縁の鎖

T T

文字の大きさ
上 下
125 / 186
変わりゆく日常

バースデイパーティーの明暗

しおりを挟む
「皆様、今宵は愛娘フィサリスの祝いの席にお集まりいただき、心より感謝いたします。私が長々と挨拶をしていると後が怖いので、今日の主役を紹介してしまいましょう。娘のフィサリスです。」

ジェイドがフィサリスの登場を促す。
フィサリスが登場すると、会場は騒ついた。
その瞬間、ジュエリアは凍りつく。
サーペントは目を疑った。

「皆、思う所があるとは思う。フィサリス嬢は今年、途中編入したばかりで学園に親しい者も少なく婚約者もいない。せっかくの誕生日にエスコート役が居ないのは余りにも可愛そうだと思い、学園の先輩として未来の義兄として、私が今宵のエスコート役を請け負った。」
「王太子殿下、ありがとうございます。細かな気遣い、いつも感謝しております。そして皆様。今宵は私のために、お集まりいただきました事に、感謝いたします。楽しんでいただけるように、精一杯おもてなしさせていただきます。」

ジュエリアはカーネリアンが出席する事も、ましてフィサリスをエスコートするなど知らなかった。
ジュエリアは目眩めまいを覚える。


「義姉上、いったん外に出ましょう。顔色が悪いです。」
「・・・え、えぇ。」

ジュエリアは震える足取りで、テラスへ出る。

「兄上が出席する事も、エスコート役を受けていた事も知らなかったの?」
「…えぇ。」
「ここへ来る前、父上に会っていたんだ。その時の様子から、父上も知らされていなかったようだ。もし知っていれば、俺に義姉上を引き留めさせていただろうからね。」
「…えぇ。」

ジュエリアは混乱していた。
同時に胸騒ぎがしていた。

室内から楽団の音楽が聞こえて来る。
パーティーを盛り上げる、ワルツがレクイエムに聞こえる。


「聞きました?フィサリス様のドレスもアクセサリーも、王太子殿下がご用意されたそうですわ。」
「まぁ!様はマメでいらっしゃるのね。」
様なんて、殿下もお上手な言い回しですこと。」
「本当ですわね。今宵は、楽しいパーティーですわ。」

お喋り好きなご婦人が、明日には学園だけでなく国中に噂を広めるだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

砕けた愛は、戻らない。

豆狸
恋愛
「殿下からお前に伝言がある。もう殿下のことを見るな、とのことだ」 なろう様でも公開中です。

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

処理中です...