9 / 29
普通な環は平穏に暮らしたい!
8.今今
しおりを挟む「結局、あの曲を入れたおじいちゃんは誰だったんだろうねー?」
道路を歩きながら遥祐が言った。空は既に夕焼け色に染まっていて、雲の隙間からも日差しが溢れている。
「あっ、それ?…僕が入れちゃったんだ」
「え…何で?何か操作でも間違えた?」
「…うん…そうだね」
そういうことしておいたが…本当は自分の意思で入れたんだ。と心の中で言った。
「まぁ楽しそうだったし別にいいじゃん?」
普段なら絶対に言わない台詞を言いながら、
「えぇ~、本当に間違えたの~?」
悪戯っぽく聞いてくる遥祐に、
「…あははっ…そんな詮索しないでよ~」
「…めっ…!」
と僕は笑いながら、遥祐にそう言ってみた。
「ありゃ…恵流がそんなのやるなんて珍しいね~?」
「別に、気まぐれだよ」
夕方になっても街は閑散とせず、逆に…至る所に明かりを灯して人を導いている。色々な光が混ざっていて、僕には少し眩しい。
振り返ると、夕陽による影が一際長く伸びて、周りの光の影がそれに集まるように細くなっている。
…あぁ…
…また…諦めるの、先延ばしにしちゃったな…。
遥祐は僕にとって…唯一の親友だ。もはや神と言ってもいいのかな、ともかく…それほど大切な存在で…。…もし遥祐に…いっそ彼女でも出来たら…潔く祝って……この不純な感情とも別れを告げられるはず……きっと。
でも…今は、遥祐の唯一で居られる今だけは…
「ほらっ、さっさと帰ろっ!」
と言って、遥祐に手を差し伸べてみる。
「えっ…本当にどうしたの…?カラオケで歌わなかった分の体力が有り余ってる~…?」
遥祐が、本当に差し伸べた手を握ってきたので、少し硬直しかけた。だけど、遥祐の…体温に身を任せて、思いっきり引っ張って走り出した。
「ちょっ…!?…恵流っ…速いってー!?」
今この瞬間だけは…もう少し…!
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる