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過去に戻り、一夜明けた。
「おはようございます、クラリスお嬢様」
「おはよう、トーニャ」
今朝起きても、トーニャは傍にいた。
ああ、本当に良かった。
時間が戻ったのは夢じゃなかったみたいで、改めて安心する。
いよいよ始まった私の二週目ライフ。
朝食をとったあと、すべきことを考える。
今度こそ、幸せを掴みとるために。
自分で言うのもなんだが、前世の私は殆ど考えていないお気楽女だった。
のんのんと生きて、ただ幸せな結婚を夢見ていた。
学園で同い年の王族であるメルゼット王国の第二王子ファウスト殿下の取り巻きAとしてキャーキャー騒いでいた。
若さゆえの過ちだと、今ならわかる。
自己を高めることもしなかった私だ。
外から叫んでいるだけの私が、殿下に興味を持たれるはずもない。
私は彼にとって、その他大勢の令嬢のだったことだろう。
勿論、当時の熱は完全に消えたけどね。
二百年昔の話だし。
そも、私たちを助けてくれなかった王族たちに好印象をいだけるはずもない。
現在は、王子の顔すらうろ覚えである。
戻ってからというもの、少し記憶がぼやけている。
前世の断罪時を思い出そうとしても詳しく思い出せない。
昔はあんなに憎んでいたはずなのに……。
世界の強制力が働いたのか、大規模の時空魔法の副作用か。
どうにも頭の中に靄がかっている。
なんにせよ、学園に行っても前回と同じ取り巻きになる理由もない。
あまり目立たず騒がずに生きていこうと思う。
平穏は最高だ! それがどれだけ価値のあるものか失って初めて思い知った。
そも、私の存在は異質である。
時空魔法が使えることを、上の人間に知られると面倒になるしね。
出る杭は打たれるが、出ない杭は打たれない。
辺境伯令嬢という高位貴族の立場上、王族との接触はゼロにはできないが、最小限で抑えるスタンスで行く。
平穏を楽しみつつも、やるべきことはやる。
魔物暴走が起きるまで十年以上ある。
この身を、お父様やトーニャ、大切な人を守れるだけの力を手に入れる。
そのための下地を今からしっかりと作る。
できたら情報の入手、現段階ではまだ何もわかっていないが、領地が滅んだ理由がわかれば対処しやすくなるはずだ。
(本当は過去戻りで、お母様も助けたかったけど……)
母は私が生まれてすぐ事故で亡くなっている。
なので私の家族は父と二人だけだ。
そのせいか父は、私に対して持てる愛情のすべてを注ぎ込むような、親馬鹿となってしまったわけだけど……。
時空魔法で時を戻すには魔力だけでなく、しっかりとした過去のイメージが必要だ。
イメージとは当時の自分の行動を思い出すことである。
いつ、どこで、何をしていた時か……をはっきりさせる必要がある。
私は実験島から、記憶にあるこの部屋で、楽しく遊んでいる自分を思い浮かべて飛んだ。
まぁ二百年近く前となると過去のイメージが曖昧であり、これも巻き戻し過ぎた原因の一つだろう。
ゼロ歳児まで時を巻き戻さなかったのは、母様が亡くなった当時の赤子の自分の記憶がなく、想像できなかったからだ。
薄情に思えるかもしれないが、もし戻す時間を間違えれば、私の存在そのものが歴史から消滅しかねない。
あまりにもリスクが大きく、試す勇気がでなかった。
子供時代まで若返ってしまったが、猶予を得たという意味では理想の年代かもしれない。
幼少期が一番魔力を増やせる時期だからだ。
本来なら、ちゃんとした魔法教師を王宮から呼んで、事故を防ぐため魔法式を学んで、と手順を踏むのだろう。
魔法式を理解するには一定の数学的知識が必要となる。
しかし私は足し算、掛け算、分数の割算も余裕で習得している。
い、いや精神年齢二百歳が得意げに語ることもでもないんだけどね。
時空魔法を習得する際に魔力の扱いに関しては相当の修練を積んだ。
自身を鍛える方法はわかっている。
さぁ、頑張るぞ……と。
私は意気込んで魔法の練習に励むのだった。
「おはようございます、クラリスお嬢様」
「おはよう、トーニャ」
今朝起きても、トーニャは傍にいた。
ああ、本当に良かった。
時間が戻ったのは夢じゃなかったみたいで、改めて安心する。
いよいよ始まった私の二週目ライフ。
朝食をとったあと、すべきことを考える。
今度こそ、幸せを掴みとるために。
自分で言うのもなんだが、前世の私は殆ど考えていないお気楽女だった。
のんのんと生きて、ただ幸せな結婚を夢見ていた。
学園で同い年の王族であるメルゼット王国の第二王子ファウスト殿下の取り巻きAとしてキャーキャー騒いでいた。
若さゆえの過ちだと、今ならわかる。
自己を高めることもしなかった私だ。
外から叫んでいるだけの私が、殿下に興味を持たれるはずもない。
私は彼にとって、その他大勢の令嬢のだったことだろう。
勿論、当時の熱は完全に消えたけどね。
二百年昔の話だし。
そも、私たちを助けてくれなかった王族たちに好印象をいだけるはずもない。
現在は、王子の顔すらうろ覚えである。
戻ってからというもの、少し記憶がぼやけている。
前世の断罪時を思い出そうとしても詳しく思い出せない。
昔はあんなに憎んでいたはずなのに……。
世界の強制力が働いたのか、大規模の時空魔法の副作用か。
どうにも頭の中に靄がかっている。
なんにせよ、学園に行っても前回と同じ取り巻きになる理由もない。
あまり目立たず騒がずに生きていこうと思う。
平穏は最高だ! それがどれだけ価値のあるものか失って初めて思い知った。
そも、私の存在は異質である。
時空魔法が使えることを、上の人間に知られると面倒になるしね。
出る杭は打たれるが、出ない杭は打たれない。
辺境伯令嬢という高位貴族の立場上、王族との接触はゼロにはできないが、最小限で抑えるスタンスで行く。
平穏を楽しみつつも、やるべきことはやる。
魔物暴走が起きるまで十年以上ある。
この身を、お父様やトーニャ、大切な人を守れるだけの力を手に入れる。
そのための下地を今からしっかりと作る。
できたら情報の入手、現段階ではまだ何もわかっていないが、領地が滅んだ理由がわかれば対処しやすくなるはずだ。
(本当は過去戻りで、お母様も助けたかったけど……)
母は私が生まれてすぐ事故で亡くなっている。
なので私の家族は父と二人だけだ。
そのせいか父は、私に対して持てる愛情のすべてを注ぎ込むような、親馬鹿となってしまったわけだけど……。
時空魔法で時を戻すには魔力だけでなく、しっかりとした過去のイメージが必要だ。
イメージとは当時の自分の行動を思い出すことである。
いつ、どこで、何をしていた時か……をはっきりさせる必要がある。
私は実験島から、記憶にあるこの部屋で、楽しく遊んでいる自分を思い浮かべて飛んだ。
まぁ二百年近く前となると過去のイメージが曖昧であり、これも巻き戻し過ぎた原因の一つだろう。
ゼロ歳児まで時を巻き戻さなかったのは、母様が亡くなった当時の赤子の自分の記憶がなく、想像できなかったからだ。
薄情に思えるかもしれないが、もし戻す時間を間違えれば、私の存在そのものが歴史から消滅しかねない。
あまりにもリスクが大きく、試す勇気がでなかった。
子供時代まで若返ってしまったが、猶予を得たという意味では理想の年代かもしれない。
幼少期が一番魔力を増やせる時期だからだ。
本来なら、ちゃんとした魔法教師を王宮から呼んで、事故を防ぐため魔法式を学んで、と手順を踏むのだろう。
魔法式を理解するには一定の数学的知識が必要となる。
しかし私は足し算、掛け算、分数の割算も余裕で習得している。
い、いや精神年齢二百歳が得意げに語ることもでもないんだけどね。
時空魔法を習得する際に魔力の扱いに関しては相当の修練を積んだ。
自身を鍛える方法はわかっている。
さぁ、頑張るぞ……と。
私は意気込んで魔法の練習に励むのだった。
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