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3話 美雨(メイユイ)

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「何をしているメイユイ、そこをどけ!」

そうは言われたが引く訳にはいかない。

「お父様、待って!何か剣で斬らなくとも方法はあるはずです。
屍とはいえ彼は高貴な人なんですよ!」

それを見た父や衛兵、宮廷導師は驚いた。


「対魔の儀式でもそれはあんまりです。お父様ならまだ何か他の手立てがあるはず・・・。

私も彼が正気を取り戻すよう手伝いますから
どうか剣を閉まってください」

「しかし・・・」

と動揺する父に姉は
「どうしたのよ。やっぱりあなたを手伝いにつかせたのは早すぎたわ」

と私を叱る。


もっともだ。


年が離れてる姉は実に賢く対魔の才能がある。
知識や実力もある彼女は父の跡継の有力株だ。

美しく知性があり、いっそ男だったらと父は言っていた。

もし導師の娘として生まれなくても姉はその美貌や知で誰からも慕われているだろう。

対して私は父の手伝いも半人前で姉みたいに秀でた才能もない。


家族に愛されてはいるものの発言権はないのだ。

「いいじゃありませんか」

「!」

窮地に光が差した。

宮廷導師様が助言してくれたのだ。


「導師様、しかし・・・」


父は突然の事で動揺していた。


「いや、我々も化け物になったとはいえ皇弟(こうてい)を傷つける事はしたくない」

宮廷導師は言う。

「キョンシーは満月に凶暴化するのだろう。
次の満月まで時間をやるからあなた達で順に牢番をするといい。
その間に彼を正気に戻してくれないだろうか。
最初に言ったように褒美は弾む」

宮廷導師にそう言われて断る術もない。

「かしこまりました」

そう父は返事をすると私達は客室に案内された。


「どうしちゃったのよ?」
父とは別に用意された姉と同室の客室に通されるやいなや姉はすぐさま私に詰め寄った。



「本当にさっき父様に言った通りよ。父様なら必ず剣なんて使わなくても皇弟を正気に戻せるわ」

「ふぅん」


姉は私の返事に納得したかしないのか

「まあ、後宮に入れるなんてなかなかないし。そこだけはでかしたわ」

対魔に成功したら私達大出世して安泰よね♪と姉は部屋の豪華な家具や調度品を見ながらはしゃいでいた。


それから部屋で客人専用の夕食を頂き、姉と私は父の部屋で打ち合わせを済ませた。

手筈はこうだ。

キョンシーの監視は本日夜から父、姉、私の順で行う。

その間、監視役の当番でない者は皇帝許可の書庫から文献を調べ皇弟をキョンシーから戻す方法を探す。


地下牢には1人で監視につく。


地上に兵士がいるので異常があれば直ちに彼らに伝える事。

それと監視役は一応、桃の剣を持って行くことだった。


初日は父が監視をする事になった。


自分で願ったとはいえ私も姉も父を心配していた。


「安心しなさい。私に策がある」


そういうと父は兵士達に見守られながら地下牢に続く階段を降りて行った。


日が昇り、父は私達を起こすと昨晩の策が成功したと伝えた。
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