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1話 あくまで主人は私で彼(キョンシー)は下僕です

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あの時、大柄な身体を跪かせ確かに彼はそう言った。
「どうか、貴方様に仕えさせてください」
とー。

そう美雨(メイユイ)の手を取る彼の顔は、貼られた札で見ることはできない。

でもその声に偽りはなかった。






彼を受け入れ一年後。

「毎度ー」
お辞儀をしてメイユイは占いの代金を受け取る。

生まれも育ちも街一番の導士(どうし)の二人娘の末の方。

後宮の奉公は出来のよい姉に任せて昼は占い、夜は退魔師としてこの街を見守っている。

「やっぱりこの辺は客層がいいわ」
頂いた代金をしまい本音を小声で呟く。

都尉(とい 今でいう警察)
がたまに見回りに来るから「みんな」に見張ってもらっての仕事だけれど・・・ 。

いつもの二倍のペースの稼ぎに気を良くし、早めの店終いをしていると彼が突然現れた。

「どうです客足は?」
「当たりよ。当たり」

札で目を隠した黒髪の長身男に、上機嫌で今日の
繁盛ぶりを報告する。

「やはり、私の見立てが当たりましたね」
その意見に
「はいはい」
と呆れて返す。

いつもの花街から商い場所を変え、この名家が連なる通りで露天を出してはと提案して来たのはこの黒髪の大男、永璉(エイレン)だ。

彼はいわゆるキョンシーである。

一年前の退魔の依頼で、暴走して武器を使って人を威嚇していた彼をメイユイが鎮めたのだ。

出会った頃は忠誠心が感じられたが、今は憎まれ口が絶えない。

可愛くない使い魔の一人だ。

彼の他にもメイユイには動物の妖や人の姿の妖も使い魔として彼以外にも沢山いる。

今日も都尉が来ないか見張りをお願いしていたのだ。

「帰りましょう」
そうメイユイは言うと、家に向かってエイレンと家路に足を進める。

しかし道中、巡回中の都尉達と通り過ぎた時に噂話が耳に入る。
ちなみに彼らにエイレンの姿は見えていない。

「今月に入って確か二人目じゃないか?屋敷内での変死は」
「今回も密室だ。くそ!一体何がどうなっている?」
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