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第6章 精霊樹の苗木 準備編

【雇用№71】薬儒の森 中層

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「とこのくらいの高さまで上がれば、猪くらいなら攻撃は当たらないだろう。」

「でも、リュウ兄ちゃん、これって、リュウ兄ちゃんの肩の高さくらいだよ。」

「ま~今まで見てきた猪が腰の位置くらいまでしかなかったから、このくらいの高さで十分なんだよ。

4足歩行動物ならね。これが2足歩行の動物になると、かなり危険なんだよね。高さ不十分、移動も遅い、見つけられたら恰好の的だよ。
魔素感知が出来るからやってるけど、それがなかったら、歩いた方がましかもしれないね。」

「安心してリュウ。私の知覚出来る範囲では、2足歩行は地面にはいないわ。」

「いや、ちょっと待って。ティタニア地面にはいないって、空中、木の上なんかにはいるってことなのか。」

「そうよ。ここは森だからね。生物の生態系でみても色々な動物はいるわよ。それでも、魔猪に比べたら、魔素を持つ量がぐっと少ないから、知覚しにくいのよ。
多分こちらから相手の領域に入らなければ、敵対心を持たれることもないから気にしなくても大丈夫よ。」

「そうなのか。てっきり森に入ってきた人間を見つけると襲い掛かってくるのかと思っていたよ。」

「リュウ。そんなわけないじゃない。動物だって、生きているのよ。自分たちが食べるためなら、戦って倒してエサにするわ。蜂や猪、熊なんかがその代表よね。

リスやサルなんて、基本的には、自分たちに攻撃してこない限り、する理由がないのよ。
それで反撃されて傷を負ったら大変じゃない。仮に私達を倒しても彼らに得られるものなんてないもの。」


う~ん、確かにティタニアの言う通りである。うちの近所にも犬や猫、カラスや燕なんかはいたけど、見つけたからと言って、襲ってくることはない。

こちらが危害を加えようとしたり、無警戒に近づいて触ろうとしたりすれば、野生のあいつらは、危機感を丸出しにして、逃げ出すか、専守防衛で襲ってくる。

たしかに、そうかも、後日本で危険視されていたのは、狼、熊くらいのものである。どちらも人を食べることが出来る生き物だ。猪がなぜ、こちらを見て襲ってきたのかはわからない。
雑食性だし、日本では人を食べたという話も聞いていない。魔素化した動物は攻撃性が高まるか、人を食べたくなるのだろうか?

いかんともしがたい問題ではあるが、今はとりあえず横においておこう。

「そうかなら、そこまで警戒して、行かなくても大丈夫だね。野生の生き物はこちらの警戒心も読み取るって聞くし。」

「そうよ。リュウ分かっているじゃない。じゃ~再び精霊樹を植えに行きましょう」

『順風』

ゆっくりとリヤカーが空を飛びながら前へ進む。あとは長刀を使って、木にぶつかりそうになるたびに気に長刀を当てて、進行方向を変えて飛び続ける。

「ねぇ、思ったんだけど、リュウ兄ちゃんがいると全然冒険って感じがしなくなったね。こう敵が出てきてヒリヒリする感覚がもうなくなちゃったもん。」

「危険な目に合わないように極力回避しながら進んでいるからね。危険な冒険より安全なピクニックの方が僕は好きだな。」


「うん、チルもそっちの方がいいよ。ねぇねぇ、リュウ兄ちゃん。お昼はいつ食べるの?」


でもでも、私はちょっと冒険を期待してたんだよ。リュウ兄ちゃんが危険な目にあうのはやだけど、私を守ってくれるリュウ兄ちゃんに憧れるんだ。でも、やっぱりそんなことになったら、ダメだよね。はぁ~。どうやって仲良くなればいいんだろう?

「もうそんな時間か?う~~ん、チルもうちょっと我慢してね。安全な場所に降りてからかな。リヤカーの中で食べると咄嗟の対応がしづらいからね。」

もう、お昼なのか。流石にまだ中層で奥まで行ってないから日帰りは無理だったか。となると、ある程度安全な場所を見つけて野営の準備をする必要があるな。

夕方になる前にしておこう。って。この森の暗さじゃそれもわかりづらいな。お昼食べて、次にチルがお腹すいたらその時ってことにしよう。

「そっか~。ウェルザさんに作ってもらった。お弁当リュウ兄ちゃんと一緒に食べるの楽しみにしてたんだ。」

と明るい声でそう言ってくる。僕と一緒にか可愛いこと言ってくれるなチルは。

「ちょっと~~~。チル、私もいるんだけど。」

とティタニアが顔を膨らましながら抗議してくる。

「ティタニアちゃんの分も勿論あるよ。モニカちゃんに聞いて、一番好きな花の蜜を採ってもらったんだ」

「えっ、モニカちゃんに頼んで用意してもらったの?私の大好きな蜜。。。ふっふふっ。

ねぇ、リュウ。早くお昼にしましょうよ。お弁当が傷んじゃうかもしれないわよ。美味しいものを美味しいうちに食べるのは鉄則よ!!!」

と自分の好物も用意してるあと知ったティタニアもお昼コールを熱唱していた。
おいおいあんたら、一応ここは薬儒の森でしかも今は、猪の生活圏のど真ん中ですよ。ちょっと気を抜き過ぎじゃございませんか・

「うん。わかったよ。僕もお腹は空いたからね。猪の生活圏を抜けてからちょっと休憩がてらお昼を食べようか。」

「「やった~~~~」」

二人はお弁当が食べれると知った瞬間大喜びである。いやいや二人とも閑静な森の中でね。そんな高い声上げるとね。

「ぷぎゅ。ぷぎゅるるるる~~~~~」
「ぷぎゅ。ぷぎゅるるるる~~~~~」
「ぷぎゅ。ぷぎゅるるるる~~~~~」

ほら、噂をすればなんとやら、魔猪の大群が、声を聞いて威嚇してきたじゃないか。もう、僕の魔素感知内に入ってきているぞ。しかも、1,2,3、、、、4、、、8匹もいるじゃないか。

言わんこっちゃない。こんなことなら、空を飛ぶ前に適当な場所でお昼食べさせとけばよかったな。
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