縁の鎖

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禍の足音

火葬

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ロベルトが林のコテージへ向かったころ邸では、侍従のロベルトに扮した暗殺部員のディラがジェイドの意向を伝えていた。

「旦那様は葬儀を行わないとお決めになりました。今から火葬いたします。」
「!?ほ、本当にお父様が、そう仰ったの!?火葬なんて…お母様が可愛そうですわ。葬儀はしなくても、墓地へ埋葬してはいけないの?」

フィサリスの意見を無視する様に、ディラがロベルトとして指揮を取る。


「別邸跡地なら火を使っても、燃え移る物も無いし安心だ。直ぐに薪と燃料を組め、火葬の準備をしろ。」
「ロベルト!お願い!お父様に連絡を取って!酷すぎるわ!」
「旦那様は王都のお邸で喪に服されており、誰とも連絡は取り合えません。お嬢様、王家へのケジメと思ってください。」
「1週間…いいえ、3日だけ待って!私が王都へ行って来るわ!私だったら、お父様も会ってくださるわ!お母様の火葬を止めなくては!」
「お嬢様は、領地から出る事を禁止されております。王都へ向かえば即刻、修道院へ行く事になります。」
「それでも構わないわ!どの道、修道院へ行くもの。時期が早まったと言うだけのことよ。火葬にされるお母様を思えば、大した事ではないわ!」
「ただ修道院へ行く、と言う訳ではないのですよ。除籍のうえ何の支援もなく修道院へ行く事の意味を、お分かりではないようですね。支援の無い元貴族令嬢の扱いは、使用人以下。奴隷と言っても過言ではありません。それでも、いいのですか?」
「そ、それは・・・」
「テルル、お嬢様をお連れしろ。」
「はい。お嬢様、東屋で一息つきましょう。」



連れて来られた東屋でフィサリスは火葬の準備を眺め、涙が止まらなかった。
母親の火葬が始まると、現実を直視できず泣き崩れた。

しくも別邸が火事の時ジュエリアが一夜を明かした東屋で、フィサリスは母親の火葬が終わるのを待った。


「お嬢様。火葬が終わりました。」
「・・・そう。では、お母様の墓標へ手向ける花を摘みに行くわ。今の時期はお母様のお好きだった、ピオニーが裏庭に咲いているもの。」
「お供いたします。」

女家庭教師ガヴァネスのテルルがフィサリスを支える様に、裏庭へ向かう。
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