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第十六話 メイドのレオナ

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「あ、そういえば、じゃあ逆にレオナはなんであんな所に居たの」

 僕の理由は全部じゃないけど一応話した。でも、レオナの居た理由は聞いてなかったな……

「薬草採取のクエストを受けて薬草を採取してました。街道沿いは人も多く、薬草もあまり残ってないかと思ってこっちに取りに来ました。つい夢中になってあいつが近くに来ても気付かず、一度捕まってしまいました。隙を見て逃げ出したんですが……」

「あれ? じゃあ冒険者ってこと? クエストを受けたって」

 クエストってことは冒険者ギルドの依頼を受けたってことだ。なら、冒険者ギルドに登録しなくちゃならない。

「そうです。って言っても昨日登録済ませたばかりの駆け出しですけど。逃げる時に取った薬草全部置いてきちゃったから早速クエスト失敗しちゃいましたけどね……」

「でも、帰りがけにあったら取って行けばいいんじゃない?」

「あ、そうですね!」

 良かった。ちょっと塞ぎ込んでいた顔が明るくなった。駆け出しとはいえクエストの失敗は評価に繋がるんだろう。しかも、簡単なクエストなんだろうから余計になのかもしれない。
 あ、冒険者ギルドに登録してるってことはあれをお願いできるかも?
 そう思って僕はレオナに一つ尋ねた。

「あとさ、一個提案があるんだけど?」

「何でしょうか?」

「これ、換金してくれない? 半分は報酬あげるから」

 僕は鞄の中から魔石を一個取り出した。さっき倒したゴブリンの魔石だ。やっとのことで手に入れる事が出来た。

「えっ? いいんですか? これはゴブリンの魔石? 一個で金貨一枚くらいになるって聞きます。換金するだけで貰っていいんですか?」

「うん、是非お願い。僕は今の所お金に困ってないしね」

 僕にはお父さんが遺してくれた遺産がある。それで当分は大丈夫だから、お金に困ってるレオナの手助けになった方が倒されたゴブリンもきっと喜ぶ。ってあれ? なんか変だな……ま、気にしないでいっか。

「でも、冒険者ってことは何か向いてる職位クラスとかだったりするの?」

「いえ……お恥ずかしながら私の職位クラスはメイドです」

「え、メイド! じゃあ、なんでメイドで薬草採取のクエスト受けたの? 冒険者向けの職位クラスじゃないよね? 何処かで雇ってもらった方がよくない?」

 メイドってことは戦闘に向いているはずがない。冒険者なんて危険なことをやらない方がいいはずだ。

「それはそうなんですけど、すぐにお金が必要で……私一人暮らしなので……」

「一人暮らし? そんな年齢に見えないけど……失礼だけど、今いくつ?」

 僕とさほど年齢は変わらないように見えたので、疑問に思いレオナに尋ねた。

「十二歳です」

「え、僕と同い年だ!」

「え、本当ですか!」

 レオナは飛び上がって僕の両手を掴んだ。嬉しかったようだった。でも、慌ててすぐにその手を放した。

「あ、申し訳ありません……」

「こっちこそ……あ、でもご両親はどうしたの?」

 お互い顔を赤らめてしまった。でも、僕は質問を続けた。

「父は五歳の時に戦争に駆り出されてそこで……母は女手一つで私を育ててくれたんですが、元々体が弱く、半年前に病を拗らせて……」

「そっか…… 僕と一緒だね」

「アインス様もご両親いらっしゃらないんですか?」

「うん。僕も五歳の時に事故で亡くしちゃった。ほら、この山道の事故。聞いたことない?」

「あります! あの事故で亡くなったの、アインス様のご両親だったんですね……」

 さすがにお互いの両親が亡くなったという話題だ。これ以上ほじくり返すのは気が引ける。お互いが両親を亡くす悲しみを知っているからこそかもしれない。

「でも、まさか私と同い年とは思いませんでした」

 そんな沈黙を先に破ったのはレオナだった。努めて明るい声色をしてくれたようだった。

「一緒の組になれるといいですね! ってそんなの無理か……」

「え、なんで?」

 僕だって少しでも知り合いが同じ組に居てくれた方が心強い。プラムはもういないし、ここで知り合えたレオナと一緒の方がいい。

「だって、あんなに強いんですよ? 特別な職位クラスなんじゃないですか? 戦闘向けの職位クラスのアインス様と一緒の組になんてなれるはずがないじゃないですか?」

 あ、そっか。レオナの職位クラスは聞いといて、僕の職位クラスは言ってなかったっけ。

「いや、僕の職位クラスはないんだよ」

「ふぇ? にゃい?」

 レオナが驚いて変な声を出すのを聞いてしまった。
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