3 / 8
3
しおりを挟む
鏡に映る昔の自分。
年齢は六、七歳というところ。
身長も一メートルちょいくらいか。
ど、どう頑張っても十歳以上には見えない……よね?
これは一体どういうことだろう。
「……い、いたい」
思考を中断するように、ずきずきと痛みだした足。
さっきベッドから降りた時、着地失敗し、膝には擦り傷もできている。
まぁこのくらいの傷、どうということもない。
私は回復魔法は使えないけど時空魔法があり、健康な状態に時間を戻すことは可能。
一応……子供の姿で魔法が使えるか試しておこうか。
精神を集中。
魔力をコントロールして時空魔法を発動させる。
今から数十秒前に照準を合わせて肉体時間を逆行させる。
身体の周りを淡く光りだす魔力の輝き。
あっという間に痛みが消滅していく。
擦り傷も完全に消えた。
(よし、無事成功ね)
この幼い身体でも使えることは使えるようだ。
時空魔法は凄まじく便利ではあるが制約も多い。
跳躍させる時間に比例して飛躍的に魔力消費が増える。
後、行使する対象規模によって魔力消費も増える。
今回のように、自分だけを対象に、少し前の状態に戻すなら魔力消費は抑えられる。
とはいえ、今の自分は子供だ。
一回魔法を使っただけで、ほぼ魔力がすっからかんの状態に。
時空魔法にも制約はあり、魔力量は何故か時を戻しても戻らない。
子供に肉体を戻したことで保有魔力量が一気に減ったらしい。
また、鍛えないと駄目だな、これは……。
と、残念だけど、そんなことは後だ後。
今は身体よりも、現状確認を優先すべき。
もし私の子供時代に戻れているなら、屋敷に知り合いがいるはず……と、ドアの方へと向かおうとしたところ。
ドタドタと音が廊下から聞こえ、ガチャリと部屋の扉が開いた。
「な、ななな、何事ですか、クラリスお嬢様っ! 先ほど凄い音が部屋から響いてきたのですが……」
「……え?」
そこには肩まで銀髪を伸ばした十三歳くらいの少女。
我が家のメイド服を着た少女が、大慌てで走ってきて、心配そうに私を見つめている。
「あ、ああ……トーニャ」
ミドガル辺境伯家に仕える従士長の娘で私の世話係の女の子。
最後に会ったのが二百年昔、それでも見間違えようのない。
「う、うう、う……あ」
「ど、どうしましたお嬢様? そんな今にも泣きそうな顔をして。あ、もしかして、寝ぼけてベッドから落ちて体を打ったのですか?」
心配そうに駆け寄ってくるトーニャ。
過去の彼女との思い出が一気にフラッシュバックする。
懐かしさと喜びで一気にあふれ出す雫。
「と、トーニャああああああっ!」
「うわっ!」
決壊してしまう涙腺。
感極まった私は彼女の胸へと勢いよく飛び込んでいく。
「え、なっ、なに! おおお、お嬢様? どうされ、ええええ?」
「う、うぐっ! うわああああああんっ!」
約二百年ぶりの人の体温、そして再会に。
私は涙が出尽くすほどに泣き続けたのだった。
年齢は六、七歳というところ。
身長も一メートルちょいくらいか。
ど、どう頑張っても十歳以上には見えない……よね?
これは一体どういうことだろう。
「……い、いたい」
思考を中断するように、ずきずきと痛みだした足。
さっきベッドから降りた時、着地失敗し、膝には擦り傷もできている。
まぁこのくらいの傷、どうということもない。
私は回復魔法は使えないけど時空魔法があり、健康な状態に時間を戻すことは可能。
一応……子供の姿で魔法が使えるか試しておこうか。
精神を集中。
魔力をコントロールして時空魔法を発動させる。
今から数十秒前に照準を合わせて肉体時間を逆行させる。
身体の周りを淡く光りだす魔力の輝き。
あっという間に痛みが消滅していく。
擦り傷も完全に消えた。
(よし、無事成功ね)
この幼い身体でも使えることは使えるようだ。
時空魔法は凄まじく便利ではあるが制約も多い。
跳躍させる時間に比例して飛躍的に魔力消費が増える。
後、行使する対象規模によって魔力消費も増える。
今回のように、自分だけを対象に、少し前の状態に戻すなら魔力消費は抑えられる。
とはいえ、今の自分は子供だ。
一回魔法を使っただけで、ほぼ魔力がすっからかんの状態に。
時空魔法にも制約はあり、魔力量は何故か時を戻しても戻らない。
子供に肉体を戻したことで保有魔力量が一気に減ったらしい。
また、鍛えないと駄目だな、これは……。
と、残念だけど、そんなことは後だ後。
今は身体よりも、現状確認を優先すべき。
もし私の子供時代に戻れているなら、屋敷に知り合いがいるはず……と、ドアの方へと向かおうとしたところ。
ドタドタと音が廊下から聞こえ、ガチャリと部屋の扉が開いた。
「な、ななな、何事ですか、クラリスお嬢様っ! 先ほど凄い音が部屋から響いてきたのですが……」
「……え?」
そこには肩まで銀髪を伸ばした十三歳くらいの少女。
我が家のメイド服を着た少女が、大慌てで走ってきて、心配そうに私を見つめている。
「あ、ああ……トーニャ」
ミドガル辺境伯家に仕える従士長の娘で私の世話係の女の子。
最後に会ったのが二百年昔、それでも見間違えようのない。
「う、うう、う……あ」
「ど、どうしましたお嬢様? そんな今にも泣きそうな顔をして。あ、もしかして、寝ぼけてベッドから落ちて体を打ったのですか?」
心配そうに駆け寄ってくるトーニャ。
過去の彼女との思い出が一気にフラッシュバックする。
懐かしさと喜びで一気にあふれ出す雫。
「と、トーニャああああああっ!」
「うわっ!」
決壊してしまう涙腺。
感極まった私は彼女の胸へと勢いよく飛び込んでいく。
「え、なっ、なに! おおお、お嬢様? どうされ、ええええ?」
「う、うぐっ! うわああああああんっ!」
約二百年ぶりの人の体温、そして再会に。
私は涙が出尽くすほどに泣き続けたのだった。
1
お気に入りに追加
268
あなたにおすすめの小説
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
【完結】王子と結婚するには本人も家族も覚悟が必要です
宇水涼麻
ファンタジー
王城の素晴らしい庭園でお茶をする五人。
若い二人と壮年のおデブ紳士と気品あふれる夫妻は、若い二人の未来について話している。
若い二人のうち一人は王子、一人は男爵令嬢である。
王子に見初められた男爵令嬢はこれから王子妃になるべく勉強していくことになる。
そして、男爵一家は王子妃の家族として振る舞えるようにならなくてはならない。
これまでそのような行動をしてこなかった男爵家の人たちでもできるものなのだろうか。
国王陛下夫妻と王宮総務局が総力を挙げて協力していく。
男爵令嬢の教育はいかに!
中世ヨーロッパ風のお話です。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる