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第4章 ポーション 緊急納品編

【雇用№049】雇われ勇者 現地民の魔法の学び処その6

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「みんな~~たっだいま~~~♪」
僕はいつもになく元気よく扉を開けて家の中に入っていった。

「「「おかえり~~」」」

「夕食の準備は出来てますよ。ご飯にしましょう」

「どっどうしたのリュウ兄ちゃん。そんなご機嫌な声で何かいいことでもあったの?」

「あったの?」

チルの質問にモニカちゃんも一緒になって言ってくる。

「ふっ、よくぞ聞いてくれた。モニカちゃん。チル。それはだね。。。。。」

「ご飯冷めてしまいますから、お話ならお食事終わった後にしましょうね。」

がび~~~~~んん。ここから乗ってお話するときにまさか、ウェルザさんから横やりが入るとは。
このリュウ一生の不覚。。。。もう少し早く帰ってくればよかった。

今日の献立は、またもや魔猪の肉料理。分厚いステーキが出されていた。
ガーリックの香ばしい香りと肉汁が合わさってなんともいえない香りをだしていた。

たったしかに、このお肉が冷めるのは非常にもったいない。
がまんだがまん。この美味しいお肉を食べ終わるまでの我慢なんだ。と自分に深く言い聞かせ、食事をありがた~~~く味わってたべた。

食後、「ご馳走様でした。」「お粗末様でした」

「どっどうしたのリュウ兄ちゃん。そんなご機嫌な声で何かいいことでもあったの?」

「あったの?」

再度、これまでのやりとりが一切なかったかのようにさっきと同じ調子で声をかけてくれるチルとモニカちゃん。

二人とも僕のこんな下らないお芝居に付き合ってくれてありがとうね。後で頭をた~~~ぷり撫でてあげるよ。ウェルザさんはそれをみて、うっすらと微笑んでいる。

「ふっ、よくぞ聞いてくれた。モニカちゃん。チル。それはだね。。。。。」

とこのタイミングで、ウェルザさんを見る。続けていいですよと、手で促してくれた。

「実はかねてより探し求めていた。メモ帳が手に入ったのだ。それと、何もしてないのに臨時収入が入ってくることが約束されたのだ。」

「「えええ~~~っ」」チルとモニカちゃんが驚いてくれる。
ウェルザさんも声には出さないけれど驚いているようだ。

「そんなお大金どこにあったの?リュウ兄ちゃん。」

「メモ張ってなに?」

「ふふふっ、もう一度聞いて驚くがいい。このメモ帳には一切お金がかかっていないのだ~~~~~」

と一旦素面に戻って
「モニカちゃん。メモ張っていうのは、忘れたくないものを紙に書いて、記録して、あとで見て思い出すためにあるものなんだよ」

「ふ~~~ん。そうなんだ」

それで、チルもいつもの調子に戻ってしまい

「で、リュウ兄ちゃんメモ張がお金かかってなくて入手できたのはわかるけど、どこにあるの?」

テンションが落ちてしまっている今、再度の上げ直しは非常に勇気がいるが、男としてこれは譲れない。

「じゃじゃ~~~ん。ロウ板のメ~モ~ちょ~~う」

どこかの猫型ロボットがアイテムを出してくるようなメロディーでやってみるが、あいにく元ネタを知っている日本人はこの場にはいないので、しら~~~っとした雰囲気が流れてしまった。

いや、後悔はしてないもん。びっくりさせる時のお約束だもん。机の上に布で隠してあった、ロウ板を取り出した。

「これがロウ板ですか?見た所、木板に見えますが、それなら前からありましたよ。」

「ちっちっちっちっちっ、それが違うんだな、ウェルザさん」

わざとらしく、人差し指を左右に振りながら答える。

ちょっとわざとらしく、やりすぎたかちょっとイラッとして、ウェルザさんが尋ねてくる。うん、やりすぎた。ごめんなさい。これからは普通にやります。

「ここに裁縫用の針を用意します。本当はもう少し太くて長いのがよいのですが、ないので代用ですね。で、これを使って、このロウ板メモ帳に文字を書きます。『メモ』」

と文字を書いた。

「とこういう風になるわけです。ご理解いただけたでしょうか?」

「たしかに、すごいよリュウ兄。文字が書けてる。でも、これ一回しか文字かけないんなら。木板でいいんじゃないかな。木材削れば使えるし。」

「そうだね、チル。ところがこの木のへらの平たい部分で削ると、、、、、、」

「おお~~~っ、文字が消えた。すごいすごいよ。でもどうなっているの?」

「この木枠の中に蝋燭の蝋を溶かしていれてあるのさ。蝋は傷つけやすいだろ。それでとがったもので、傷をつけて、文字を書くのさ。で蝋が少なくなってきたら、また蝋を溶かして、補充すれば、また新品のように使えるってこと。」

「リュウさん。これはすごい品ですね」

ウェルザさんが目をさっきとはうって違って、キラキラさせてロウ板メモ帳を見ている。

「でしょでしょ。すごいでしょ。金額の計算もこれでやれば、暗算しなくても済むし便利ですよ。」
「そっ、そうですよ。これは商人とかにものすごく喜ばれますよ。私もここの農園の数字を扱ってますけど、計算が大変で大変で。木板だと、間違えたら、全部削ってやり直しですから、ホント大変なんですよ。」

ウェルザさんに農園管理の経理もどきもやってもらっているけど、そこまで、ストレス抱えていたとは気づかなかったな~。

「では、第1号ロウ板メモ帳。。。う~~~ん、長いな、やっぱりメモ張で。このメモ張を普段経理を頑張っているウェルザさんに進呈します。」

「えっ、リュウさん。いいんですか。ありがとうございます。もしかして、私のために、色々なとこに聞いて、メモ張になるものを探してくれていたんですね」

凄い感動して、勘違いしてくるウェルザさん。

いえいえ違いますとも、現代人の僕にとって、メモがない生活が耐えられないから探してただけです。すみません。自分のためです。

「ははははっ、上に立つものとして、当然のことをしたまでですよ。」

思ってもいないことが口に出てしまった。

「ええ~~っ、いいな~~。ウェルザさんだけメモ帳もらえるんだ。
 チルも欲しいな~。魔法覚えるのにも、メモしてあった方が覚えやすいし。」

「モニカも欲しい。お絵かきできる」

「チルもモニカちゃんももうちょっと待ってね。今渡したのは実は試作品で。意匠が入った、綺麗なメモ帳を僕ら4人分頼んであるから。ちゃんともらえるよ。

 ウェルザさんにもそれとは別に正規品を後で渡しますので、それまでの繋ぎでその試作品を使ってください。」

「リュウさん。ありがとうございます」
「リュウ兄ちゃんありがと~~」
「ありがと~~」

人に喜ばれることするって気持ちがいいね。元々は自分のためだったけど、色々な人に使ってもらえそうだし、頑張って探した甲斐(かい)がありました。

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