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第二幕 あやかし兎の京都裏町、舞妓編 ~祇園に咲く真紅の紫陽花
10.アヤカシ刑事部・捜査第七課(1)
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――アヤカシ刑事部、捜査第七課、東堂切目(とうどう・きりめ)。
男性刑事さんから、名詞を渡されました。
ここは表京都の警察本部。今回の騒動を担当してくれる刑事さんが「見せたいものがある」とハルを呼んだらしく、二人で訪問しました。アヤカシ刑事部なるものがあるのを初めて知って驚きです。名詞を渡してくれた方はアヤカシの百々目鬼、つまりは百目の一族だそうで、ハルとは昔からの友達みたい。片や陰陽師、片や警察組織に身を置いていますが、かつては二人で悪だくみなどを考えていたらしく、よく玄桃斎さんに成敗されなかったなぁと感心しつつも呆れます。
「ここに配属されているのは全員がアヤカシで、アヤカシ関連の事件は、全部こっちに回されてきます」
目には目を、の精神でしょうか。もしかしたら私も就職できたかも。
ハルは一連の騒動には裏からの圧力が絡んでいると睨んで、友人の切目さんに調査を依頼したそうです。こういうのは事件性がないと動いてくれないのが一般的ですが、アヤカシ事案に人間基準の事件性を立証するのは困難ですし、騒ぎが広がる前に珍事を沈静化させるのもアヤカシ課の勤めらしく。つまりは陰陽師と密接な関係があるのですが、陰陽師は人間の目線で裁定を下しますから、玄桃斎さんが動くような面倒な事案になる前に、アヤカシ課の裁量で整理しておこうと。
切目さんは百々目鬼なのに、顔にある目は二つだけ。平時は無数にある目を隠しているのだとハルから聞きました。クール系の外見で、流した黒髪に縁の黒い眼鏡を掛けて、灰色スーツに紺色のネクタイ、黒いベストの清潔な服装は仕事のできる男性オーラを放っていますが――こちらもハルからの事前情報ですが、見た目に騙されるな、とのこと。
どういう意味?
「そういや前に言ってた、猫の懐中時計は買えたんか?」
切目さんはオフィスの奥にあるエレベータのボタンを押すと、ハルと親しみのある口調で雑談していました。私はエレベータの到着を待っている間、アヤカシ課のオフィスを改めて観察しました。
提灯ばかりが飾ってある机に座って体を明滅させている髪の長い女性は、おそらく幽霊で、キーボードを叩く手を止めて缶コーヒーを飲み、「不倫調査って、刑事の仕事なん?」とボヤいています。隣の席は蜘蛛の糸だらけで、こっちは女郎蜘蛛でしょうか、「不倫の恨みを晴らすのは、アンタの十八番でしょ」と横やりを入れたら、「今度言ったら、部屋に化けて出てやる」と冗談交じりに凄み返していました。なるほど、幽霊は『お岩さん』でした。
また、トレンチコートを着たベテラン刑事さんもいます。こっちは『ミイラ男』かな? 「げ、充電持ってくるの忘れた。お~い、雷小僧!」とミイラの刑事さんが叫ぶと、金髪をパンクロック風に逆立てた若い男性が近寄って、「また俺すか? 加減がむずいんすよ」なんて言いながらスマホに手を添えて、バチバチっと稲妻が放たれると、ボムっとスマホが爆発しました。
ミイラ男先輩が苦情を申し立てている隣では、昼間から爆睡していたバクが爆発音に驚いて鼻提灯をパンっと割って、ガバッと飛び起きました。その拍子で、前の席にいる女キョンシーの黄色い札が外れて、本能のたかも外れてカッと牙を剥き出したら、「まだ全力を出す場面とちゃうやろ」と、ミイラ男先輩がキョンシーの札をパチンと、おでこに張り直しました。
喧騒の只中で、エレベータが静かに到着します。ぬおんと、地獄の入り口かのように楕円形に口が開いて、ここって、本当に表京都?
「こっから地下の部屋に行けまして」
エレベータのボタンは数字ではなく、行き先指定になっていました。切目さんが『奈落の底』と書かれたボタンを押すと、ヒュウウと落下します。随分と深くにまで潜っている重力を感じ、本当に地獄まで落ちるのかと不安になっていたら、徐々に減速。エレベーターはピタリと止まり、到着したのかと安心していたら――
今度は前に大きくガクッと揺れて、前進しました。かなりの速度らしく、風を裂く音がキーンと耳を塞ぎます。近未来チックに地下パイプでも通過しているのでしょうか、あまりの衝撃に私は腕を回しながら大きく仰け反って、エレベータの壁に背をぶつけそうになりながら、何とか手すりを後ろ手に掴みました。
「危ないから掴まれと言ったろ」
「言われてない!」
ハルがいつもの調子で言ってのけます。彼らは靴の裏に接着剤でも塗布しているのか、腕組みをしたまま微動だにしません。ええ、私はアヤカシですが、物理の常識には忠実なんです。それにヒールです。もう少し配慮して然るべきでは?
今度こそ目的地に着いたようで、扉がまた口のように左右に開くと、トンネルのように殺風景な廊下が突き抜けていました。青緑色の蛍光灯が薄暗く照らしています。廊下の左右には扉が幾つもあって、廊下の突き当りは見通せません。どういう場所なのかと首を回しながら二人の後ろに付いていくと、千本通と書かれたプレートを見つけました。
千本通って……烏丸通から、こんな場所にまで地下が続いているの?
切目さんは灰色の『目眼目眼』と書かれた扉の前で立ち止まると、右腕の袖をまくりました。白い肌の腕に目がパチリと開いて、扉の横のパネルに腕をかざしたら緑色の横線がパネルに走り、ロックが解除されました。
部屋の内装は、闇組織の地下監視室、というネーミングがピッタリ。
真四角の広い部屋の正面に、映画館のような巨大スクリーンが置かれています。スクリーンの手前には録音スタジオの設備みたいな横長の制御コンピュータと、黒い皮の椅子。部屋の脇にビリヤード台があって、ガラスの棚があります。どうやらお酒が入っているようですが、勤務中に飲んだりするのかな。
「このスクリーンは、京都中のカメラ映像とリンクしてまして――」
切目さんが説明してくれます。
「過去分も録画していて、例の舞妓さんが見出しをした当日の映像を見つけたんですよ」
これはビックリ。祇園東の路地ですから、メインストリートではないはず。そんな所にまで監視カメラが。
おそるべし、公共機関。
「該当するカメラが、よくあったな」
ハルが私の代わりに聞きました。
「公共のカメラだけでは監視としては物足りんから、個人的に設置を増やしとるんやけど、それで、当日の映像に気になる様子が……おや、これは何や?」
切目さんがスクリーンに向かって首をくいっと伸ばすと、右下を指差しました。ヒュっと指で投げる仕草をしたら、拡大されて、該当する一つの映像だけが大きく映されます。
「えっと……まさか」
定点カメラに女性が何人も映っています。しかも……なんと全員が着替え中。剥き出しの棚に籠があって、脱いだ服やら下着が入っています。
「ハル、ちょとこっちへ来てくれ」
切目さんが振り向かずに、手招きしました。
「……銭湯か? 意外だな、若い人が多い」
「和服に着替えるサービスもやっとるらしい。若い子らは観光客やろ」
「なんでこんな場所にカメラがあるの!?」
動揺と怒りが湧いてきます。監視のためとはいえ、これは完全なる覗き見なのでは。
「カメラと全部、リンクする仕組みなんですよ。ここのは誰かが盗撮目的で設置したらしく……まあ、これはこれで逆追跡で犯人を捕まえるとして、問題は、この黒の近くにある籠やな。なあ、ハル。どう思う?」
「どれのことを言っている? 黒猫のキーホルダーが入っているやつか? 確かレアだったな。俺も二千円使ったが、出なかった」
「それとちゃう。黒に花柄下着の女の足元にあるやつや。左側にある籠を見ろ」
「うん? 男物のトランクスが入っているな」
「そうや。どう思う?」
「変だな、ここは女湯だろう? まさか男が紛れ込んでいるのか?」
「それなら騒ぎになっとるやろ。全員が冷静に着替え続けてる。つまり、男はいない。それなのに、どうしてトランクスがある?」
「じゃあ、日常的に履いているのかもしれん」
「おいおい、どうして女の間でトランクスが流行しないのか、考えたことないんか?」
「そりゃあ、普通は履かないだろうさ、男用なんだから」
「女だからって全員が、一度も、トランクスを履いたことがないと思うか? 例えば彼氏の家に泊った時とか、ストックがなかった時とか、単なる好奇心とか、事情があって家で履いた経験くらいあったりするやろ。俺達が初めてトランクスを履いた日を思い出してみろ。どうしてトランクス派になったのか、履いた瞬間に感動したからや、あの解放感に」
「言われてみればそうだな。俺はボクサーパンツ派だが」
「ボクサーか、トランクスが二大政党やけどな、とにかく、履いてみた結果、俺らは快適だと判断した経緯がある。なのに女でトランクス派は聞いたことがない。つまり、履いたけど何か違ったんや。見た目が可愛くないとか、そういう問題もあるやろうけどな。そもそもフィットせんから定着せえへんねん。だから流行しないし、日常的に履いてる奴はまず、おらん。しかも公共の場でやぞ。なのに、どうして、ここにトランクスがある?」
「自分で言ったろ、事情があるんだよ。もしくは稀有な少数派か」
「可能性は否定できへんけどな、事実は複雑なようで単純だったりもするが……ホンマにこの中の誰かが履いてるんか? 事情があってのことやったら、恥ずかしくて籠の奥に隠すやろうし、非常に気になる案件や。このまま待っていれば持ち主が現れるやろうから、真相の究明のためには――」
「どーでもいいから、さっさと映像を切りなさいよ!」
ほんと、真顔で何の話をしているの、アホなんじゃない!?
男性刑事さんから、名詞を渡されました。
ここは表京都の警察本部。今回の騒動を担当してくれる刑事さんが「見せたいものがある」とハルを呼んだらしく、二人で訪問しました。アヤカシ刑事部なるものがあるのを初めて知って驚きです。名詞を渡してくれた方はアヤカシの百々目鬼、つまりは百目の一族だそうで、ハルとは昔からの友達みたい。片や陰陽師、片や警察組織に身を置いていますが、かつては二人で悪だくみなどを考えていたらしく、よく玄桃斎さんに成敗されなかったなぁと感心しつつも呆れます。
「ここに配属されているのは全員がアヤカシで、アヤカシ関連の事件は、全部こっちに回されてきます」
目には目を、の精神でしょうか。もしかしたら私も就職できたかも。
ハルは一連の騒動には裏からの圧力が絡んでいると睨んで、友人の切目さんに調査を依頼したそうです。こういうのは事件性がないと動いてくれないのが一般的ですが、アヤカシ事案に人間基準の事件性を立証するのは困難ですし、騒ぎが広がる前に珍事を沈静化させるのもアヤカシ課の勤めらしく。つまりは陰陽師と密接な関係があるのですが、陰陽師は人間の目線で裁定を下しますから、玄桃斎さんが動くような面倒な事案になる前に、アヤカシ課の裁量で整理しておこうと。
切目さんは百々目鬼なのに、顔にある目は二つだけ。平時は無数にある目を隠しているのだとハルから聞きました。クール系の外見で、流した黒髪に縁の黒い眼鏡を掛けて、灰色スーツに紺色のネクタイ、黒いベストの清潔な服装は仕事のできる男性オーラを放っていますが――こちらもハルからの事前情報ですが、見た目に騙されるな、とのこと。
どういう意味?
「そういや前に言ってた、猫の懐中時計は買えたんか?」
切目さんはオフィスの奥にあるエレベータのボタンを押すと、ハルと親しみのある口調で雑談していました。私はエレベータの到着を待っている間、アヤカシ課のオフィスを改めて観察しました。
提灯ばかりが飾ってある机に座って体を明滅させている髪の長い女性は、おそらく幽霊で、キーボードを叩く手を止めて缶コーヒーを飲み、「不倫調査って、刑事の仕事なん?」とボヤいています。隣の席は蜘蛛の糸だらけで、こっちは女郎蜘蛛でしょうか、「不倫の恨みを晴らすのは、アンタの十八番でしょ」と横やりを入れたら、「今度言ったら、部屋に化けて出てやる」と冗談交じりに凄み返していました。なるほど、幽霊は『お岩さん』でした。
また、トレンチコートを着たベテラン刑事さんもいます。こっちは『ミイラ男』かな? 「げ、充電持ってくるの忘れた。お~い、雷小僧!」とミイラの刑事さんが叫ぶと、金髪をパンクロック風に逆立てた若い男性が近寄って、「また俺すか? 加減がむずいんすよ」なんて言いながらスマホに手を添えて、バチバチっと稲妻が放たれると、ボムっとスマホが爆発しました。
ミイラ男先輩が苦情を申し立てている隣では、昼間から爆睡していたバクが爆発音に驚いて鼻提灯をパンっと割って、ガバッと飛び起きました。その拍子で、前の席にいる女キョンシーの黄色い札が外れて、本能のたかも外れてカッと牙を剥き出したら、「まだ全力を出す場面とちゃうやろ」と、ミイラ男先輩がキョンシーの札をパチンと、おでこに張り直しました。
喧騒の只中で、エレベータが静かに到着します。ぬおんと、地獄の入り口かのように楕円形に口が開いて、ここって、本当に表京都?
「こっから地下の部屋に行けまして」
エレベータのボタンは数字ではなく、行き先指定になっていました。切目さんが『奈落の底』と書かれたボタンを押すと、ヒュウウと落下します。随分と深くにまで潜っている重力を感じ、本当に地獄まで落ちるのかと不安になっていたら、徐々に減速。エレベーターはピタリと止まり、到着したのかと安心していたら――
今度は前に大きくガクッと揺れて、前進しました。かなりの速度らしく、風を裂く音がキーンと耳を塞ぎます。近未来チックに地下パイプでも通過しているのでしょうか、あまりの衝撃に私は腕を回しながら大きく仰け反って、エレベータの壁に背をぶつけそうになりながら、何とか手すりを後ろ手に掴みました。
「危ないから掴まれと言ったろ」
「言われてない!」
ハルがいつもの調子で言ってのけます。彼らは靴の裏に接着剤でも塗布しているのか、腕組みをしたまま微動だにしません。ええ、私はアヤカシですが、物理の常識には忠実なんです。それにヒールです。もう少し配慮して然るべきでは?
今度こそ目的地に着いたようで、扉がまた口のように左右に開くと、トンネルのように殺風景な廊下が突き抜けていました。青緑色の蛍光灯が薄暗く照らしています。廊下の左右には扉が幾つもあって、廊下の突き当りは見通せません。どういう場所なのかと首を回しながら二人の後ろに付いていくと、千本通と書かれたプレートを見つけました。
千本通って……烏丸通から、こんな場所にまで地下が続いているの?
切目さんは灰色の『目眼目眼』と書かれた扉の前で立ち止まると、右腕の袖をまくりました。白い肌の腕に目がパチリと開いて、扉の横のパネルに腕をかざしたら緑色の横線がパネルに走り、ロックが解除されました。
部屋の内装は、闇組織の地下監視室、というネーミングがピッタリ。
真四角の広い部屋の正面に、映画館のような巨大スクリーンが置かれています。スクリーンの手前には録音スタジオの設備みたいな横長の制御コンピュータと、黒い皮の椅子。部屋の脇にビリヤード台があって、ガラスの棚があります。どうやらお酒が入っているようですが、勤務中に飲んだりするのかな。
「このスクリーンは、京都中のカメラ映像とリンクしてまして――」
切目さんが説明してくれます。
「過去分も録画していて、例の舞妓さんが見出しをした当日の映像を見つけたんですよ」
これはビックリ。祇園東の路地ですから、メインストリートではないはず。そんな所にまで監視カメラが。
おそるべし、公共機関。
「該当するカメラが、よくあったな」
ハルが私の代わりに聞きました。
「公共のカメラだけでは監視としては物足りんから、個人的に設置を増やしとるんやけど、それで、当日の映像に気になる様子が……おや、これは何や?」
切目さんがスクリーンに向かって首をくいっと伸ばすと、右下を指差しました。ヒュっと指で投げる仕草をしたら、拡大されて、該当する一つの映像だけが大きく映されます。
「えっと……まさか」
定点カメラに女性が何人も映っています。しかも……なんと全員が着替え中。剥き出しの棚に籠があって、脱いだ服やら下着が入っています。
「ハル、ちょとこっちへ来てくれ」
切目さんが振り向かずに、手招きしました。
「……銭湯か? 意外だな、若い人が多い」
「和服に着替えるサービスもやっとるらしい。若い子らは観光客やろ」
「なんでこんな場所にカメラがあるの!?」
動揺と怒りが湧いてきます。監視のためとはいえ、これは完全なる覗き見なのでは。
「カメラと全部、リンクする仕組みなんですよ。ここのは誰かが盗撮目的で設置したらしく……まあ、これはこれで逆追跡で犯人を捕まえるとして、問題は、この黒の近くにある籠やな。なあ、ハル。どう思う?」
「どれのことを言っている? 黒猫のキーホルダーが入っているやつか? 確かレアだったな。俺も二千円使ったが、出なかった」
「それとちゃう。黒に花柄下着の女の足元にあるやつや。左側にある籠を見ろ」
「うん? 男物のトランクスが入っているな」
「そうや。どう思う?」
「変だな、ここは女湯だろう? まさか男が紛れ込んでいるのか?」
「それなら騒ぎになっとるやろ。全員が冷静に着替え続けてる。つまり、男はいない。それなのに、どうしてトランクスがある?」
「じゃあ、日常的に履いているのかもしれん」
「おいおい、どうして女の間でトランクスが流行しないのか、考えたことないんか?」
「そりゃあ、普通は履かないだろうさ、男用なんだから」
「女だからって全員が、一度も、トランクスを履いたことがないと思うか? 例えば彼氏の家に泊った時とか、ストックがなかった時とか、単なる好奇心とか、事情があって家で履いた経験くらいあったりするやろ。俺達が初めてトランクスを履いた日を思い出してみろ。どうしてトランクス派になったのか、履いた瞬間に感動したからや、あの解放感に」
「言われてみればそうだな。俺はボクサーパンツ派だが」
「ボクサーか、トランクスが二大政党やけどな、とにかく、履いてみた結果、俺らは快適だと判断した経緯がある。なのに女でトランクス派は聞いたことがない。つまり、履いたけど何か違ったんや。見た目が可愛くないとか、そういう問題もあるやろうけどな。そもそもフィットせんから定着せえへんねん。だから流行しないし、日常的に履いてる奴はまず、おらん。しかも公共の場でやぞ。なのに、どうして、ここにトランクスがある?」
「自分で言ったろ、事情があるんだよ。もしくは稀有な少数派か」
「可能性は否定できへんけどな、事実は複雑なようで単純だったりもするが……ホンマにこの中の誰かが履いてるんか? 事情があってのことやったら、恥ずかしくて籠の奥に隠すやろうし、非常に気になる案件や。このまま待っていれば持ち主が現れるやろうから、真相の究明のためには――」
「どーでもいいから、さっさと映像を切りなさいよ!」
ほんと、真顔で何の話をしているの、アホなんじゃない!?
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