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第2話:魔王の正体
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「魔王!その人を返してよ!」
泣きながら叫ぶ女勇者。
「ハハハ!いくら勇者が強かろうと、この身体には手を出せまい。お前の愛しい男の魂もこの身体の中にあるのだからな!」
魔王の高笑いが響き渡る。
「どういうことだ?」
「おそらくあれが勇者様の恋人で、今は魔王に身体を乗っ取られているのでしょう」
聖女の言葉にしばらく考える。
「なるほど、それはやっかいだな」
「ええ、死なせるわけにはまいりませんものね」
どうにかしてあの身体から魔王を追い出す必要があるわけだが。
「何かいい方法はないものかな?」
「そうですわね…勇者様の恋人の魂と魔王との力関係に変化が生じれば勝機はあるかもしれません」
「なるほど、魂を揺さぶってやればいいわけか」
ふと思い立って女勇者の隣に立ち、小声で聞いてみる。
「おい、お前はあの男とどこまでいってるんだ?」
「どこまで、とは?」
「身体の関係までいってるのかって聞いてんだよ」
一瞬で顔が真っ赤になる女勇者。
「そ、そんなこと、結婚前なのにあるわけでしょうが!」
こいつはおそらくいいとこのお嬢さんなんだろうなぁ。
「そうか、でもキスくらいはしてんだろ?」
女勇者は赤い顔のままだが、否定の言葉は返ってこなかった。
俺は女勇者の肩を抱いて魔王に向かって叫んだ。
「おい、魔王じゃなくてこいつの恋人さんよ。その玉座からよ~く見ておきな!」
女勇者を抱き寄せて、小さな声で話しかける。
「悪いがこれも作戦の1つだから許してくれよな。幸いファーストキスじゃねぇようだしさ」
いきなり女勇者の唇をむさぼる。
「んん~っ!」
片手で女勇者の細い腰を抱き寄せ、もう片方の手は彼女の後頭部にまわして逃げられないようにする。
舌を絡ませていくうちに女勇者の抵抗がなくなってくる。
キスは経験済だったようだが、こういう深いキスは未経験だったのかもしれない。
まぁ、これくらいいいよな、うん。
「ううっ!」
突然、魔王が苦しみ出した。
すぐに唇を離して叫ぶ。
「聖女殿、そっちは任せたぞ!」
「わかりましたわ!」
聖女がまるで歌のように聞こえる呪文を唱え出すと、魔王の苦しみはいっそう増したようで、その場でのたうちまわる。
やがてその身体から黒いもやのようなものが見えてきた。
「勇者よ、しっかりしろ!魔王の本体があの身体を離れたら、すぐさま聖剣でぶった切れ!」
「は、はい!」
女勇者はキスの後しばらく呆然としていたが、聖剣を抜いて魔王に駆け寄る。
魔王の装束を身につけた身体から大きな黒いカラスのような鳥が出てきたところで、女勇者は聖剣を振るった。
「魔王、覚悟しろ!」
聖剣で切られた黒い鳥は奇声を発した後に砂になり、風に飛ばされていった。
女勇者は横たわっている男に泣きながら抱きつく。
「ああ、また君に会えてうれしいよ」
さっきまで真っ赤に光っていた男の眼は澄んだ青に変わっていた。
「私がどれだけ心配したと思ってるのよ?もう絶対離さないんだからね!」
あ~あ、見てらんねぇわ。
しばらくしてようやく落ち着いてきた頃、ようやく話を聞くことが出来た。
魔王に身体を乗っ取られていた女勇者の恋人は、我が国の第三王子殿下であることが判明。
魔法マニアである彼は興味本位で禁忌の実験を行って失敗し、魔王に取り付かれてしまったらしい。
そりゃあ魔王討伐が国の極秘任務になるわけだ。
そして女勇者は王宮騎士団長の娘だった。かつて騎士団にいた俺は団長とも面識があるのだが、俺を魔王討伐の一員として推薦したのは団長だったらしい。それにしても顔が親父さんに似なくてよかったなぁ。
ちなみに荷物持ちの男は騎士団長の家に勤めている者で、女勇者のお目付け役とのこと。だからちょっかいを出すとにらまれてたのか。
泣きながら叫ぶ女勇者。
「ハハハ!いくら勇者が強かろうと、この身体には手を出せまい。お前の愛しい男の魂もこの身体の中にあるのだからな!」
魔王の高笑いが響き渡る。
「どういうことだ?」
「おそらくあれが勇者様の恋人で、今は魔王に身体を乗っ取られているのでしょう」
聖女の言葉にしばらく考える。
「なるほど、それはやっかいだな」
「ええ、死なせるわけにはまいりませんものね」
どうにかしてあの身体から魔王を追い出す必要があるわけだが。
「何かいい方法はないものかな?」
「そうですわね…勇者様の恋人の魂と魔王との力関係に変化が生じれば勝機はあるかもしれません」
「なるほど、魂を揺さぶってやればいいわけか」
ふと思い立って女勇者の隣に立ち、小声で聞いてみる。
「おい、お前はあの男とどこまでいってるんだ?」
「どこまで、とは?」
「身体の関係までいってるのかって聞いてんだよ」
一瞬で顔が真っ赤になる女勇者。
「そ、そんなこと、結婚前なのにあるわけでしょうが!」
こいつはおそらくいいとこのお嬢さんなんだろうなぁ。
「そうか、でもキスくらいはしてんだろ?」
女勇者は赤い顔のままだが、否定の言葉は返ってこなかった。
俺は女勇者の肩を抱いて魔王に向かって叫んだ。
「おい、魔王じゃなくてこいつの恋人さんよ。その玉座からよ~く見ておきな!」
女勇者を抱き寄せて、小さな声で話しかける。
「悪いがこれも作戦の1つだから許してくれよな。幸いファーストキスじゃねぇようだしさ」
いきなり女勇者の唇をむさぼる。
「んん~っ!」
片手で女勇者の細い腰を抱き寄せ、もう片方の手は彼女の後頭部にまわして逃げられないようにする。
舌を絡ませていくうちに女勇者の抵抗がなくなってくる。
キスは経験済だったようだが、こういう深いキスは未経験だったのかもしれない。
まぁ、これくらいいいよな、うん。
「ううっ!」
突然、魔王が苦しみ出した。
すぐに唇を離して叫ぶ。
「聖女殿、そっちは任せたぞ!」
「わかりましたわ!」
聖女がまるで歌のように聞こえる呪文を唱え出すと、魔王の苦しみはいっそう増したようで、その場でのたうちまわる。
やがてその身体から黒いもやのようなものが見えてきた。
「勇者よ、しっかりしろ!魔王の本体があの身体を離れたら、すぐさま聖剣でぶった切れ!」
「は、はい!」
女勇者はキスの後しばらく呆然としていたが、聖剣を抜いて魔王に駆け寄る。
魔王の装束を身につけた身体から大きな黒いカラスのような鳥が出てきたところで、女勇者は聖剣を振るった。
「魔王、覚悟しろ!」
聖剣で切られた黒い鳥は奇声を発した後に砂になり、風に飛ばされていった。
女勇者は横たわっている男に泣きながら抱きつく。
「ああ、また君に会えてうれしいよ」
さっきまで真っ赤に光っていた男の眼は澄んだ青に変わっていた。
「私がどれだけ心配したと思ってるのよ?もう絶対離さないんだからね!」
あ~あ、見てらんねぇわ。
しばらくしてようやく落ち着いてきた頃、ようやく話を聞くことが出来た。
魔王に身体を乗っ取られていた女勇者の恋人は、我が国の第三王子殿下であることが判明。
魔法マニアである彼は興味本位で禁忌の実験を行って失敗し、魔王に取り付かれてしまったらしい。
そりゃあ魔王討伐が国の極秘任務になるわけだ。
そして女勇者は王宮騎士団長の娘だった。かつて騎士団にいた俺は団長とも面識があるのだが、俺を魔王討伐の一員として推薦したのは団長だったらしい。それにしても顔が親父さんに似なくてよかったなぁ。
ちなみに荷物持ちの男は騎士団長の家に勤めている者で、女勇者のお目付け役とのこと。だからちょっかいを出すとにらまれてたのか。
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