上 下
165 / 188
第8章 変わってしまう日常編

【雇用№164】精霊樹の斧と魔霊樹討伐13

しおりを挟む
「ひゃあ~落ちる、落ちる落ちるよー。リュウ兄ちゃん助けて~」

 下から吹き付ける強い風によって、毛布はめくり上がり、毛布の上からチルは振り落とされ、毛布に乗るのではなく、毛布に捕まる。パラシュートの様な格好で上空に打ち上げられていく。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「パパ、精霊反応が私達を通り過ぎました。あっあれです、あの茶色の物体です。」

 猛スピードで、空飛ぶリヤカーの隣を通り過ぎて、一直線で、転移ゲートに向かって飛んでいく、茶色の物体。

 その後方には、スカイブルーのスーツを着た足が見える。

「あっ、あれはもしかして僕の毛布?なら、あのスカイブルーのスーツの足はチルじゃないのか?」

「えっ?でもあれから精霊の反応がしますよ?これまでチルさんから感じたものとは違いますし………」


 ~~~リュウ兄ちゃん助けてーーーー~~~

微かな助けを呼ぶ声が聞こえる。

「あれはチルだ間違いない。」

「でもパパ、私がしっかりと眠りの魔法をかけたので、夕方までは熟睡の筈ですよ。」

「いや、なぜかは分からんがあれは間違いなくチルだ。きっと何らかの拍子で目覚めて、僕らを追いかけて、魔法を使って急遽追いかけて来たんだ。」

 それにしても何であんな格好で飛んでるんだ?足が見えるってことは、手が前にある訳で。足が毛布についてないってことは、手で毛布を掴んでらってことか?

「まずい、握力が切れたら、チルが落ちるぞ。急げ急げ。」

 さらに魔法でスピードをアップして、チルを追いかけて、転移ゲートに向かっていく。

チルは先に転移ゲートを括って行ってしまった。数秒後、僕とノエルも遅れながらも転移ゲートに入る。

 
 転移ゲートを潜れば、そこは完全に別世界であった。

 空には輝くオーロラが見え、吐く息は白く、気温がかなり下がっている土地にきてしまった様だ。

 眼下には、大きな魔霊樹らしき、紫色のおどおどしい大樹がそびえ立っていて、辺りは完全に砂漠と化していた。

「茶色の物体があそこに見えます。」

「了解。助けに行くぞ」

 と言ったそばから、茶色の毛布からスカイブルーのスーツが分離した。毛布はどんどん空に飛んでいって、チルは逆にどんどん下がってくる。


「パパ、チルお姉ちゃんが落下してます。急いで下さい。」

 ノエルが慌てて、指示を飛ばしてくる。

 チルの予想落下地点に先回りする。

「ドンっ」

 という音と共になんとかキャッチに成功する。その間、空飛ぶリヤカーの操縦出来なくなるが致し方ない。運転する人は手放し運転は危ないのでやらないで下さいね。

「リュッ、リュウ兄ちゃん怖かったよー」

 チルが泣きながら抱きついてくる。余程怖かったのか、周りの目などお構いなしである。ここがどこかも忘れてしまっているに違いない。

 よしよしと頭を撫でてるあげる。ノエルも一緒になってほっぺたを撫でてくれている。

 しばらく泣いて落ち着いたのか。

「リュウ兄ちゃん、ノエルちゃん助けてくれてありがとう。」


「うん、どう致しまして。色々とチルに聞きたいことはあるんだけど、敵地の中だから、現状確認をしてしまおう。」

「そうですよ。パパ、チルお姉ちゃん。幸い、今は魔霊樹の上母で魔族の姿が見えなかったからよかったですけど、デーモンやインプがいたらピンチでしたからね。」

「はははっ、面目ないです。でも、リュウ兄ちゃんが悪いんだよ。私を気絶させて置いていくから。」

「はいはい、チルお姉ちゃん。言いたいことは分かりますが、敵地のど真ん中なので後にしましょうね。パパには、後でしっかりと謝って、説明してもらいますからね。」

「分かったよ。」

「おいおいノエル」

 ノエルも眠りの魔法使ったじゃないかという言葉をごくっと飲みこむ。今は本当にそんなことを話している場合じゃない。早急に方針を決めて動かないと。

「その通りだ。その件については後で話しあおう。」

「ということで、まずはサクッとあの魔霊樹を切り倒しちゃいましょう。」

 いきなりノエルが物騒なことをいい放つ。

「ノエル、いくらなんでもあんなでかい魔霊樹の大木を僕ら一匹と3人でどうにか出来るわけないだろう。」

 うんうんとチルもうなずいてくれる。

「パパ私達には、精霊樹の斧があるじゃないですか。あれでスパッと切り倒しましょうよ。」

 異空間から、精霊樹の斧を取り出す。

「この小さい斧であの大木を切り倒すって?どうやってやるんだい?それに転移ゲートがなくなってしまったから、どうやってウェルザさん達の所に帰るとか、これからどうやって食べていくのか考えることがモリモリなんだが。魔霊樹は今倒して良いものなのか?」

「パパ、ここまで来たら、やれるだけやってみましょう。ダメだと思うことも、やってみないと何がダメなのか分かりませんよ。それに食糧は、多少なら異空間に入っているじゃないですか。」





しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~

九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】 【HOTランキング1位獲得!】 とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。 花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...