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四章 相愛

20話 窮地 ついにバレた燈子の能力

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「なんとか揃ったか?」

頼みの綱のアレックスからの助けはギリギリになって輪島邸に到着した。

いつもの古いデザインとは違うアレックスが日本人ウケしそうなドレスや帽子が送られてきたのだ。

それと輪島からはランプシェードを販売する事にした。

洋風の作りを取り入れた屋敷作りをしている家がこのところ目立ってきたのはカイは気になっていた。

となると照明も洋風に合わせた天井につける物が必要になってくる。



「あの、社長これ」
千代が両手いっぱいに持ってきたのは秋に販売するリボンの山々だ。
「燈子ちゃん、帰ってきますよね?」
事情を聞いた屋敷にいる全員が燈子を案じた。
「ああ。必ず燈子さんを連れて帰るよ」

そうして、三ツ橋の秋の屋上蚤の市は当日を迎えた。

 
どこで雇ったのか、燈子は男達に手を縛られながら父の後ろに立つ事しかできない。

そんな光景をカイは「どうゆうおつもりですか」
と元康を睨む。

「大丈夫。この子には何もしてない」
答えにならない回答にカイは苛立ちを覚えながら
「今回は事前に話したとおり売り上げ金額が多い方が勝者という事で」
と確認を取る。
「左様」

元康の返事を合図したかのように蚤の市は始まった。

それぞれの店には高柳と輪島の定員が配置され各々接客している。

高柳は卓上のオイルランプに手を出した。
オイルランプは明治の初期には広まり今では一般の客でも買えるインテリアだ。

輪島のランプシェードは広間を照らす物だ。

蚤の市では手に取りやすい物を皆、よく見たがる傾向があるようで女性客はじっくり部屋に置くものを吟味している。

(しまった!ランプシェードではやはりニーズに限りがあったか!?)

まさか高柳が庶民的な家具に手を出してくるとは思わなかったのだ。


頭を垂らすカイに元康は
「どうした。君の店にしては変わった物を出したなと感心したよ。
でも、見てごらん。
素材にはこだわって仕入れたんだ。
うちは家族向けから女性客が多い。
お客の層は見極めなきゃだな」

珍しくガハハと品がなく笑う元康にカイは
「高柳が単価が低いオイルランプとは珍しい。
テコ入れですか?」
と苦言するとその場にいた高柳一同は全員固まってしまった。

これには燈子も
(カイ様、それは言い過ぎよ)
と茉莉に睨まれ焦ってしまう。


「若造はやはり可愛げがない。
可愛げがないもの同士、お前達はお似合いだな」

余裕がなくなってきたのか元康は暴言を吐き笑う。
その姿に違和感があった。

今まで燈子が屋敷にいた時は父は道具として燈子を叱ったりはしたが暴言は吐く事はなかった。

どちらかと言うとそれは母サヲリか茉莉の役目だったからだ。

ポタッ。
気づけば目に涙が溢れてた。

(そうか。私今の今まで期待していたんだわ。
扱いは酷いけど役目は高柳にあったと思っていた。

だけど今は、もしこの勝負に負けたら一生この家に
使われるだけ使われる!

そうしたら私は道具以下だ)

そんなのは嫌!!


「実の娘にそれはないでしょう」
燈子の心が聞こえたかのような言葉だった。

「何?」

カイの発言に元康は驚く。

「可愛いい娘とあなたは仰っていらっしゃたではないですか。
燈子さんは可愛らしいですよ」

「はは、知った事を。
私は分かっている。
確かにあの子は見る目がある。
良い物が分かり先見の明がある。
輪島殿もそんな燈子を気に入ってるのだな」

そうだろうと頷きながら元康は笑う。

「それは私にも燈子さんにも失礼だ!」
カイはそう言い切るのが元康は面白くないらしい。

元康はカイを徹底的に無視と決め込もうとしたがカイの発言に物申したのは茉莉だった。

「では、輪島様はこの子のどこがお好きなの?」
突然の茉莉の質問に周りがどよめきだつ。

「何を言わせたいんだ?」
カイは茉莉をも敵視しているのか睨んだままだ。
 
これには燈子も動揺した。
(茉莉、どうゆうつもり?)

そう見つめた顔はとてつもなく愉快と言いたげに

「あら。恥ずかしいのかしら?
だってこの子に先見の明があるのは本当よ。

この子はね、手で触れば何でも視えてしまうのよ。
この着物がこの後どうなってしまうとか、ね」

ザッ!

(終わった!!!)
茉莉の発言により数えきれない視線が燈子を刺す。

「いやあ、見ないでえ!!」
茉莉とサヲリの高笑いがその場に響き、燈子は耐えきれずその場に座り込んでしまった。
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