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第2章 魔族襲撃編

【雇用№016】雇われ勇者 魔族襲来再び 終盤戦

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 本当にどうすればよい?

 さっきの衝突で、こっちは倒れ、疲労の蓄積もあいまった結果、身体がほとんど動かなくなっている。デーモンの攻撃を避けることも防ぐことも出来ない。まな板の上の鯉状態である。

 無詠唱魔法を発動しようにも対象の指定を指で行っていることがほとんどのため、攻撃呪文は使えない。土壁も現状空を見上げている状態で、地面が見えないので、範囲指定が出来ない。
 回避もダメ、攻撃呪文も、防御呪文もダメなにもできることがない!?

「キーッツ」
 デーモンが奇声を上げながら飛んでくるのが見える。
 冷や汗が出てくる、身体が震える。僕ここで死んじゃうのかな?
 その時、リュウの頭に走馬燈が駆け巡った。

 初めて出来た彼女のこと。
 神界に連れてこられ、女神にあったこと。
 幻想世界の城に転移させられ、王と話したこと。
 そして、王と大臣に魔女の一撃を喰らわせて、ぎっくり腰にして、転がしてやったこと。

 そっそうだ。魔女の一撃なら、視認してれば発動できる。間に合ってくれよ『スキル:魔女の一撃』

 デーモンが飛んでくる最中ぎっくり腰によって、痛みで羽根の位置を一定に保つことが出来なくなった。
 空中からの滑走での攻撃は大気の影響をもろに受け、目標地点である、リュウの場所を少しずれ、ぎりぎりの所で地面に激突していった。

 地面には砂埃が立上げ、墜落のあとが5m程続いている。デーモンは「うっぎゅ、うっぎゅ」いいながら痙攣している。

 よっ、よかった~。魔族にも『魔女の一撃』ぎっくり腰が効いた。ほんと、死ぬかと思ったわ。
 とはいえ、動けないし、次の敵、上空の統制役のデーモンにこられるとどうしようもない。

 まだ、魔女の一撃は4回使用しただけなので、使えるとはいえ、次も同じように上手くいくとは限らない。墜落する場所が僕の上なら、その衝撃だけで、死んでしまうと思っている。

 そこへガンツが走ってやってきた。

「リュウ無事か?他はなんとかなった。後は宿屋だけだ。もうひと頑張りだ。おっと、こりゃまずい。。ほとんど筋肉が痙攣して、打ち身もあって動かせないようだな。

 口に入れて飲ませるのが一番良いのだが、やっこさんが待ってくれそうにないな。ガンツ特性ポーションを体にかけるぞ。しみるけど、我慢しろ」

 ガンツの手から緑色のポーションが体に掛けられた。一口分のポーションは口の中に瓶ごと突っ込まされた。

「ぐっ、ぐぐぐぐぐ・・・・」
 身体が癒え、口が動き、ポーションを飲み干す。

「は~~っ、ホント助かりましたわ。ガンツさん。このままだと死ぬかと思いました。身体が動くようになって、ガンツさんまで来てくれたら、残った魔物に負ける道理はありませんね」

「やっこさんこっちに気付いたようだな。最後の仕事だ。いくぞ」

 身体が動くようならこっちのもんだ。敵も残すは指令塔のデーモン一匹。
『ヒートショック』の熱線が空を駆け巡りデーモンへ突き進む。
 しかし、相手は、他のデーモンとは違うのか、その熱線を空中を飛行し、器用に回避していく。

 ガンツが詠唱を始める。
『万物の澱みを清めし風よ。女神フェリシアの名の元に我難敵を切り刻む不可視の刃を放たん。ウィンドカッター』

 目にみえない、大気の刃がデーモンの羽を切り刻む。風を受ける羽がボロボロになり、空を飛ぶことが出来なくなった。地面へとゆっくりと落ちて行った。

「空中戦の相手にはな。まずは羽を攻撃し、機動力を奪うんだ。3次元の空中移動が2次元の平面での移動となれば、こっちの戦力で後は仕留めるだけだ。ま~、敵側の向こうに警備員がいるから、魔法を打つのは厳しいがな」

 ガンツさんは槍を構えて、敵に向かっていった。僕は、『疾走』を唱え、弾き飛ばされた長刀を取りにいく。そのままデーモンの側面へと向かっていった。

 デーモンの正面からはガンツさん。側面からは僕という2面攻撃。長刀を縦に構えての疾走では、空気抵抗を受けてしまう。なので槍と同様に前方に突き出す形で突進する。

 デーモンは迎撃するために、空手のような構えをとり、左腕を身体の中心を守るようにだし、右腕は、攻撃するために、後ろに引いて構えている。

 ガンツさんの槍での刺突はデーモンの左腕に当たったが、貫通することもなく、筋肉の隆起で止められた。二人の衝撃はすさまじく、互いのエネルギーが衝突し、お互いの体を弾き飛ばす。

 しかし、その最中、デーモンは当たった槍を振り払いながら、右腕の爪でガンツさんのむき出しの腹を攻撃する。

 爪が、革の鎧を切り裂き、身体にあたるかと思いきや。「ガジャン、チャリーーン」という音と共に、中に仕込んていた鎖帷子を破壊して、止まる。衝撃はそのままガンツさんを弾きとばした。
 武器を取りに走っていたため。攻撃のタイミングが遅れたリュウ。

 攻撃後で隙が出来ているデーモンの腹を目がけて刺突した。
 今度は、スピードと体重の乗っかった刺突は、デーモンの脇腹に突き刺さる。
 衝撃で吹っ飛んだデーモンから、長刀を抜き、体勢を崩している所へ、上段からの打ちおろしを放った。

 黒い血がとび、腕が切飛ばされる。迎撃されないうちに『疾走』のスピードをもって連続でデーモンに打ち込む。無限の輪を描くように流れるように長刀での打ち込みが入っていく。
 首や心臓をガードしていた残りの腕も切り刻まれ、徐々に下に垂れ下がっていく。

 首元が見えた。斜めに切り裂いていた剣筋を最後は真横に一閃する。
 切飛ばすには至らないものの、半ばまで切れ、黒い血を噴き上げ最後の一匹のデーモンは地面に倒れ落ちた。

「やった~敵将うちとったり~~~」
「おおぉ~~~っ、やったぞ~~~」
 前回にはなかった勝鬨(かちどき)が、立ち上がっている人々から大きくあがった。

 こうして、リュウの2回目の魔族襲撃は幕を閉じたのだった。
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