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第二章 仲間たち
謎の少年
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森の中に入ると、あたりは急に薄暗くなりヒンヤリとした空気があたりを漂っている。
外からでは気が付かなかったが、森の中には岩山があり小さな洞窟が口を開けていた。さっきの悲鳴はこの中から聞こえてきたようだった。
「どうする、ルキア? 声は洞窟の中からきこえてきたようだけど」
「ほっとけないよ! 行くしかないだろ」
2人がそんな会話をしていると、その洞窟から大声をあげながら少年が走って飛び出してきた。
「うわ~~~~! 助けて!」
眼鏡を掛けたその少年は、なぜか両手に大量のキノコを持っていた。
そしてその少年を追いかけるように、中から無数の吸血コウモリが飛び出してきた。
パニックになっている少年は、地面の小石に足を取られ盛大にキノコをばらまきながら転倒した。
「ルキア大変、あの子コウモリに襲われてる!」
エリナはすぐに火炎の杖を構えた。
「エリナはコウモリを牽制して、僕はあの子を助けるから」
ルキアは剣を抜くと、一目散に少年のそばに駆け寄った。
吸血コウモリは、恐れる様子もなくルキアに向かって襲い掛かる。
盾でその攻撃を防ぎながら、ルキアは懸命に剣を振るった。
しかし、素早い動きのコウモリはルキアの攻撃を軽くかわすと再び上空に舞い上がっていった。
「なんてすばしっこい奴らだ!」
ルキアは地面に倒れたままの少年に声をかけ揺すってみる。
「ねえ君! 大丈夫!?」
「……あ? どうにか、あなたは一体?」
頭を抱えて動かなかった少年は泥だらけの顔をあげて、ずれた眼鏡を直した。
「そんな事より森の外まで走れる?」
「は、はい!」
よろけながら立ち上がった少年は、フラフラと森の外に向かって走っていった。
すると少年を追いかけるように吸血コウモリが今度はエリナが居る方へ飛んでいった。
「うわ~~こっち来たよ!!」
エリナは、火炎の杖を激しく振り回した。杖を振り回すたびに、火炎の杖の先から次々と火球が放たれる。
火球は放物線を描きながらコウモリの群れの中に飛んでいくが、コウモリは難なく避けていく。
「だめ~動きが早すぎるよこのコウモリ。助けてルキア!」
半泣きのエリナがルキアに助けを求める。
「いま、やってるよ!」
しかし、ルキアのコウモリへの攻撃はむなしく空を切るだけだった。
すると、2人の苦戦する様子を見た眼鏡の少年が突然立ち止まった。
「ぼ、僕だけ……逃げるわけにはいかない……」
眼鏡の少年は肩から下げた道具袋から、手の平ほどの大きさの小瓶を取り出した。
「……大事なものだけど、構うもんか」
少年はその粉が入った小瓶を、コウモリたちがいる近くの木に投げつけた。
音を立てて割れた小瓶の中から、茶色い粉が勢いよく撒き散らされ風に乗ってコウモリたちを包んだ。
すると、さっきまで盛んに羽ばたいていたコウモリ達の動きがおかしくなっていった。コウモリたちの羽ばたきが急に遅くなったり早くなったりし始めたのだ。
コウモリたちは羽ばたきが止まり地上に落下する。そして地面に激突しそうになると再び羽ばたいて上昇するといった動きを繰り返した。
「どうなってるの?」
あっけにとられるルキアとエリナ。
「眠りキノコの粉をばらまいたんです」
少年は、どや顔で眼鏡のずれを直している。
「眠りキノコの粉?」
「そう!眠りキノコで作ったこの粉を吸い込んだら、脳の神経に作用してだんだんと動けなくなるんです」
少年の言う通りに、コウモリたちの動きはどんどん遅くなり、遂には地面に落ちるものもあらわれた。
「今が、チャンスです!」
眼鏡の少年が叫んだ。
「分かった!」
その声にルキアが反応し、コウモリの群れに突っ込んでいく。
「よし、今度こそ!」
動きの鈍くなったコウモリは、ルキアの動きに反応出来なくなっていた。
ルキアは大きくジャンプしながら、目の前のコウモリに剣を振り下ろした。剣は正確にコウモリの動きを捉えた。
大きく羽根を斬り裂かれたコウモリは、地面に叩き落とされ動かなくなった。
「やった攻撃が当たった! これなら行ける!」
ルキアは動きの遅くなったコウモリ達に次々と剣を振るった。小さな戦士は見事な剣さばきで、飛び回るコウモリを斬り落としていく。
「すごい……」
エリナは武器屋のサシャの”スジがいい”の言葉が本当にお世辞じゃないことに気が付いた。
ルキアに仕留められたコウモリたちは次々と地面に落下し、光る粒子となり魔石に変わっていく。
その姿を見ていたエリナは我に返った。
「あっ……私も手伝わなきゃ!」
エリナは火炎の杖を再び握りしめると、今度はしっかりと狙いを定めて杖を振り下ろした。
「いっけぇぇぇ!!」
放物線を描いた火球は見事に一匹のコウモリを直撃した。空中で砕け散った火球はコウモリを火だるまにした。
炎に包まれながら地面に落ちたコウモリは、しばらく羽根をバタつかせていたがやがて動かなくなった。
「は、はは、初めて当たった……」
エリナは初めて魔物を1人で倒した事に感動していた。気が付くとルキアとエリナの周りには2人が仕留めたコウモリの魔石が散乱していた。
黒に近いダークパープルの魔石が妖しく輝いている。
「ふ~~~やったね……」
2人は大きく息を吐いた。
外からでは気が付かなかったが、森の中には岩山があり小さな洞窟が口を開けていた。さっきの悲鳴はこの中から聞こえてきたようだった。
「どうする、ルキア? 声は洞窟の中からきこえてきたようだけど」
「ほっとけないよ! 行くしかないだろ」
2人がそんな会話をしていると、その洞窟から大声をあげながら少年が走って飛び出してきた。
「うわ~~~~! 助けて!」
眼鏡を掛けたその少年は、なぜか両手に大量のキノコを持っていた。
そしてその少年を追いかけるように、中から無数の吸血コウモリが飛び出してきた。
パニックになっている少年は、地面の小石に足を取られ盛大にキノコをばらまきながら転倒した。
「ルキア大変、あの子コウモリに襲われてる!」
エリナはすぐに火炎の杖を構えた。
「エリナはコウモリを牽制して、僕はあの子を助けるから」
ルキアは剣を抜くと、一目散に少年のそばに駆け寄った。
吸血コウモリは、恐れる様子もなくルキアに向かって襲い掛かる。
盾でその攻撃を防ぎながら、ルキアは懸命に剣を振るった。
しかし、素早い動きのコウモリはルキアの攻撃を軽くかわすと再び上空に舞い上がっていった。
「なんてすばしっこい奴らだ!」
ルキアは地面に倒れたままの少年に声をかけ揺すってみる。
「ねえ君! 大丈夫!?」
「……あ? どうにか、あなたは一体?」
頭を抱えて動かなかった少年は泥だらけの顔をあげて、ずれた眼鏡を直した。
「そんな事より森の外まで走れる?」
「は、はい!」
よろけながら立ち上がった少年は、フラフラと森の外に向かって走っていった。
すると少年を追いかけるように吸血コウモリが今度はエリナが居る方へ飛んでいった。
「うわ~~こっち来たよ!!」
エリナは、火炎の杖を激しく振り回した。杖を振り回すたびに、火炎の杖の先から次々と火球が放たれる。
火球は放物線を描きながらコウモリの群れの中に飛んでいくが、コウモリは難なく避けていく。
「だめ~動きが早すぎるよこのコウモリ。助けてルキア!」
半泣きのエリナがルキアに助けを求める。
「いま、やってるよ!」
しかし、ルキアのコウモリへの攻撃はむなしく空を切るだけだった。
すると、2人の苦戦する様子を見た眼鏡の少年が突然立ち止まった。
「ぼ、僕だけ……逃げるわけにはいかない……」
眼鏡の少年は肩から下げた道具袋から、手の平ほどの大きさの小瓶を取り出した。
「……大事なものだけど、構うもんか」
少年はその粉が入った小瓶を、コウモリたちがいる近くの木に投げつけた。
音を立てて割れた小瓶の中から、茶色い粉が勢いよく撒き散らされ風に乗ってコウモリたちを包んだ。
すると、さっきまで盛んに羽ばたいていたコウモリ達の動きがおかしくなっていった。コウモリたちの羽ばたきが急に遅くなったり早くなったりし始めたのだ。
コウモリたちは羽ばたきが止まり地上に落下する。そして地面に激突しそうになると再び羽ばたいて上昇するといった動きを繰り返した。
「どうなってるの?」
あっけにとられるルキアとエリナ。
「眠りキノコの粉をばらまいたんです」
少年は、どや顔で眼鏡のずれを直している。
「眠りキノコの粉?」
「そう!眠りキノコで作ったこの粉を吸い込んだら、脳の神経に作用してだんだんと動けなくなるんです」
少年の言う通りに、コウモリたちの動きはどんどん遅くなり、遂には地面に落ちるものもあらわれた。
「今が、チャンスです!」
眼鏡の少年が叫んだ。
「分かった!」
その声にルキアが反応し、コウモリの群れに突っ込んでいく。
「よし、今度こそ!」
動きの鈍くなったコウモリは、ルキアの動きに反応出来なくなっていた。
ルキアは大きくジャンプしながら、目の前のコウモリに剣を振り下ろした。剣は正確にコウモリの動きを捉えた。
大きく羽根を斬り裂かれたコウモリは、地面に叩き落とされ動かなくなった。
「やった攻撃が当たった! これなら行ける!」
ルキアは動きの遅くなったコウモリ達に次々と剣を振るった。小さな戦士は見事な剣さばきで、飛び回るコウモリを斬り落としていく。
「すごい……」
エリナは武器屋のサシャの”スジがいい”の言葉が本当にお世辞じゃないことに気が付いた。
ルキアに仕留められたコウモリたちは次々と地面に落下し、光る粒子となり魔石に変わっていく。
その姿を見ていたエリナは我に返った。
「あっ……私も手伝わなきゃ!」
エリナは火炎の杖を再び握りしめると、今度はしっかりと狙いを定めて杖を振り下ろした。
「いっけぇぇぇ!!」
放物線を描いた火球は見事に一匹のコウモリを直撃した。空中で砕け散った火球はコウモリを火だるまにした。
炎に包まれながら地面に落ちたコウモリは、しばらく羽根をバタつかせていたがやがて動かなくなった。
「は、はは、初めて当たった……」
エリナは初めて魔物を1人で倒した事に感動していた。気が付くとルキアとエリナの周りには2人が仕留めたコウモリの魔石が散乱していた。
黒に近いダークパープルの魔石が妖しく輝いている。
「ふ~~~やったね……」
2人は大きく息を吐いた。
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