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第3章 雇われ勇者は、雇い主編

【雇用№029】雇われ勇者 今後の魔物対策と灰

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翌日の朝、雲一つない快晴でした。遠くの山までがよく見えます。

「さて、みんな揃ったことだし、今日も一日頑張って仕事しよう」
「「「お~~」」

「モニカちゃんとウェルザさんは、昨日午前中してたことの続き。水やりと草むしり、育った薬草の採取、美味しいお昼の準備等お願いします。」

「「はいっ」」
「チルは、僕と一緒に薬草を育てる上で必要なものを取りに行こう。そのあとはグラマン隊長のとこにって訓練をお願いしに行こう。」

「うん。わかったよ。リュウ兄ちゃん」
「では各自仕事を」

と「パンっ」と手で拍子をたたいたのを合図に各自自分の担当の所へ行って作業する。

◆◆◆◆

チルとリュウは、インプを火葬した場所についた。

「リュウ兄ちゃん。こんなところに来て、何を持っていくの?まさか魔物の死体をもっていくなんていわないよね。」

「いや、それは使い道がわからないからもっていかないよ。ま~似たようなものではあるんだけど、そこの魔物の燃えた後の灰をもっていくよ。これが結構、いい感じになるんだ。」

「え~~っ、こんな真っ黒な灰を持っていくの。朝から煤だらけになって、せっかく綺麗な服が汚れちゃうよ。」

あちゃ~~。そうだった。僕一人ならあんまり気にしないんだけど。年頃の女の子に朝からしてもらうような作業じゃなかったな。

「そうだね。なら、袋への灰を詰めるのは、僕がやっておくから。チルは出来上がった灰の袋を、家の倉庫に持って行ってもらえるかい。多分2往復くらいで済むと思うし。

僕は灰を袋に入れ終わったら、ちょっと役所に行ってくるから。ここにある袋がなくなったら、家でお手伝いでもしててね。」

「うん、わかったよ。リュウ兄ちゃん。ありがとね。」

さて、やるぞ!!
風の魔法で移動させようとすると、思ったより難しく、逆に灰が周りに散乱してチルに怒られた。自分は、ものすご~~く遠くから見てるだけなのに。ひどい。。。。
結局、持ってきた大きな布袋に手作業で、入れていくことにする。

もう手が真っ黒。身体も煤だらけになったので、チルが袋を持っていく時に若干腰が引けていたのがすごく気になってしまった。チルが行った後も、黙々と作業して、袋を2袋を作成した。

「さて、綺麗に片付いた事だし、あと片づけして、役所に行きましょうか」

『クリーンナップ』
風と水と火の魔法を組み合わせて、作ったオリジナル魔法。他の人がやる場合は一つずつ、魔法を使っていく必要がある。

風の魔法で汚れやほこりを吹き飛ばし。
水で残った汚れを洗い流し。
火で熱源を発生させ、風で温風を送ることで、乾燥させる。

現代人にはもってこいの便利魔法である。こちらの世界に来てからは、お風呂という文化がなく。タライの水を温めて、布なので身体をふくことで汚れを落とす習慣だったのだ。

髪は、温水で洗えるけど、風呂もなければ、シャワーもない。そこで、ちまちまと既存の魔法を組み合わせて作ったのだ。

「ふう、綺麗になった。女子は綺麗になると言っても、そもそもわざわざ汚れることにはあんまりいい顔しないからな。僕もやりたくてやっているわけじゃないけど。

ふ~~~っ、昨日建てた計画が思うように進まないな~。全部指示しなきゃ、進まないのに、色々とイレギュラーが発生するから、計画をその都度計画を修正していかなきゃな。

会社員の時は、チームリーダーや部長に相談して、指示をもらっていたから、楽だったけど。上に立ってみて初めてわかるわ。これは大変だね。先輩、上司の方色々と考えてくれてありがと。」

「さて、役所に行きますか。貯まっている報酬をもらいに行きますよ。一人で農園管理していた時は、多少気にはしてたけど。人を雇ったり、同居してからは、出ていくお金が一気に増えて、懐の余裕がなくなったからね。ここらで、懐をあったかくしておきたい。」

人は部下や自分より下の人を持つと成長するものである。会社で勤務している時は、それが面倒で逃げていたのだが。。。。

「エルザさんおはようございます」

「あら、リュウ君おはよう。今日はこの間の襲撃の報酬を取りにきたのかしら?」

「ええ、そうです。それと、昨日グラマン隊長と今後の魔物対策の会議していたんですよね。今後のことも考えてお話出来る内容を聞かせてもらいにきました。」

「では、まず魔物討伐の報酬ね。デーモンとインプの討伐報酬は、魔石の分も込みで34.5万ループね。対策会議の内容は一部機密事項もあるから教えられないものもあるけど。大まかな方向性として、今後襲撃の規模が拡大するとみて、防衛力の強化の方向性でいくことになったわ。

Cランクのデーモンが沢山くると、現状の戦力だけでは不足が否めなったのよね。そうそう、リュウ君はそんなデーモンを複数討伐したから、晴れて今日からCランクよ。ランクアップおめでとう。」

「ありがとうございます。と言ってランクアップが何するものかわかっていませんが。」

「ランクアップしたからと言ってなにかがそんなにすぐに変わるわけじゃないわ。そのランクの人がその魔物を討伐できる力を有している証明みたいなものよ。仕事を受けるときに、その人の実力に見合ったものか判断する材料の一つになるわね。」
 
「そうなんですね。冷蔵したデーモンの死体ってどうなりました。なんか劇的な対策とかってわかったりしてますかね。」

「それに関しては、話すらも進んでないわね。やった方が良いのは間違いないんだけど、襲撃を受けた町の被害の修復や人材の穴埋めなどでこっちの人材が不足していてね。

即効果が見込めないもの関しては、人材をまわす余裕がそこまでないのよ。そうそう、リュウ君お願いしていたポーションと薬草の進捗の方はどうかしら?」

「こちらも一昨日の今日で、そこまでは変わっていませんよ。手伝いに来てくれた二人に指導していたので、ポーション作りも薬草の採取も出来ていません。」

「そうよね。新しい子がくると、まずは指導が必要よね。でも、親切に誠実に教えて指導していれば、それは雇い主であるリュウ君にちゃんと返ってくるわよ。

初めは、毎日自分のしてきたことに、教えることと、段取り計画すること、相談することがなんかが増えて大変かもしれないけどね。リュウ君、君なら、出来るし頑張って。

もちろん、忙しいのはわかっているけど、ポーションはどうしても必要なの。私も上や、他の部署の人から、早くポーションを確保しろって、せっつかれているのよね。

なんで、ごめんだけど、1週間後にひとまず、初級ポーション30本と中級ポーション20本お願いできないかな。」

「う~~~ん。一ヶ月後までに用意しておけばと考えてたので、来週までにその量はかなり厳しいですよ。は~~~っ、でもしょうがないですね。

お世話になっているエルザさんが困っていて、そこまで言われたら、頑張ってやってみますよ。でも数が少なくても怒らないで下さいね。」

「ありがと。リュウ君。リュウ君ならきっとそう言ってくれると思ってたわ。こっちの身になって頑張ってくれる君が好きよ」

と言って、エルザさんは、僕に抱き着いて、僕の顔に豊満な胸を当ててくる。天然なのか、意図的にやっているのかわからんが恐ろしい攻撃だ。

自分の身と精神が削られるとわかっていながら、多少の無茶な要求は頑張ってみようと思わされてしまう。この攻撃は女性経験のない僕にとっては、かなりの強力な毒だ。

まずい、脳がふくよかなら柔らかさとい香りでトリップしてしまっていた。これ以上この状態でいると、今後どんな無茶な要求をされても、応えてしまいそうになる。

「エルザさん。苦しいですよ。離れて下さい」

「あらあら、お姉さん感激しちゃったわ。ごめんなさいね。特急の依頼になるから、報酬は多少は期待してもいいわよ。と言ってもちょっとだけだけどね。お役所なんで、そこまで財政が豊かでもないから。

でも、それだけだと、無茶を聞いてくれるリュウ君に悪いわね。役所としての報酬はこれ以上の増額は無理だけど、個人的にリュウ君になにかしてあげるわ。何をするかはその日までに考えておくから。楽しみにしててね。」

いや、さっきのエルザさんの抱きしめ攻撃で、報酬以上にもらってしまったのですが。。。
ま~何もいうまい。
   
「なら、エルザさんの個人報酬を楽しみにポーション作り頑張ってみます。」

「ええ、お願いね。あっそうだ。後、精霊樹の武器のことだけど。武器屋のマインちゃんに聞いたら、精霊樹の武器以外もほとんど売り切れたんですって。で、精霊樹の武器が次はいつ販売されるかって聞いたの。

そしたら、『曾祖父の代に偶然精霊樹の木材を手に入れることが出来て、試しに作ってみたものがあの長刀だったんです。だから、どうにかその精霊樹乃木材を手に入れないことには作りようもない』って言ってたわ。」

「そうなんですね。なら、これ以上、精霊樹の武器の確保は難しいってことか」

「ええ、そうなの。有効な武器を用意できると思ってたけど、材料が希少なものじゃ対策のあてにできないわ。

一応、他の知り合いの業者にも木材が入手できないか、あたってみるつもりだけど。人に聞いて、材料取り寄せて、加工してもらうとしたら、最低でも1ヶ月か長いとそもそも出来ないってこともあるから。

次回の魔物襲撃の対策案としてはまったく使えなくなったのは痛かったわ。リュウ君の方でも、なにか有効な対策がわかったら、教えてね。こちらは、情報次第でかなりの報酬を渡せると思うわ」

「ははははっ・・・・・」

またまたエルザさん無茶ぶりをぶっこん出来たよ。やりたのは山々だけど、新人二人の指導に、チルの戦闘訓練、ティタニアの依頼。で、特急のポーション作りに、それでまたさらに。デーモン対策の有効な攻撃の検証か・・・・
 
まったく時間がないぞ。社員時代なら、完全徹夜コースに突入案件だな。絶対。何日徹夜になるかわかんないぞ。これっ。

「鋭意努力します」
と元気がない声で答えるにとどめた。

「ええっ、無理がないように。頑張ってね。リュウ君。君には個人的にとても期待しているから」

僕にとって過大な期待や信頼は、重たいもので逃げたくなるものだった。は~~~っ、これからの計画また練り治さなきゃならん。

ひとまず、考えたくないから、帰って今日立てた計画だけなんとか進めよう。役所にいって、懐は温かくなったが、精神的にダメ―ジを受けたリュウはとぼとぼと帰っていくのだった。
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