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後編
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説明を終えた王太子殿下が、改めて私に頭を下げる。
「様々なしがらみで断れなかった側近候補達を切るため、不快な思いをすることを承知の上で貴女が動いてくれたことに心から感謝する。あのままではどうしようかと本当に困っていたんだ」
「あら、何のことでしょうか?私は自分の陰口を叩かれていたことが気に入らなかっただけですわ。そうそう、あの場での淑女らしからぬ行動、改めてこの場にてお詫び申し上げます」
私が頭を下げると殿下が微笑んだ。
「では、そういうことにしておこうか」
なんだ、やはり気づかれていましたか。
身分にあぐらをかいた側近候補達の痛い言動に殿下が頭を抱えていたのはだいぶ前からのことだった。
あの時間に私が通ることは殿下はよくご存知のはずなので、うまいこと話を誘導してくれていたのだろう。
それにまだ婚約の発表はしていないけれど、私の妹にはすでに相思相愛のお相手がいる。そもそも橋渡し役となったのは殿下なのだから、婚約者の乗り換えなんてありえない話で、これだけでお芝居なのはバレバレだわね。
「で、さっきの荷造りは何なのかな?間違っても婚約解消などしないから、もしも傷心旅行とかいうのなら中止してもらうことになるんだが」
私はにっこり笑って答える。
「ふふふ、領地の方で従姉の結婚式がありますのよ。従姉は服飾関係の仕事をしておりまして、ウェディングドレスもご自分でデザインして作られたと聞いておりますので、今からとても楽しみなのですわ」
向かい側に座っていた殿下が立ち上がって私の隣に座って肩を抱く。
「そういうことなら王太子妃教育の息抜きも兼ねて存分に楽しんでくるといいよ。もし従姉殿のドレスが気に入ったのなら、貴女の分の製作も依頼してきていいからね」
ああ、もう、この人はなんでそんなことまでわかってしまうのかしら。
そして殿下は私の髪を一房手にして口づける。
「でも忘れないでおくれ。貴女を世界一の花嫁にするのは私の役目だからね」
「様々なしがらみで断れなかった側近候補達を切るため、不快な思いをすることを承知の上で貴女が動いてくれたことに心から感謝する。あのままではどうしようかと本当に困っていたんだ」
「あら、何のことでしょうか?私は自分の陰口を叩かれていたことが気に入らなかっただけですわ。そうそう、あの場での淑女らしからぬ行動、改めてこの場にてお詫び申し上げます」
私が頭を下げると殿下が微笑んだ。
「では、そういうことにしておこうか」
なんだ、やはり気づかれていましたか。
身分にあぐらをかいた側近候補達の痛い言動に殿下が頭を抱えていたのはだいぶ前からのことだった。
あの時間に私が通ることは殿下はよくご存知のはずなので、うまいこと話を誘導してくれていたのだろう。
それにまだ婚約の発表はしていないけれど、私の妹にはすでに相思相愛のお相手がいる。そもそも橋渡し役となったのは殿下なのだから、婚約者の乗り換えなんてありえない話で、これだけでお芝居なのはバレバレだわね。
「で、さっきの荷造りは何なのかな?間違っても婚約解消などしないから、もしも傷心旅行とかいうのなら中止してもらうことになるんだが」
私はにっこり笑って答える。
「ふふふ、領地の方で従姉の結婚式がありますのよ。従姉は服飾関係の仕事をしておりまして、ウェディングドレスもご自分でデザインして作られたと聞いておりますので、今からとても楽しみなのですわ」
向かい側に座っていた殿下が立ち上がって私の隣に座って肩を抱く。
「そういうことなら王太子妃教育の息抜きも兼ねて存分に楽しんでくるといいよ。もし従姉殿のドレスが気に入ったのなら、貴女の分の製作も依頼してきていいからね」
ああ、もう、この人はなんでそんなことまでわかってしまうのかしら。
そして殿下は私の髪を一房手にして口づける。
「でも忘れないでおくれ。貴女を世界一の花嫁にするのは私の役目だからね」
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