彼は絶望を受け入れた上で、更に立ち向かっている。
最後の砦は、チェルシーだけだと思っていたけれど、そうではないみたいだ。
私はこんな状況だというのに、必死に戦っているラルダの姿に目を奪われていた。
「とにかくここは僕が引き受けます! アマンダ様は逃げて!」
ラルダの威勢の良い声が耳に届くと同時に、固まっていた私の体は動き出した。
「どうか御無事で、ラルダ……!」
ライダ様の言い放った台詞は、思ってもみないものだった。
彼が私たちのために、出資すると言っているのだ。
明らかに怪しい。そこまで執着する理由がわからない。
確かにライダ様は地位も高く、財産も豊富な家柄だ。
けれど、半年以上の生活費の面倒をこの男が無性で見てくれるわけがない。
土地目当てだとしても、売ってしまったし、開発に時間をかけて農業でもすれば彼なら半年あれば確かに元は取れるだろうが、何か裏があっての提案であることは明白だった。
一番は彼の顔である。
嘘をついているのか、本音を喋っているのか、普段はポーカーフェースでわからないライダ様だが、感情的な口論となると色々とさらけ出してしまっている。
目が試すように、欺くように笑っているのだ。
仮にも愛する人に向ける目ではないことは確かだ。
やはり狙いは、チェルシーなのだろうか?
理由もよくわからないため、困惑することしかできず、しばらく頭を悩ませていると、
『スタスタスタ……』という足音と共に、『キンッ』鉄と鉄が擦り合わさるような高い音が静寂を破るように響いた。
何事かと思い、視界から逸らされていたはずの意識がすぐに戻る。
そして、目を疑った。
「ラルダ、何をしているの……?!」
「もしもの時はお守りする約束だったでしょう」
先ほどまで絶望したように、地面に膝をついていたラルダが、ライダ様に挑戦するかのように短い短剣で攻防を繰り広げていた。
一方でライダ様は、しっかりとした剣。刃もよく磨かれているようで煌びやかな光を放っている。
「ラルダ……お前、僕に逆らう気かな? 家名に泥を塗っただけでなく、こんなことまでするとはね……お仕置きが必要なようだ」
言いながら、ライダ様は大きな素振りをとって、ラルダの頭上から剣を振りかざした。
間一髪のところでそれを止めるラルダ。
短剣でこれだけ凌げているのは、戦闘技術の高さからくるものだろう。
それにしても、どうしてラルダが……あんなにも苦しそうにしていた彼が今私のために立ち上がっている。
逃げ腰になって、何かとれる対策はないだろうかと思案にふけっていた私とは違う。
彼は絶望を受け入れた上で、更に立ち向かっている。
最後の砦は、チェルシーだけだと思っていたけれど、そうではないみたいだ。
私はこんな状況だというのに、必死に戦っているラルダの姿に目を奪われていた。
「とにかくここは僕が引き受けます! アマンダ様は逃げて!」
ラルダの威勢の良い声が耳に届くと同時に、固まっていた私の体は動き出した。
「どうか御無事で、ラルダ……!」
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