4 / 8
一章 出会い
4話 今までお世話になりました。
しおりを挟む父が燈子に話をしたその日の夕食時、カヲリや真莉のいる席で燈子を嫁に出すと公にすると、一番驚いたのは真莉だった。
「この子がお嫁?ずっと家の手伝いとしてこの家にいるんじゃないの!?」
それについては父から話があるまで自分も同意見だ。
「そうよ。こんな子を嫁がせるなんて・・・。嫁ぎ先になんて言われるか」と母も真莉動揺に父に抗議するが嫁ぎ先を話すと二人は父に寝返った。
「なんだ、そうよね。私よりも先に嫁ぐと思ったら落ちぶれた輪島の家なんて・・・。あの子にぴったりじゃない。ねえ?お母様」
「そうね。お前学は真莉みたいに無いんだから輪島家の家で下手をするんじゃありませんよ」
と母娘とも燈子を笑う。話題は変わり真莉が父に
「お父様ったらあの子ばかり。私の嫁ぎ先はいつ決めるつもりかしら?」
と詰め寄る。
かわいい高柳家の一人娘のとんでも話に明らかに動揺した父は無言になる。
「これ、真莉!お父さんを困らせるんじゃありません」
カヲリがその場を宥め、なんとも温度差がある夕食時間が過ぎてゆく。
それが終わるといつもの様に女中達と一緒に料理を引いていつもの日常を過ごす。
そうしているとすぐに父が話していた一週間になりついに自分は出ていく時になった。
女中から渡された訪問着に着替えを済ませる。
淡い紫色の無地の着物に淡い金や緑や水色や橙色の花模様が入ったものに着物と同じ帯締めだ。
美しい着物に驚いて受け取る。
ほんの少しばかり父の優しさに触れたのかと手袋を外し素手で着物に触れて視る。
しかし、これは一昨年の夏に高柳の売り上げが過去最高を上回った時に調子に乗り元廉が燈子のいないところで呉服屋なの主人に言い寄られ仕入れた末、結局若い子には地味と売れ残り、お蔵入りになったものだという事を感じ取る。
(まあ、嫁入りに掠(かす)りを来て言ったら輪島様に驚かれるわよね)
嫁入りを公にされた日に母のカヲリに言われた「嫁ぎ先になんて言われるか」という言葉を思い出す。
おそらく母の意見に父も同調したのだろう。
袖を通し、帯を閉め玄関口の姿見を見る。
以外にも違和感なく着こなせ
(私って地味な着物が似合うのかしら?)
と複雑な気分になったがいつもの掠りとは違う。
着物は地味だが燈子は晴れ着姿なのだ。
本来なら紅や白粉を塗るところだろうがそれがない燈子はこの姿で輪島の家に向かうしかない。
掠りと寝巻き、替えの手袋を入れた風呂敷と輪島の家の地図を持って高柳の家に一礼すると燈子は生家を後にした。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
男装騎士、ただいま王女も兼任中!
六つ花えいこ
ファンタジー
祖父ゆずりの脳筋で、男勝りなエレノア。王女ベアトリーチェの美しさに魅せられた彼女は、男のふりをして王女の近衛騎士となった。そんなある日、ベアトリーチェが近隣国の王子とお見合いすることに。だが、彼女は不思議な鏡でエレノアと体を入れ替え、城から逃亡してしまった! やむをえず代役を務めることにしたエレノアだけれど、お見合いの席では失敗ばかり。それなのに、なぜか王子には気に入られてしまい――? 偽者王女と曲者王子のドタバタ恋愛ファンタジー!
とびきりのクズに一目惚れし人生が変わった俺のこと
未瑠
BL
端正な容姿と圧倒的なオーラをもつタクトに一目惚れしたミコト。ただタクトは金にも女にも男にもだらしがないクズだった。それでも惹かれてしまうタクトに唐突に「付き合おう」と言われたミコト。付き合い出してもタクトはクズのまま。そして付き合って初めての誕生日にミコトは冷たい言葉で振られてしまう。
それなのにどうして連絡してくるの……?
やり直せるなら、貴方達とは関わらない。
いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。
エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。
俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。
処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。
こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…!
そう思った俺の願いは届いたのだ。
5歳の時の俺に戻ってきた…!
今度は絶対関わらない!
指輪一つで買われた結婚。~問答無用で溺愛されてるが、身に覚えが無さすぎて怖い~
ぽんぽこ狸
恋愛
婚約破棄をされて実家であるオリファント子爵邸に出戻った令嬢、シャロン。シャロンはオリファント子爵家のお荷物だと言われ屋敷で使用人として働かされていた。
朝から晩まで家事に追われる日々、薪一つ碌に買えない労働環境の中、耐え忍ぶように日々を過ごしていた。
しかしある時、転機が訪れる。屋敷を訪問した謎の男がシャロンを娶りたいと言い出して指輪一つでシャロンは売り払われるようにしてオリファント子爵邸を出た。
向かった先は婚約破棄をされて去ることになった王都で……彼はクロフォード公爵だと名乗ったのだった。
終盤に差し掛かってきたのでラストスパート頑張ります。ぜひ最後まで付き合ってくださるとうれしいです。
愛玩犬は、銀狼に愛される
きりか
BL
《漆黒の魔女》の呪いにより、 僕は、昼に小型犬(愛玩犬?)の姿になり、夜は人に戻れるが、ニコラスは逆に、夜は狼(銀狼)、そして陽のあるうちには人に戻る。
そして僕らが人として会えるのは、朝日の昇るときと、陽が沈む一瞬だけ。
呪いがとけると言われた石、ユリスを求めて旅に出るが…
【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
藍生蕗
恋愛
子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。
しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。
いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。
※ 本編は4万字くらいのお話です
※ 他のサイトでも公開してます
※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。
※ ご都合主義
※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!)
※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
→同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
single tear drop
ななもりあや
BL
兄だと信じていたひとに裏切られた未知。
それから3年後。
たった一人で息子の一太を育てている未知は、ある日、ヤクザの卯月遥琉と出会う。
素敵な表紙絵は絵師の佐藤さとさ様に描いていただきました。
一度はチャレンジしたかったBL大賞に思いきって挑戦してみようと思います。
よろしくお願いします
とある令嬢は愛されることが理解できない
える
恋愛
悪役令嬢ができ愛される話を目指す
短編で終わるといいなぁ
すごく、行き当たりばったり
完結しました。ありがとうございました!
5月半ば、HOT入りしましたー!!わーい!ありがとうございますー!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる