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ライダ様との出会いから現在まで
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「アマンダ様、どうしてここに……。しかも、こんな時間に珍しいですね」
彼は私を見るなり驚いている様子だ。
「そんな驚くことないでしょう? 私は幽霊か何かですの?」
「あぁ、いいえ。そういうわけではなく、お忙しいだろうに」
心配そうに呟く彼に対して私は、
「忙しい日ももちろんありますけど、いつもそうってわけじゃありません」
「ですが、名高い貴族様ですし……私のような平民の出店などに足を運ばれるなんて……申し訳なくて」
彼はいつもこんな感じだ。
自分のことを相当下に見ているのだ。
そもそも私たちは名高いと言われるほどの貴族ではない。
それに、貴族が商店街に足を運んでいけない理由なんてものもない。
「そんな発言する方がよっぽど失礼だと思いませんの? 久々に会いに来たというのにちょっと萎えてしまいます」
「アハハ……申し訳ありません。本当そうですよね。わざわざ足を運んでくださったのにご無礼すみません。ちょうど今日、珍しいフルーツが手に入ったので受け取ってください」
彼はそう言うと、お金も払っていない私に袋詰めした果物をそっと渡した。
謙遜しすぎる点を除いては、素晴らしい人柄の持ち主だ。
「毎度のこと助かりますわ……。貴族の身ではあるけれど財産がある方ではないし」
「何をおっしゃいますか、ここら辺に住む民はみんなアマンダ様たちのことを尊敬していますし誇りに思ってますよ」
「ありがとう」
彼に会うのは一カ月ぶりくらい。かれこれ、十数回は会っている。
出会ったのは、二年前のこと。
この商店街でたまたま見かけたのがきっかけだった。
フルーツ農家をしているらしく、中でも彼は他所では売っていない珍しい果物を取り扱っている。
それが目に止まったというわけだ。
いつしか私は彼に会うのが楽しみになっていて、好意を寄せるようになっていた。
「ところでアマンダ様、今日は何を話しましょうか」
彼は毎度のこと顔を見せると、楽しい話をしてくれたり、相談を聞いてくれたりする。面白い人なのだ。
これが彼を好きになるきっかけだった。
「そのことなのだけど……」
「どうしたんですか、何が言いづらいご様子ですが」
「ーー協力してほしいことがあるのラルダ」
彼の名はーーラルダ。
私は彼の瞳をじっと見つめながら、強く言葉を放った。
彼は私を見るなり驚いている様子だ。
「そんな驚くことないでしょう? 私は幽霊か何かですの?」
「あぁ、いいえ。そういうわけではなく、お忙しいだろうに」
心配そうに呟く彼に対して私は、
「忙しい日ももちろんありますけど、いつもそうってわけじゃありません」
「ですが、名高い貴族様ですし……私のような平民の出店などに足を運ばれるなんて……申し訳なくて」
彼はいつもこんな感じだ。
自分のことを相当下に見ているのだ。
そもそも私たちは名高いと言われるほどの貴族ではない。
それに、貴族が商店街に足を運んでいけない理由なんてものもない。
「そんな発言する方がよっぽど失礼だと思いませんの? 久々に会いに来たというのにちょっと萎えてしまいます」
「アハハ……申し訳ありません。本当そうですよね。わざわざ足を運んでくださったのにご無礼すみません。ちょうど今日、珍しいフルーツが手に入ったので受け取ってください」
彼はそう言うと、お金も払っていない私に袋詰めした果物をそっと渡した。
謙遜しすぎる点を除いては、素晴らしい人柄の持ち主だ。
「毎度のこと助かりますわ……。貴族の身ではあるけれど財産がある方ではないし」
「何をおっしゃいますか、ここら辺に住む民はみんなアマンダ様たちのことを尊敬していますし誇りに思ってますよ」
「ありがとう」
彼に会うのは一カ月ぶりくらい。かれこれ、十数回は会っている。
出会ったのは、二年前のこと。
この商店街でたまたま見かけたのがきっかけだった。
フルーツ農家をしているらしく、中でも彼は他所では売っていない珍しい果物を取り扱っている。
それが目に止まったというわけだ。
いつしか私は彼に会うのが楽しみになっていて、好意を寄せるようになっていた。
「ところでアマンダ様、今日は何を話しましょうか」
彼は毎度のこと顔を見せると、楽しい話をしてくれたり、相談を聞いてくれたりする。面白い人なのだ。
これが彼を好きになるきっかけだった。
「そのことなのだけど……」
「どうしたんですか、何が言いづらいご様子ですが」
「ーー協力してほしいことがあるのラルダ」
彼の名はーーラルダ。
私は彼の瞳をじっと見つめながら、強く言葉を放った。
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