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第2章 ダンジョンマート金沢店 オープン編1日目

【013】ダンジョンマート金沢店オープンその4

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ふ~~ちょっと様子見に行ったのにひどい目にあったよ。僕がちょっとぽろっといらないこと言ったせいもあったけど。。。。

というか僕ってうかつな言動が多いかもしれないな。ちょっと気を付けよう。特に女性。それも特に妲己姉さんには気を付けよう。僕の貞操に関わる

ふと、戻っている最中に時計を見ると・・・・14時になってた。なってた。なってた。なってたんだよ。休憩の30分はきっかりしてたのに、妲己姉さんとこの対応で時間使い過ぎたわ。大輔さんが心配だし早く戻ろう。

常人の倍くらいのスピードで、早歩きをして、受付ホールに戻る。大輔さんのとこだけ並んでいる人の顔が険しい気がするのは気のせいだろうか。

「大輔さんお待たせしました。色々と状況確認できました。後は僕が受付対応しますから、大輔さんは、一旦休憩して、その後は午前中と同じく皆さんのフォローをお願いします。」

「リュウさん。しっかりと休憩出来たみたいでごんすな。ならわしは、ちょっと、一休憩させてもらいます。宜しくでごわす。」

大輔さんが受付ポートを離れ、上がっていくと、フロア内の息苦しさが多少へった。背の高い男の人が受付してると、威圧感でもでてるのかな?

でも、大輔さんの気遣いは僕にとってはとても心地よかったよ。ありがとう。心の中で感謝して、受付業務に戻った。

そのあとは色々とトラブルがありながらも、ま~その都度、エリックさんや、サクラちゃんのフォローもありながら、なんとか乗り切った。

トラブルっていうのは、保険契約に関する部分が結構多い。実は保険契約をするためには、残余の寿命が10年以上は必要なのだ。

それは、前にも話した気はするけど、ダンジョンで冒険をしたせいで、この人がなくなったんだという被害者を増やさないための一環である。日本では、これまで、そのような案件は、オープンから一年ということもありまだそういう事例は出ていない。

しかし、世界では、欧州や北米、東南アジアなどで、出てきてしまっているのだ。いくら保険契約にサインしているからといっても、訴えられては問題となる。

そこで、長年ダンジョンをやってきた中で出来たルールが余命10年以上という条件である。ここが文句というか、登録時の問題点の一つにもなっている。

ソウルコレクトシステムに登録する前に、「ソウルチェッカー」で余命が何年残っているかを調べている。そのスコープで額にレーザーを当てると、対応を図るように人の寿命が表示される。

それを見て、寿命が10年以上のこっているから、大丈夫と言える人は問題なく登録が出来る。

ただ、ここで問題がある。若い人だからと言って、余命が10年以上あるわけではないということだ。病弱であったり、成人病に罹かったり、交通事故にあったりと、寿命を削る症例にはことかかない。

寿命とは、この人が普通の生活を送ったとして、あとどのくらい生きられるかというものである。自然災害などのものは、寿命換算にある程度影響している。ソウルチェッカーの予知にもみた未来予測が正確であり、そこら辺は誤差10%程でカバーできている。

ただし、人間同士の、恨みや、突発的なアクシデントにおいてはその限りではない。ここら辺は変動の幅が大きく、ほとんどが予知できないため、正確な寿命として反映されない。

今回トラブルになったものというのが、高校生くらいの病弱な子が、死んでも生き返れるということで、その人も持病を医師の診断により長くは生きていられないと知ってきている。15歳くらいの子が計測してみると余命5年となっている。これでは、保険契約を結ぶこともできない。

本人にも、誤解の無いよう丁寧に説明したが、聞き入れてもらえなかった。中学生以下は、保険契約には保護者の同意が必要です。高校生は特段、保護者がいる必用はないのですが、心配な親御さんが一緒についてきてました。

どうしても、余命いくばくのない命の息子に思う存分やりたいことをさせて上げたいということを切々と訴えてこられました。
僕としても、そこまで言われたら、冒険をさせて上げたい気もしますが、会社のルールで定めてある以上個人の判断で勝手に前例を作ることは出来ないのです。

「お父さん、お母さん、残念ながら息子さんは、余命が規定に満たないため。保険契約の登録はできません。そのため、冒険者登録することはできないです」

毅然とした態度で対応した。僕は経営者であり、個人の判断でものごとを動かすわけにはいかない。そうするためには、周りを納得させるだけの確固たる理由が必要となる。

「そっそこをなんとか、なんとかお願いできませんか?息子はここ金沢にダンジョンが出来るのを楽しみにしていたんです。

病弱で友達と一緒に身体を動かすこともできず、家で読書やゲームをする日々です。このダンジョンなら、病弱であっても、死ぬことがないので思う存分冒険ができるんです。

テレビゲームを直で体験するような現実では絶対に味わうことのない貴重な経験ができるんです。どうかどうかお願いします。こちらで出来ることはなんでもしますから。」

父親の方が声を張り上げて、息子の現状と願いを訴えてくる。母親は、出来ないのではないかと目をうるうるして、息子に寄り添っている。

困ったぞ。出来ないものは出来ない。しかし、受付ホールの中で、お客様が声を張り上げたから、他のお客様の視線が集まってきた。どなたにも楽しんでもらえるようにダンジョンを経営をする必要があるのだが。困ったどう説明しよう。

そこへエリックさんがスタスタと近寄ってきた。

「お客様。そういった事情があるのであれば、もしかしたら、登録できるかもしれません。ただし、お話が込み入ったお話となるため、別室でお話させて頂きます。」

こちらへどうぞ。エレベータでエリックさんは最上階にある応接室までお客様たちを連れていった。ふぅ~~ひとまずは助かった。でも、エリックさんが連れていったけど、本当に保険契約できるのだろうか?それとも僕の知らないルールがあったりするのだろうか?

考えている間もなく、次の登録者の対応を行っていく。エリックさんの代わりには、休憩が終わった、大輔さんがちょうど入ってくれた。二人で作業すると絶対に整理券を配った人数を処理できないので助かった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

エリックさんが3人家族に語り掛ける。それは温かくも冷たい夜のような声で。しかし、それには3人が望む希望の言葉があった。

「お客様、通常は登録者本人の契約には、本人の余命が10年以上あることが必要になります。ここからは、お客様と私だけの内緒のお話となります。他にはお話しないようにお願いします。宜しいですか?」

「「「「はいっ」」」

「では、ここにあなた方の希を叶える方法が一つあります。その方法とは、通常本人の登録には、本人の寿命が必要ですが、同伴者の寿命を契約で捧げることによって、息子さんの保険契約が登録できることになります。

必要な寿命は、通常は1年ですが、特例となりますので、2年分必要となります。その際の適用期間は一年となります。こちらも自動更新となります。そして、その貸与者も冒険者登録をして、保険契約を結んで必要がありますがいかがですか?」


「そっ、そんなことが可能なんですか。それで息子が、息子が冒険者になれるならお願いします。私も妻も息子のためなら、余っている寿命を捧げましょう。

息子がいなくなったら、生きている意味なんて私たち二人にはないのですから。寿命の多い方から2年引いて下さい。私たち家族は運命共同体ですので。」


「わかりました。では、こちらの保険契約書の内容をよくお読みになった上で同意のサインをお願いします。仮にこのお話が少しでも他者に漏れた場合は、保険契約は破棄となります。その時点で払っている寿命に関しては返還されませんので、予めご理解下さい。

では、父親の○○さんは、一番余命が多いので、息子さんの2年と合わせて3年分。奥様の○○さんは、ご自身の分だけで、1年分となります。自動更新となりますが、余命が10年を切った場合は、自動的に解除されます。」

「ありがとうございます。これで3人そろってダンジョンを冒険することができます。これで、これで、自分の手で寿命を延ばすアイテムを手に入れることができる。」

父親の放ったその一言は、エリックっさんのこめかみをぴくっとさせた。

「お客様。今の寿命を延ばすアイテムのお話どこでお耳にされましたか」
少し冷たい声で父親に問う。

「この話はどうだったかな、母さんや。」

「ええとですね。お友達がお話していたのを耳に挟んだんですよ。ネットのダンジョンの七不思議のようなもので、ある7つのアイテムを揃えると寿命を延ばすことが出来るとか。

 まゆ唾のお話ですが、息子の寿命が延命する余地があるのであれば、なんとしてでも手にいれたいと思ってます。」

「スタッフさん。そんな寿命を延ばすようなアイテムは本当にあるんでしょうか?」

「そうですか。そうですか。そのようなお話があるのですね。答えではYESでもあり、NOでもある。ダンジョンの秘密を解くのは、冒険者の務めですよ。ご家族で探してみるともしかしたら、そのようなアイテムが見つかるかもしれません。」

「ないっ、とは言わないんですね。」

「ええっ。そのような権限は与えられておりませんので。しかし、このお話の内容は嘘であれ、マコトであれ、本来世に出てはならない情報です。こちらもみだりに他の人にお話されないようにお願いします」

「わかりました。」

(NOと言わないということは、裏を返せばあるということだ。中々ネットで検索しても、信憑性がなく、不確実なものだったが、これで少し希望が見えてきた。)

3人の家族はエリックさんに頭を何度も下げて、1Fへ降りて行った。

「ふむ、少しまずいかも知れませんね。まさか、日本の島国でそのようなお話がネットで流れているとは。。。。リッチ・エンぺルン様にご報告しておく必要がありそうです。」

普段は見せないような冷徹な表情をして、言葉をつぶやいた。そのあとは何事もなかったかのように、受付業務に戻るエリックさんであった。
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