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第五章 砦の戦い
禁忌の呪法
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「おのれ、ガキどもが!」
ヨークの閃光の魔法からやっと視力が回復した魔女は、一瞬で壊滅した魔物達の姿を目の当たりにし、驚きと怒りに打ち震えていた。
「私の可愛い子らをよくも……我が暗黒魔術で地獄へ送ってやる…」
魔女は素早く印を結ぶと、呪文の詠唱を始めた。しゃがれた低い声が唸り声のように響く。
目配せしたセードルフとヴィツェルは詠唱が終わる前に魔女に切りかかった。
「ガキ――ン!」
はずだった。が、すでに強力な魔法障壁が張られており二人は見えない壁に弾き飛ばされた。
「クソったれ! どうなってやがる!?」
尻もちを着いたヴィツェルが弾かれたナイフを拾う。
「魔法の同時掛けだ……しかも障壁の完成が早過ぎる。こいつ、やはり只者じゃないぞ」
セードルフとヴィツェルは警戒し距離を取った。
「フォッフォッフォッ……ヒッヒッヒッ……無駄じゃ!貴様らには真の恐怖を与えてくれよう……」
魔女の周囲に霧の様な妖しい紫色の光が立ち込める。しばらくその光は魔女の周りを漂うと、地面に吸い込まれた。
「冥界の主たる暗黒の神々よ……」
圧倒的な魔力を持つ者の”力”が解放されていき、先程までは星が瞬いていた夜空に灰色の魔法雲が立ち込め渦を巻いていく。
「古の契約の名のもと我に力を貸したまえ……ラボス・ロイモス・エラ」
魔女は驚くべき早さで呪文を完成させ、持っていた杖を地面に突き立てた。すると地面に吸い込まれた紫の光が地面から湧き出し、既に死んでいるミノタウロスやゴブリンの体にまとわりつく。
「何が始まるんだ?」
ヴィツェルは嫌な予感しかしなかった。
そして、彼の嫌な予感はすぐに的中した。地面に横たわっているミノタウロスの手がピクリと動いたのだ。
ミノタウロスだけではなく、黒焦げのゴブリンやコボルトも同じように体を痙攣させるように動き出した。
そしてついに焦げ臭い匂いを振りまきながらゆっくりと立ち上がった。
途中で火傷した皮膚がずるりと剥げ落ち、赤い肉を露出させる。しかし痛みを感じていないのか、そのまま武器を手に取りこちらに首を向けた。
ミノタウロスもセードルフに跳ね飛ばされた首を片手に持ち、何事もなかったかのように立ち上がった。
ヴィツェルの足元に倒れていたゴブリンが不意に目を見開き、持っていた短剣を突き出した。俊敏な盗賊は反射的に飛び退いた。
「なんだ! どうなってやがる!」
死んだはずの魔物から不意に攻撃を受けたヴィツェルが、悲鳴に近い怒鳴り声を上げた。
「これは屍体を復活させる禁忌の暗黒魔術です!」
神官のヨークがいち早く警告する。
「わたしグロいの苦手なのよね……」
クマリが露骨に嫌な顔をした。
セードルフとヴィツェルはすぐに攻撃を開始したが、痛みを感じない不死化した魔物は、さらに厄介な相手になっていた。腕を斬り、首を刎ねても構わず襲い掛かってくる。
「クソッ! これじゃキリがない、こっちの体力が持たねえぞ!」
戦いが得意な盗賊のヴィツェルでも、相手に出来る敵の数には限度がある。
「使役している魔女のほうを止めないと、どうしようもない」
ヨークも鎚矛を振るいながら思案を巡らせる。
呪文を唱えている魔女を殺さないとどうしようもないが、魔女は強力な魔法障壁と不死化したミノタウロスに守られていた。
ジリジリと下がり続け、ついにパーティは砦の前まで追い詰められていった。
ヨークの閃光の魔法からやっと視力が回復した魔女は、一瞬で壊滅した魔物達の姿を目の当たりにし、驚きと怒りに打ち震えていた。
「私の可愛い子らをよくも……我が暗黒魔術で地獄へ送ってやる…」
魔女は素早く印を結ぶと、呪文の詠唱を始めた。しゃがれた低い声が唸り声のように響く。
目配せしたセードルフとヴィツェルは詠唱が終わる前に魔女に切りかかった。
「ガキ――ン!」
はずだった。が、すでに強力な魔法障壁が張られており二人は見えない壁に弾き飛ばされた。
「クソったれ! どうなってやがる!?」
尻もちを着いたヴィツェルが弾かれたナイフを拾う。
「魔法の同時掛けだ……しかも障壁の完成が早過ぎる。こいつ、やはり只者じゃないぞ」
セードルフとヴィツェルは警戒し距離を取った。
「フォッフォッフォッ……ヒッヒッヒッ……無駄じゃ!貴様らには真の恐怖を与えてくれよう……」
魔女の周囲に霧の様な妖しい紫色の光が立ち込める。しばらくその光は魔女の周りを漂うと、地面に吸い込まれた。
「冥界の主たる暗黒の神々よ……」
圧倒的な魔力を持つ者の”力”が解放されていき、先程までは星が瞬いていた夜空に灰色の魔法雲が立ち込め渦を巻いていく。
「古の契約の名のもと我に力を貸したまえ……ラボス・ロイモス・エラ」
魔女は驚くべき早さで呪文を完成させ、持っていた杖を地面に突き立てた。すると地面に吸い込まれた紫の光が地面から湧き出し、既に死んでいるミノタウロスやゴブリンの体にまとわりつく。
「何が始まるんだ?」
ヴィツェルは嫌な予感しかしなかった。
そして、彼の嫌な予感はすぐに的中した。地面に横たわっているミノタウロスの手がピクリと動いたのだ。
ミノタウロスだけではなく、黒焦げのゴブリンやコボルトも同じように体を痙攣させるように動き出した。
そしてついに焦げ臭い匂いを振りまきながらゆっくりと立ち上がった。
途中で火傷した皮膚がずるりと剥げ落ち、赤い肉を露出させる。しかし痛みを感じていないのか、そのまま武器を手に取りこちらに首を向けた。
ミノタウロスもセードルフに跳ね飛ばされた首を片手に持ち、何事もなかったかのように立ち上がった。
ヴィツェルの足元に倒れていたゴブリンが不意に目を見開き、持っていた短剣を突き出した。俊敏な盗賊は反射的に飛び退いた。
「なんだ! どうなってやがる!」
死んだはずの魔物から不意に攻撃を受けたヴィツェルが、悲鳴に近い怒鳴り声を上げた。
「これは屍体を復活させる禁忌の暗黒魔術です!」
神官のヨークがいち早く警告する。
「わたしグロいの苦手なのよね……」
クマリが露骨に嫌な顔をした。
セードルフとヴィツェルはすぐに攻撃を開始したが、痛みを感じない不死化した魔物は、さらに厄介な相手になっていた。腕を斬り、首を刎ねても構わず襲い掛かってくる。
「クソッ! これじゃキリがない、こっちの体力が持たねえぞ!」
戦いが得意な盗賊のヴィツェルでも、相手に出来る敵の数には限度がある。
「使役している魔女のほうを止めないと、どうしようもない」
ヨークも鎚矛を振るいながら思案を巡らせる。
呪文を唱えている魔女を殺さないとどうしようもないが、魔女は強力な魔法障壁と不死化したミノタウロスに守られていた。
ジリジリと下がり続け、ついにパーティは砦の前まで追い詰められていった。
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