魔法が使えず無能と蔑まれたので、物理で無双し使い魔たちと一緒にダンジョン攻略してみせます。

織侍紗(@'ω'@)ん?

文字の大きさ
16 / 40

十六話 ヘスティアの家

しおりを挟む
 ヘスティアが働いているレストラン、そこから一本路地裏に入った道にアレフとルディアが立ち尽くしていた。その二人の前には、一生懸命に謝るヘスティアの姿があった。

「ホントにごめんなさい! 私からお願いしたのに! ごめんなさい! ごめんなさい!」

 勢い良く何度も頭を下げるヘスティアに、アレフは苦笑いを浮かべながら頭をポリポリとかいた。

「そんな謝らなくていいよ。いつもの事だからさ」

 アレフがルディアに助けを求める視線を送るが、ルディアも困った表情で溜息を吐いていた。

「はぁ……まあ、だから言ったんだけど……ヘスティア。気にしないでいいからそろそろ止めてよ……」

 しかし、二人の言葉に耳を貸すことも無く謝り続けるヘスティアである。アレフとルディアの二人は顔を見合わせ、深く溜息を吐いたのであった。

 事の発端はヘスティアが昼食に誘ったことだった。あまり血なまぐさいことを好まないヘスティアは、今日初めてルディアに誘われて闘技場に足を運んだのである。

 観客すら敵……という状況で闘い、勝ったアレフに感動したので是非一緒に昼食を……と誘われたのだった。ヘスティアの働いているレストランに招待すると言って聞かなかったのである。

 アレフはその場で断り、ルディアも渋い顔をして止めるように話したのだが、感動でいっぱいのヘスティアはマスターを説得するからと聞かなかったのである。

 それで今、レストラン横の路地裏でヘスティアが盛大に謝っているのだ。

「だから言ったんだけどなぁ……」

「しょうがないでしょ? 白髪の人なんて来ないだろうし……」

 そう、アレフが白髪だから店に入ることを許して貰えなかったのである。アレフやルディアはいつもの事なので気にしてない。それどころかこうなる事は予想出来ていたため断ったのだった。
 しかしヘスティアは自分が招待すると言い、説得まですると言ったのにマスターの凄い剣幕に押されて、逃げるようにその場を去ってしまった。
 ここまで白髪が嫌われていると認識せずに、断られても強引に誘ってしまったことにもヘスティアは申し訳ない気持ちでいっぱいになったのである。

「このままじゃ申し訳がたたないです! そうだ! せめて……せめて……私の家に来て貰えませんでしょうか! 最近、レストランでも厨房に立たせてもらってるんです!」

 アレフは困った表情で言葉を返した。

「うーん……でも、俺が行くと家の人に迷惑がかかるし……」

「なら大丈夫です! 私、一人暮らしなんです! 父と母もいないので……」

 アレフがルディアをチラリと見ると、目線があったルディアは小さく頷いた。どうやら本当のようだった。

「仕方ないな……」

 このままでは埒が明かないと、渋々と了承の返事をするアレフの言葉に、ヘスティアは飛び上がって喜んだ。

「有難うございます! こっち、こっちです!」

 そう言ってヘスティアは、アレフの手を引っぱるのであった。

「どうぞ! あまり綺麗じゃなくてすいません!」

 アレフはそのまま連れられてヘスティアの家へと辿り着いた。バレンシアの東南側辺りに位置する区画である。民家は立ち並んでおり、アレフの家とも離れているので、知り合いでも居なければ立ち寄ることはない。実際、知り合いの殆どいないアレフは、この辺りに立ち寄ったことなど無かった。

「お邪魔します……」

 普段、他人の家など訪れたことのないアレフは、慣れない挨拶をしてヘスティアの家に入った。

「こっちで待ってて下さい! ルディアも! お料理作って来ますね!」

 そう言われて居間に通されたアレフは、ルディアと共に座って待つことになった。

「ルディアは来たことあるのか?」

 馴染みの無い出来事に戸惑いの色を隠せないアレフは、部屋をキョロキョロと見回しながらルディアに尋ねた。

「ええ、何度かね」

 落ち着いた様子で深々と座るルディアは、頷きそう答えた。
 ルディアは黒髪で優秀な上、明るくて可愛いい。それに、小さい頃から一緒だったからと言うこともあるが、アレフとも分け隔てなく接することが出来るような性格だ。幅広い交友関係はある。胸は無いのだが……

「それにしても、今日はしてやったりだったわ! レイモンドも怖がって漏らしてたし、他の二人も腰抜かしてた! グルだった審判にも一泡吹かせてやったしね! さすがアレフだわ! 最初は凄いムカついたけど、ちょっとはスッキリさせて貰ったわよ!」

 自分のことのように今日のバトル勝利を喜ぶルディア。

「まあ、今回は相手も闘い慣れてないみたいだったし、借りた使い魔らしいし寄せ集めだった。最初に訳分からない言いがかりをつけられた時はどうなることかと思ったがな……」

 腕を組んで考え込みながら語るアレフにルディアは身を乗り出した。

「何言ってんのよ! アレフは! 偶然・・! 隙を衝いて・・・・・! だけど、あたしに勝ったのよ! あんなのちょちょいのちょいよ!」

 偶然とか隙を衝いての部分を強烈に強調するルディアに対して、アレフは苦笑いを浮かべた。

「まあ、でもカイトの最後の台詞を聞く限り、これで終わりという訳じゃなかろう。別に俺は慣れてるからいちゃもんをつけられるのは慣れてるし構わないが、ルディアも気を付けろよ?」

 再度深々と座り直し、ルディアはフンっと鼻を鳴らした。

「大丈夫よ! あいつとはもう関わらないわ! 今まではただ付き纏ってくるウザイだけのやつだったけど、ここ最近の一件で凄いムカつく対象になったから!」

「そうか。大丈夫ならいいけど……」

 アレフにとってその差はよく分からなかったが、ルディアが大丈夫だと言うならそれで良しとした。
 レストランのマスターもそうだが、アレフにとって程度の差はあれど、他人からはカイトのような目で見られ、カイトのような対応を取られてきたのである。
 さすがに父を馬鹿にされたことは頭にきたが、他人に対しての感情には少々疎い。

「お待たせしました! 準備出来ましたのでこちらへどうぞ!」

 と、その時、エプロン姿のヘスティアが部屋に入って来たのだった。

「いやはや……これは悪いよ……」

 ヘスティアに連れられて入った部屋のテーブルにはいくつもの料理が並んでいる。予想以上のされ慣れていない好意に対して、戸惑いの色を浮かべるアレフに対して、既に待ちきれないと、デンっと座ったルディアが言い放つ。

「ほら、突っ立ってないでさっさと座んなさいよ! こっちはお腹ペコペコなんだから!」

 アレフは家主より態度が大きいルディアに呆れ、溜息を吐いた。

「はあ……なんでお前が偉そうなんだよ……」

 しかし、家主のヘスティアはルディアに賛同の意思を示す。

「まあ、いいからいいから。ルディアの言う通り座って下さい!」

 アレフはこれにはさすがに従わざるをえなかった。

「わかった……」

 アレフが腰掛けると同時にルディアが大きな声あげた。

「よーし! じゃあいただきます!」

「ってなんでルディアが一番に言うんだよ! ったく……
俺もいただきます」

 そう言って食べ始めたアレフの顔をヘスティアが心配そうに覗き込む。

「どう……ですか?」

「美味しいに決まってるじゃない!」

 自慢げに答えるルディアにアレフはつい呆れて突っ込んでしまった。

「だ・か・ら、お前が言うなって! でも本当に美味しいよ。」

 そう笑顔で言うアレフにヘスティアは喜びの声を上げる。

「良かったぁ……どんどん食べて下さいね!」

 勢いよく食べるアレフを笑顔で眺めながら、ヘスティアは尋ねた。

「アレフさん、一つ聞いていいですか?」

「うん、いいよ」

 アレフは手に持ったスプーンを一旦置いて、ヘスティアの顔を見た。

「アレフさんはなんであんなに強いんですか?」

「俺が強いって? 今日は勝ったけどFだし強くないよ
。ルディアの方がよっぽど強い。実際模擬戦じゃボコボコにやられるし……」

 苦笑いを浮かべて答えるアレフに対して、ヘスティアは身を乗り出して尋ねる。

「違います! だって……あんなにいっぱいの人から怒声とか罵声とか浴びせられて……怖くないんですか?」

 しかし、アレフは当たり前と言いたいような表情でルディアを見た。

「いつもの事だからなあ……」

 ごくん、と口の中の物を飲み込んだルディアがアレフに同意を示す。

「そうよ、レストランのマスターだってマシよ」

「マシって……追い出されたんですよ! あ、申し訳ないです……」

 ルディアの言葉につい反応を示してしまうが、先程の非礼を思い出しヘスティアは謝る。が、アレフもどこ吹く風といったように、ルディアの言葉に頷いていた

「本当に追い出されただけで済んでマシだよ。塩かけられたり、水かけられるくらいなら可愛いもんだからなあ……」

 平然と告げるアレフに対して、ヘスティアは呟く。

「凄いなぁ……それに比べて私は……」

 ヘスティアはアレフの左手を両手で握って、アレフの顔をじっと見つめた。

「私、もっとアレフさんのバトルみたいです! ファンになっちゃいました!」

「え、俺のファンだって? 止めといた方がいいよ?」

 言われた事のない言葉にアレフは驚きからか、否定的な言葉を返してしまう。

「ううん! 応援させて下さい! 次のバトルはいつですか、明日ですか?」

 真っ直ぐな瞳で見つめるヘスティアに、アレフは少し目線を逸らして答えた。

「明日は遺跡ダンジョンに潜るかなあ……それにFだから当分先かな。Eに上がれば……だから来月以降だね」

「じゃあ次のバトルが決まったら教えて下さい!」

 さすがにヘスティアの勢いにアレフは折れた。

「わかったよ……じゃあバトルの日程決まったら教えるからさ」

「わかりました! ありがとうございます! あ、残さず食べて下さいね!」

 笑顔でそう話すヘスティアに対して、アレフは慣れない笑顔で返した。

 ちなみに既に半分以上の料理はルディアの手によって消え去っていたのはここだけの話である。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...