かわいいは無敵だ

中田カナ

文字の大きさ
上 下
5 / 7

第5話 上級生

しおりを挟む
『ようこそ、お客様方』

 ふと気がつくと、テラスの前に広がる広い芝生にはエメラルドグリーンのドラゴンがいた。
「ああ、私のパートナーのドラゴンだ」
 第三王子殿下が私の聖獣様をなで続けながら紹介してくれる。

「あ、あの、おじゃましています!」
 思わず立ち上がって礼をする。実家の龍達とはまた違うかっこよさだ。
『本日は殿下の要望に応じていただき、本当にありがとうございます。モフモフした生物と戯れるのが殿下の夢でしたのよ』
 初めてドラゴンに会うけれど、なんとなく微笑んでいるのがわかる。

「あの、でも、よろしかったのでしょうか?」
 私の問いかけに首をかしげるドラゴン様。
『何がでしょう?』
「パートナーである貴女がいらっしゃるのに他の聖獣を触るなんて、お気を悪くなさっているのではないかと」
 首を横に振るドラゴン様。

『大丈夫ですわ。殿下はいつも私に優しくしてくださいますもの。この国の王族は7歳になるとドラゴンをパートナーとする慣わしなのですが、それまで殿下はいろんな動物をかわいがっておりましたわ。ですが、私の力が強すぎて他の動物や聖獣から避けられるようになり、大変申し訳なく思っておりましたの』
 優しいドラゴン様だなぁ。

「ああっ?!」
 そろそろなでられることに飽きてきた聖獣様は、殿下の膝の上からぴょんと飛び降りて私のところへ戻ってきた。
 悲しそうな顔の第三王子殿下。

『そんな顔をするでない。美味い菓子の礼に今後もなでることを許可しよう』
「本当ですか?!」
 パッと殿下の笑顔が輝く。
『我が飽きるまでだがな』
 聖獣様はお菓子で簡単に釣られて連れ去られそうなので気をつけねば…と、やりとりを聞いていた私は思った。


 それからは学院の放課後が主なモフモフ時間となった。
 当初、第三王子殿下は昼休みも希望していたが、私だって級友達と過ごす時間が欲しいと率直に話したら納得してくれた。

 放課後の殿下は、いつも聖獣様と私のためにお菓子を持ってきてくれる。そして聖獣様をなでながら私に勉強を教えてくれる。恐縮する私に、
「上級生なのだから、これくらいは軽いものさ。私自身のおさらいにもなるしね」
 と笑顔で答えてくれる。その教え方がとてもわかりやすい上に、あいかわらずいい声なので、私の成績も上向いてきている。



 放課後になっても談話室に殿下がなかなかいらっしゃらない日。

 私は上級生の女子学生達に半ば強引に連れ出され、校舎の裏手で囲まれていた。
「平民のくせに生意気よ!」
「下級生のくせに殿下と親しくするなんて!」
「好かれてるのは貴女じゃなくて聖獣なんだからね!」
 うん、最後のは同意だな。

「おとなしく身を引きなさいよ!」
 そんなこと言われても、こちらも頼まれてるだけだしなぁ。
「あの、そういうことは殿下に直接おっしゃっていただけませんでしょうか?」

「「「 なんですってぇ~?! 」」」

 つい正直に言ってしまったら、どうやら皆さんの逆鱗に触れてしまったらしい。

「どうやら少し痛い目を見ないとわからないようですわね?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。 ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…! 8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。 同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。 実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。 恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。 自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

悪役令嬢ですが最強ですよ??

鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。 で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。 だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw 主人公最強系の話です。 苦手な方はバックで!

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

落ちこぼれ公爵令息の真実

三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。 設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。 投稿している他の作品との関連はありません。 カクヨムにも公開しています。

異世界転生 勝手やらせていただきます

仏白目
ファンタジー
天使の様な顔をしたアンジェラ  前世私は40歳の日本人主婦だった、そんな記憶がある 3歳の時 高熱を出して3日間寝込んだ時 夢うつつの中 物語をみるように思いだした。 熱が冷めて現実の世界が魔法ありのファンタジーな世界だとわかり ワクワクした。 よっしゃ!人生勝ったも同然! と思ってたら・・・公爵家の次女ってポジションを舐めていたわ、行儀作法だけでも息が詰まるほどなのに、英才教育?ギフテッド?えっ? 公爵家は出来て当たり前なの?・・・ なーんだ、じゃあ 落ちこぼれでいいやー この国は16歳で成人らしい それまでは親の庇護の下に置かれる。  じゃ16歳で家を出る為には魔法の腕と、世の中生きるには金だよねーって事で、勝手やらせていただきます! * R18表現の時 *マーク付けてます *ジャンル恋愛からファンタジーに変更しています 

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

処理中です...