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第十二話 別れ

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「まあ、とは言ってもプラムに罪はないからなあ……あ!」

 夕食を終えて寮の通路を歩いていると、角を曲がると僕の部屋が見える。
 が、慌てて僕は体を引っ込めた。プラムが僕の部屋の前でうろうろしていたからだった。
 別に悪いことしていた訳じゃないけど、ちょうどリアとプラムの話をしていたところだったからビックリしてしまっただけだ。

「よし!」

 僕は一度気合いを入れ直して部屋へと向かう。そして、プラムへと声をかける。

「プラム? どうしたの?」

 背後から急に声をかけられたからか、プラムがビクッと驚いてこちらを見た。

「あれ? 部屋にいたんじゃないの?」

 プラムは僕が部屋に居ると思っていたみたいだ。

「ご飯を食べてきただけだけど……」

 僕の返答にプラムは首を傾げる。

「さっき私が食堂に行った時はいなかったから、てっきりまだ部屋にいるもんだと思ってた」

「あ、ああ! ちょっと用があって外に出てたんだ!」

「なんだ。あ、外といえばさっき外が凄かったけど大丈夫だった?」

「凄かったって?」

「轟音が聞こえるし、天まで貫く巨大な火柱もあがった。竜巻もここからいっぱい見えたし、大丈夫かなって?」

「え? そうなの? 気づかなかったよ。あはは……」

 僕はまさか自分がそれをやった元凶だなんて言えない。乾いた笑いで返すしかなかった。

「???? 変なの……皆で魔王が復活したんじゃないかって話題になったくらいだけど知らない?」

 とんだ話題を作ってしまった。これからはなるべく注目されないように振る舞わないと……
 僕が返答に困っているとじっと見ていたプラムが思い出したかのように口を開いた。

「あ、そうだ! アーに話があったんだった! 今時間大丈夫?」

 僕は一つ頷いてから部屋の扉を開けた。それからプラムを促し、一緒に部屋に入った。

 机を挟んで僕達は座った。リアは僕の背後に浮かんでいるけどプラムは気づいていないみたいだった。
 プラムはずっと黙って下を向いている。
 さすがに付き合いも長いからわかる。こういう時は何か言い難いことを相談したい時だ。
 だから僕から尋ねることにする。

「どうしたの? 何か話があったんじゃないの? さっき何か別室で話をしてたみたいだけどその事? 相談したかったんじゃないの?」

 じっと下を向いて押し黙っていたプラムがゆっくりと口を開いた。

「やっぱりわかっちゃうよね。アーには」

「まあ、ずっと一緒だからね」

「そう、そのことで相談があって……実はねさっきは役人さんと話してたんだ。さっき職位クラスが賢者ってわかったからって提案してきたの」

「提案? 何を?」

「王都の学校に行かないかって……ここより設備もいいし、何しろ勇者様もそこに通ってる。勇者様とパーティを組む可能性は高いから早くお会いした方がいいだろうって。国としては勇者様には優秀な職位クラスの人をお供させたいみたい。そこで私に提案があったの」

 なるほど……今度はプラムも取られちゃうのか。前世では手柄を奪われ、今生では両親を奪われ、今度はプラム。
 僕はそういうのに縁があるんだな……
 嫌だな……奪われるのも奪うのも……
 まあ、さっきのリアとの話だとプラムと一緒にならない方がいいだろうし、プラムには何も罪はない。プラムは自分の人生の主人公なんだ。王子様と一介の村人だったら王子様と一緒になった方がいいに決まってる。
 だったら徹底的に嫌われてしまおう。そうすれば心置き無くプラムは自分の人生を歩めるだろう。僕のことは忘れた方がいい。
 じゃあ……

「なるほど……プラムはどうしたいの?」

「悩んだんだけど、やっぱり王都に行ってみたいなって」

「王都にはいつ出発するの?」

「明日の昼前には出発するって。王都は結構遠いからすぐに出発するみたい。荷物も纏めたままだし、早い方がいいだろうって」

 荷物を纏めたままってことは元々行く気満々だったってことだよね。

「それは急だね!」

「うん だからアーには話しておこうかと思って」

「そっか! 王都で頑張ってね!」

「ありがとう! 応援してくれて!」

「応援? する訳ないじゃん?」

「えっ?」

 プラムは驚いている。狙い通りかな。

「だって嫌だよ? 結婚するって約束したのに、王子様の所に行きたいって。裏切っちゃうんでしょ?」

「それは……」

 よし、黙った。言い返せないってことは……

「ほらね? 王子様と良い関係になれるかもって思ってるでしょ? もし、そうじゃなかったら、王子様とはパーティー組むだけだよ! 結婚は僕とするって言えるよね? 黙っちゃうのがそう考えてた証拠じゃない?」

 プラムは下を向いている。多分目に涙を浮かべているだろう……僕に背中を押して欲しかっただろうに、こんな仕打ちをされるなんてって思ってるに違いない……

「しっかり頑張って王子様と一緒になって下さいね? 賢者様・・・?」

「ちょ、ちょっとそんな言い方ないでしょ!」

 怒ってプラムが睨みつけてきた。もう一押しかな?

「これはこれは大変失礼しました。賢者様・・・のお気に障る発言をしてしまいました。どうかお許しください」

「いい加減にしてよね……」

「喧嘩売ってきたのはそっちだろ。さっさと王子様と結婚でもすればいいんだよ」

「なにそれ! もうアンタなんか知らない!」

 怒って出てってしまった。

「ちょっと言い過ぎだったんじゃない?」

 一部始終を見ていたリアが口を開いた

「でも、リアは賛成でしょ? プラムと一緒にならない方がいいでしょ? さっきもそういう話だったし」

「まあね……でも、なんかごめん……」

「いいよ。慣れてるからさ。大切な物を奪われるのはね。リアだって知ってるでしょ? さっき話してくれたのはリアなんだから」

 僕もリアもしばらく黙り込んでしまった。

「やっぱり明日、確かめることにするよ。早めに出たいから、今日は早めに寝よっか」

「別に早く起きなくても間に合うわよ? マスターなら村まで往復もすぐだろうし……」

「いや、目立ちたくないだけ。急いだら大変なことになっちゃうでしょ?」

「確かにそうね……わかったわ。おやすみマスター」

「おやすみリア」

 挨拶をし、僕はベッドの中に潜り込んだ。そして疲れからかすぐに眠りにつくことが出来た。
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