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帝国編
陛下、出会う
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またまた、ハル視点です。
✱『令嬢、注目を浴びる』を色々いじったのでハル視点もそれに合わせて変えさせて頂きました。
✱近況ボードでお知らせ致しました、是非ご覧下さい。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
まだ夕刻を知らせる鐘がなる前に、再びあの店へと訪れた。
言わずもがなヴァイオリンを聴くためだ。
さてどこに座ろうか?
私と同じように演奏目当てで来ている者達も多いようで殆ど席が空いていなかった。
お、あそこが丁度空いたな、あの席にするか。
注文は...いいか、さっき露店で色々食べていたせいで腹は減っていない。そうなると演奏が始まるまで暇だが、まぁいいか。
暫くすると店の従業員部屋だろうか?そこから2人の男女がトランクを持って出てきた。
あの2人が演奏するのか?
そんなことを考えていれば2人がステージの方へと近づいていき何やら準備を始めた。私は嗜み程度には楽器が出来るがあまり良くは知らない。だから楽器が奏でられても準備やらはやった事がなくましてや調律などは出来ない。いつも万全の状態に整えられた物を使っていたからな。
へぇ、調律とはああやるのだな。
どうやら、準備が終わったようだ。さて何を弾いてくれるのか、楽しみだ。
✱ ✱ ✱
この曲は聴いたことがあるな、確か数年前に流行っていた曲で、はて、何だったか...
あぁそうだ、思い出した!
この曲は、英雄譚のもとに作られた英雄に送られた戦勇歌だ。まさか、この曲を選択するとは思わなんだ。それに、ピアノが上手くヴァイオリンを際立たせていて聞いていて気持ちがいい。
純粋に来てよかったと思わせる演奏だ。
が、ここでトラブルが起きた。
他の客は楽器を知らないせいか気づいていないようだが、一応嗜み程度だが学んだ私は確かにピアノの弦が切れたところを見た。ヴァイオリンの音に軽く消されてはいたが破裂音が確かに聞こえた。
大丈夫だろうか?
先程から演奏のテンポがズレ始めている。
さっきのハプニングで楽譜が飛んだか?とにかくピアニストの男性が動揺している。このまま演奏を続けてもきっと客は満足しないだろうな...。
そんな時だった。
1人の少女がヴァイオリンを片手にステージに近づいて行ったのだ。
まさか、演奏する気か?
そして、考え通り少女はヴァイオリンを構えピアノの音を隠すように弾き始めた。
その演奏は人々を魅了し、今さっき出ていったばかりの客達が何事かと慌てて店の中に駆け込んでくる。
上手い。それに隣のヴァイオリンの音を潰さないように弾いて、尚且つその音を引き立てている。
彼女は相当上手いな。
それにしても、彼女は何者だ?
どう見たって平民ではないぞ?家出でもしてきたのか?では何故私のようなお忍び用ではなくしっかりと平民の服を来ているのだ?
もし貴族だとしてあんな平民らしい服を手に入れられるんだろうか?逆に平民だとして、何故あのように所作や容姿が綺麗なんだ?
おかしい...。
もうそればかりが疑問で仕方ない...もし貴族だった場合、貴族を束ねるものとして私が何とかしなければ。
もし聞き出しに成功すればすぐにでも親を呼び出すことだって私には造作もないことだ。
あとで不自然にならぬように接触してみるか。
✱ ✱ ✱
演奏が終わり彼女が席に戻ろうとする。
それに合わせ私も席を立ち、彼女の傍の空いている席へと移動した。
彼女は注目されていることに最初戸惑うも、途中から何故か無表情を貫き早足で席に着いた。
そんな彼女に店員が料理を持っていくところを見届けると早速声をかけた。
「いい演奏だったよ、ありがとう」
そう言えば彼女は驚いた顔でこちらを向く。
「そ、それは、どうも?」
とても綺麗な声だ、悪くない。
「なんで疑問形なんだよ、あとそんなに緊張しないで...」
さっきまで無表情だった顔が今は少し驚いた表情になる、それが面白く思えて思わず笑ってしまった。そうすれば彼女の表情は変わりまた、笑えてきた。
ふっ、まるで百面相だな。
はっ、すっかり忘れていたが私は彼女について色々聞き出さなければいけないことがあったのだった。しかし、そんな私の気持ちを裏切るように彼女は席を立ち逃げようとした。
私は慌てて彼女の腕を掴むも余計に警戒されてしまった。
しまった。そんなつもりは無かったんだが...
それでもなんとか彼女の隣には居させてもらう事が出来た。(まぁ、迷惑そうな顔をしていたが...)
しかし、結局私は彼女に何一つ聞くことが出来なかった。それだけじゃなく、なんと彼女は店を飛び出しどこかへ行ってしまったのだ。
こんな夜にもなろうという時間帯に1人で出歩くなんて危険だ!
私は恐らく払い忘れているであろう彼女の料理代を店員に半場強引に渡すと、お釣りはいらないと伝え急いで店を飛び出した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お読み頂きありがとうございました。
✱令嬢、注目を浴びるを読み直すことをオススメします。
✱『令嬢、注目を浴びる』を色々いじったのでハル視点もそれに合わせて変えさせて頂きました。
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まだ夕刻を知らせる鐘がなる前に、再びあの店へと訪れた。
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さてどこに座ろうか?
私と同じように演奏目当てで来ている者達も多いようで殆ど席が空いていなかった。
お、あそこが丁度空いたな、あの席にするか。
注文は...いいか、さっき露店で色々食べていたせいで腹は減っていない。そうなると演奏が始まるまで暇だが、まぁいいか。
暫くすると店の従業員部屋だろうか?そこから2人の男女がトランクを持って出てきた。
あの2人が演奏するのか?
そんなことを考えていれば2人がステージの方へと近づいていき何やら準備を始めた。私は嗜み程度には楽器が出来るがあまり良くは知らない。だから楽器が奏でられても準備やらはやった事がなくましてや調律などは出来ない。いつも万全の状態に整えられた物を使っていたからな。
へぇ、調律とはああやるのだな。
どうやら、準備が終わったようだ。さて何を弾いてくれるのか、楽しみだ。
✱ ✱ ✱
この曲は聴いたことがあるな、確か数年前に流行っていた曲で、はて、何だったか...
あぁそうだ、思い出した!
この曲は、英雄譚のもとに作られた英雄に送られた戦勇歌だ。まさか、この曲を選択するとは思わなんだ。それに、ピアノが上手くヴァイオリンを際立たせていて聞いていて気持ちがいい。
純粋に来てよかったと思わせる演奏だ。
が、ここでトラブルが起きた。
他の客は楽器を知らないせいか気づいていないようだが、一応嗜み程度だが学んだ私は確かにピアノの弦が切れたところを見た。ヴァイオリンの音に軽く消されてはいたが破裂音が確かに聞こえた。
大丈夫だろうか?
先程から演奏のテンポがズレ始めている。
さっきのハプニングで楽譜が飛んだか?とにかくピアニストの男性が動揺している。このまま演奏を続けてもきっと客は満足しないだろうな...。
そんな時だった。
1人の少女がヴァイオリンを片手にステージに近づいて行ったのだ。
まさか、演奏する気か?
そして、考え通り少女はヴァイオリンを構えピアノの音を隠すように弾き始めた。
その演奏は人々を魅了し、今さっき出ていったばかりの客達が何事かと慌てて店の中に駆け込んでくる。
上手い。それに隣のヴァイオリンの音を潰さないように弾いて、尚且つその音を引き立てている。
彼女は相当上手いな。
それにしても、彼女は何者だ?
どう見たって平民ではないぞ?家出でもしてきたのか?では何故私のようなお忍び用ではなくしっかりと平民の服を来ているのだ?
もし貴族だとしてあんな平民らしい服を手に入れられるんだろうか?逆に平民だとして、何故あのように所作や容姿が綺麗なんだ?
おかしい...。
もうそればかりが疑問で仕方ない...もし貴族だった場合、貴族を束ねるものとして私が何とかしなければ。
もし聞き出しに成功すればすぐにでも親を呼び出すことだって私には造作もないことだ。
あとで不自然にならぬように接触してみるか。
✱ ✱ ✱
演奏が終わり彼女が席に戻ろうとする。
それに合わせ私も席を立ち、彼女の傍の空いている席へと移動した。
彼女は注目されていることに最初戸惑うも、途中から何故か無表情を貫き早足で席に着いた。
そんな彼女に店員が料理を持っていくところを見届けると早速声をかけた。
「いい演奏だったよ、ありがとう」
そう言えば彼女は驚いた顔でこちらを向く。
「そ、それは、どうも?」
とても綺麗な声だ、悪くない。
「なんで疑問形なんだよ、あとそんなに緊張しないで...」
さっきまで無表情だった顔が今は少し驚いた表情になる、それが面白く思えて思わず笑ってしまった。そうすれば彼女の表情は変わりまた、笑えてきた。
ふっ、まるで百面相だな。
はっ、すっかり忘れていたが私は彼女について色々聞き出さなければいけないことがあったのだった。しかし、そんな私の気持ちを裏切るように彼女は席を立ち逃げようとした。
私は慌てて彼女の腕を掴むも余計に警戒されてしまった。
しまった。そんなつもりは無かったんだが...
それでもなんとか彼女の隣には居させてもらう事が出来た。(まぁ、迷惑そうな顔をしていたが...)
しかし、結局私は彼女に何一つ聞くことが出来なかった。それだけじゃなく、なんと彼女は店を飛び出しどこかへ行ってしまったのだ。
こんな夜にもなろうという時間帯に1人で出歩くなんて危険だ!
私は恐らく払い忘れているであろう彼女の料理代を店員に半場強引に渡すと、お釣りはいらないと伝え急いで店を飛び出した。
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お読み頂きありがとうございました。
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