92 / 186
禍の足音
火葬
しおりを挟む
ロベルトが林のコテージへ向かったころ邸では、侍従のロベルトに扮した暗殺部員のディラがジェイドの意向を伝えていた。
「旦那様は葬儀を行わないとお決めになりました。今から火葬いたします。」
「!?ほ、本当にお父様が、そう仰ったの!?火葬なんて…お母様が可愛そうですわ。葬儀はしなくても、墓地へ埋葬してはいけないの?」
フィサリスの意見を無視する様に、ディラがロベルトとして指揮を取る。
「別邸跡地なら火を使っても、燃え移る物も無いし安心だ。直ぐに薪と燃料を組め、火葬の準備をしろ。」
「ロベルト!お願い!お父様に連絡を取って!酷すぎるわ!」
「旦那様は王都のお邸で喪に服されており、誰とも連絡は取り合えません。お嬢様、王家へのケジメと思ってください。」
「1週間…いいえ、3日だけ待って!私が王都へ行って来るわ!私だったら、お父様も会ってくださるわ!お母様の火葬を止めなくては!」
「お嬢様は、領地から出る事を禁止されております。王都へ向かえば即刻、修道院へ行く事になります。」
「それでも構わないわ!どの道、修道院へ行くもの。時期が早まったと言うだけのことよ。火葬にされるお母様を思えば、大した事ではないわ!」
「ただ修道院へ行く、と言う訳ではないのですよ。除籍のうえ何の支援もなく修道院へ行く事の意味を、お分かりではないようですね。支援の無い元貴族令嬢の扱いは、使用人以下。奴隷と言っても過言ではありません。それでも、いいのですか?」
「そ、それは・・・」
「テルル、お嬢様をお連れしろ。」
「はい。お嬢様、東屋で一息つきましょう。」
連れて来られた東屋でフィサリスは火葬の準備を眺め、涙が止まらなかった。
母親の火葬が始まると、現実を直視できず泣き崩れた。
奇しくも別邸が火事の時ジュエリアが一夜を明かした東屋で、フィサリスは母親の火葬が終わるのを待った。
「お嬢様。火葬が終わりました。」
「・・・そう。では、お母様の墓標へ手向ける花を摘みに行くわ。今の時期はお母様のお好きだった、ピオニーが裏庭に咲いているもの。」
「お供いたします。」
女家庭教師のテルルがフィサリスを支える様に、裏庭へ向かう。
「旦那様は葬儀を行わないとお決めになりました。今から火葬いたします。」
「!?ほ、本当にお父様が、そう仰ったの!?火葬なんて…お母様が可愛そうですわ。葬儀はしなくても、墓地へ埋葬してはいけないの?」
フィサリスの意見を無視する様に、ディラがロベルトとして指揮を取る。
「別邸跡地なら火を使っても、燃え移る物も無いし安心だ。直ぐに薪と燃料を組め、火葬の準備をしろ。」
「ロベルト!お願い!お父様に連絡を取って!酷すぎるわ!」
「旦那様は王都のお邸で喪に服されており、誰とも連絡は取り合えません。お嬢様、王家へのケジメと思ってください。」
「1週間…いいえ、3日だけ待って!私が王都へ行って来るわ!私だったら、お父様も会ってくださるわ!お母様の火葬を止めなくては!」
「お嬢様は、領地から出る事を禁止されております。王都へ向かえば即刻、修道院へ行く事になります。」
「それでも構わないわ!どの道、修道院へ行くもの。時期が早まったと言うだけのことよ。火葬にされるお母様を思えば、大した事ではないわ!」
「ただ修道院へ行く、と言う訳ではないのですよ。除籍のうえ何の支援もなく修道院へ行く事の意味を、お分かりではないようですね。支援の無い元貴族令嬢の扱いは、使用人以下。奴隷と言っても過言ではありません。それでも、いいのですか?」
「そ、それは・・・」
「テルル、お嬢様をお連れしろ。」
「はい。お嬢様、東屋で一息つきましょう。」
連れて来られた東屋でフィサリスは火葬の準備を眺め、涙が止まらなかった。
母親の火葬が始まると、現実を直視できず泣き崩れた。
奇しくも別邸が火事の時ジュエリアが一夜を明かした東屋で、フィサリスは母親の火葬が終わるのを待った。
「お嬢様。火葬が終わりました。」
「・・・そう。では、お母様の墓標へ手向ける花を摘みに行くわ。今の時期はお母様のお好きだった、ピオニーが裏庭に咲いているもの。」
「お供いたします。」
女家庭教師のテルルがフィサリスを支える様に、裏庭へ向かう。
0
お気に入りに追加
187
あなたにおすすめの小説
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】夫は王太子妃の愛人
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵家長女であるローゼミリアは、侯爵家を継ぐはずだったのに、女ったらしの幼馴染みの公爵から求婚され、急遽結婚することになった。
しかし、持参金不要、式まで1ヶ月。
これは愛人多数?など訳ありの結婚に違いないと悟る。
案の定、初夜すら屋敷に戻らず、
3ヶ月以上も放置されーー。
そんな時に、驚きの手紙が届いた。
ーー公爵は、王太子妃と毎日ベッドを共にしている、と。
ローゼは、王宮に乗り込むのだがそこで驚きの光景を目撃してしまいーー。
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる