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第二十二話 自己紹介

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「ふぁぁぁ……なんで偉い人の話っていつもこんな長いんだろ……」

 入学式も終わり、僕は背伸びをしながら呟いた。横に座っていたレオナが一瞬、不思議そうな表情を浮かべたが、すぐに納得した表情になった。

「そうか、ご主人様はこういう経験を何度かしてるんですね! 私は初めてだったので新鮮でした!」

 確かにレオナは真剣な表情でずっと話を聞いていたみたい。僕なんか二人目くらいで既に飽きちゃったし、校長だか教頭だか出てきた時くらいからは暇すぎてレオナの耳がぴょこぴょこ動く回数を数えてたくらいだ。

「では行きましょう」

「ふぇ?」

「この後、教室に移動するみたいです。ほら、皆動き出してますよ」

 辺りを見渡すと、確かに皆ぞろぞろと講堂から出ていっていた。置いてかれて迷子とかはまずい。僕はレオナと一緒に皆の後を付いていった。

 教室についてすぐに、前にアマンダ先生が立っていることに気づいた。もしかして、担任なのかも。僕達は最後の方だったようで、席に着くとアマンダ先生の声が少しざわついている教室に響き渡った。

「はーい! 静かにして! 私が担任のアマンダです。一年間よろしくね?」

 お、やっぱり担任だった。少しでも知っている人が居るのは僕にはとても心強い。なんせあまり人と話すのは得意じゃないしね。ま、出来れば今生では克服していきたいけど、それでもやっぱり知り合いの方が楽だ。

「じゃ、まずは自己紹介からね。君からやってもらおうかな? とりあえず名前と職位クラスくらいでいいかな?」

 アマンダ先生は教室の出口に一番近い席に座っていた人を指差した。

 皆、おどおどしながらも順に自己紹介をこなしていく。僕はまだしもレオナがいる時点で多分一般的な職位クラスを集めているのだろう。ちらほら商人だったり、農民だったりの職位クラスが多い。踊り子や占い師なんかもいる。占いなんかで魔物と戦える訳もないし、この組の授業はあまり戦闘向けじゃないのかもしれない。
 魔物相手に占ってどうなるのだろう。魔物に遭遇した自分の運命を占ったところで、芳しくない未来しか占えないだろうし……目の前の魔物に向かって踊っても、殴り殺される未来しか見えない。
 そういえばリアの話だと魔物と戦えば経験値が手に入ってレベルが上がるみたいなことを聞いたけど、なんでそういう世界に、戦えなさそうな職位クラスがあるんだろう……
 って次は僕の番か。
 立ち上がった時に一瞬アマンダ先生と目が合った。少し薄ら笑いみたいな表情に見えた。

「アインスです。職位クラスはありません。宜しく御願いします」

 あー、自己紹介なんて何十年ぶりだろ! やっぱ恥ずかしすぎる!
 終わって速攻で座る。今までと違って教室が若干騒がしくなった。職位クラスがない、つまり無職はこの世界で初めての事だ。そりゃそうなる。

「はい、次の人!」

 アマンダ先生が促してくれたお陰で次第に教室のざわめきが落ち着いていく。アマンダ先生はこうなることを予想してたみたい。だから目が合った時、ああいう表情になったんだろう。
 あまり目立ちたくなかったけど嘘つく訳にもいかない。職位板クラスプレートを見たら一発でわかるしね。
 ま、これ以降目立たなければ学校生活に支障はきたさないだろう……

「はい! これで全員かな?」

 どうやら一通り全員の自己紹介が終わったみたい。ただ、僕は席が一個空いていることに気がついた。人数分じゃなかってことかな?ま、それくらいは普通にあることだし。
 なんて考えていると、アマンダ先生と目が合った。なんか凄い目が合うな……

「あ、一つ空いてるのはカタリナちゃんが体調を崩して来てないからです。気にしないでくださいね」

 まるで僕の疑問に答えるようなタイミングだった。
 カタリナって女の子があといるはずなのか。入学式早々に休むなんて、どんな子なんだろう……
 そう思っていると、レオナがこっそりと話しかけてきた。

「カタリナちゃんは目がよく見えないんです。だから体調を崩してと言うより出歩けないのかなと。多分誰かに連れて来られないと学校まで来れないんです」

「へぇ。知り合いなんだ」

 レオナは一つ頷いてこう続けて話してくれた。

「はい。カタリナちゃんは孤児なんです。産まれ付き目が凄い悪いらしくて、それが原因で捨てられた、とシスターから伺いました。まだカタリナちゃんが物心つく前の話だそうです」

 目が悪いからって捨てられちゃったんだ。可哀想だな。そのカタリナって女の子……ってちゃん付けだから女の子だよね?
 でも、こういう世界だと生きるのにハンデがあったりすると捨てられちゃうのも普通のことなのかもしれないな。ある意味弱肉強食というか。怪我とかどこか悪くした生き物は食べられちゃったりするから、それと同じような物かもしれないな。

「なるほど。でも、レオナは教会によく行くんだね」

「え、ええ……母が体調を崩した頃から。お祈りに……」

 僕はしまった! と思った。レオナのお母さんのことを思い出させてしまったことを。だから咄嗟に謝った。

「あ、ごめん」

「いえ、ご主人様は何も悪くないのですから。謝らないで下さいね」

 僕が謝ると、逆にレオナは微笑みながらそう返してくれた。気を遣わせちゃったなぁ。

「ありがと、レオナ」

 でも、やっぱ祈りの力なんてないんだなぁ。僕はふと、そう思ったのだった。

「あ、そうだ。ご主人様。この後のご予定は如何しますか? お昼ご飯を食べたら自由時間ですから……」

「んー。じゃあ、生活用品か何か買っといた方がいいかな?」

「では、ご一緒しても宜しいですか?」

 レオナは上目遣いで甘えるようにそう尋ねてきた。僕にとっては逆にこっちからお願いしたいくらいだから正直助かる。この街のことはレオナの方が全然詳しいからだ

「うん! 街の事詳しくないし助かるよ」

「やったぁ! 宜しくお願いしますね?」

「こちらこそ、宜しく。じゃあリアも一緒に、だね」

 そうして僕たちは約束をした後、一旦部屋へと戻ったのだった。 
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