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第四十三話 不遇職

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「この辺でいいかな?」

 僕はそう口にすると森のちょっと開けた所で立ち止まった。そして振り向いて、こう話す。

「じゃ、ピクニック……じゃなくて、レベル上げをしようか?」

 今日は週末。昨日は四人でレオナの家に泊まった。朝からレベル上げをしたかったから。前と一緒だね。

「で、リア? 今日は二人が魔法を使えるくらいまでレベル上げたいんけど、いくつくらい上げればいいの?」

「下位の魔法ならレベル5くらいかな。それくらいならあんな中途半端な魔法じゃなくて、ちゃんとした火炎矢フレアアローを放てるようになるわ」

「あれ? 意外と低いね。そんなもんなんだ」

 僕の言葉にリアは首を横に振った。

「いや、普通は無理よ。二人には魂の記憶があるからね。普通ならもうちょいかかるわよ。それに、そもそもそこまでレベル上げなんか出来ないからね? マスターがいるのと団結の証があるから出来るんだから。魔物のトドメを刺さなきゃ経験値入らないのにメイドや遊び人がどうやってトドメを刺すのよ? ま、それ以前に戦えないしね」

「そっか。でもさ、他の人が弱らせてからトドメを刺せばいいんじゃない?」

「それはそう.......なんだけど、誰もやろうとしないわよ。レベルや経験値の事態はあるけど、この世界の人達は普通に知らないわのだから。団結の証だって効果の内容はこの世界の人達ははっきりわかっている訳じゃないのよ?」

「へぇ」

「殆どの冒険者が持ちたがらない、ある種、呪われたアイテム側の代物よ? それ」

「うそ!」

 だってこんなに便利なのに? そう僕が続ける間もなく、リアがこう続けた。

「だって持ってるとなかなか強くなれない、そんな魔導具なんだから。普通の人が見たら、ね」

「あ、だからあの時、店員さんが怪訝そうな表情だったのか」

 僕は買った時の店員さんの様子を思い出した。確かに言われてみれば、なんでこんなモノ買うんだろう、って感じの表情をしていたような気がする。

「ま、そういうこと。仮に知ってたとしても、普通はメイドや遊び人とパーティ組むと思う? パーティーなら僧侶とか回復魔法使えるけど敵にトドメを刺せない職位クラスにするんじゃない?」

「なるほど。確かにそうかも」

「だから非戦闘職位クラスはレベルを上げられないと言っても過言じゃないわよ。レベル5とか夢のまた夢の話」

「そ、そっか.......」

「判定士もレベルが上がれば、レベルも判定出来るんだけど、判定士も非戦闘職位クラスだし、だからレベルの事も知られてないって訳」

「でも、そう考えると非戦闘職位クラスって可哀想だなって……殆ど自身の技能スキルを見ること無く人生終わっちゃうってことでしょ?」

「それはそうかもね」

「カタリナの遊び人だって最大レベルの技能スキルなら敵を倒せそうだけど、そもそもそこに至れないのも不遇だね.......って他の職位クラスもそうなのかな? ちなみに踊り子は? 最大レベルでどんな技能スキルを覚えるの?」

 僕は何気なく思ったことをリアに尋ねた。

「その人の踊りを見た者は全て踊っちゃうって感じの技能スキルね」

「へぇ。思ったよりも普通だね」

「命尽きるまでだけどね」

「訂正します! 全然普通じゃないわ! いや、物騒だったわ! 死の踊りじゃん! それ! じゃ、じゃあ占星術士は?」

「星の力を操れるようになるわよ」

「星の力? 具体的にはどんなの?」

「ビッグバンを起こして宇宙を創造出来るわ」

「いや! それ星の力じゃなくて宇宙の力じゃんか! それこそ創造主になっちゃうよ! あはは! ってかよく考えつくね、そういう技能スキル。ある意味感心しちゃうよ。この世界を作った神様? 創造主に」

 僕はひとしきり突っ込んだ後、笑ってしまった。単純に僕のツボだったから。様々な技能スキルが。

「そ、そう.......?」

「遊び心があるって言うか.......僕と気が合いそうな気はするね!」

 リアの方を見ると、何故か顔を赤くしてそっぽを向いていた。その時だった。レオナが僕に話しかけてきたのは。

「ご主人様、あそこです」
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