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十二話目 二人の門番

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「おにぃ、あそこが教頭室です」

 俺はスノウにそう言われて曲がり角から少しだけ頭を覗かせる。扉の前に二人の女性が白い神官のような服で立っていた。

「あの二人のうち、どっちが教頭なんだ?」

 俺は小さな声でスノウにそう尋ねると、スノウも小さな声でこう返してきた。

「あの二人は教頭ではありません。スロープ先生とプリンシパル先生です」

「二人か……教頭以外で二人というと……」

「そうじゃな。E組の生徒たちが取り巻きと呼んでいた三人の中の二人じゃ」

 と、学園長が俺の言葉に返してくれた。

「保健室のインサイド、あとはあの二人なんですね」

「生徒たちの間ではダブルシャインと呼ばれてます」

「ダブルシャイン?」

 俺は不思議に思って、振り返りスノウにオウム返しをしてしまう。

「ええ、スロープ・シャイン、プリンシパル・シャイン、だからダブルシャインです」

「へぇ、姉妹なのか? 見た目は一緒に見えるけど」

「いいえ、姉妹ではないですし、双子でもありません。血の繋がりは全くありません。でも……まぁご覧になっていてください。ダブルシャインと呼ばれている理由が多分わかりますよ」

 すると学園長がゆっくりと二人の前に出ていった。目の前に学園長が立ち止まると、二人同時に口を開く。

「なんの用でしょうか? 学園長」「なんの用でしょうか? 学園長」

 なんじゃありゃ? 二人同じ動きで同じセリフを喋ってやがる。しかし、スノウの言った通りすぐに分かった。あれ・・だからダブルシャインって言われてるのか。

 そのダブルシャインに学園長が話しかけた。

「アルファポに話があるんじゃ。ちょっと通してくれんかの?」

「わたしたちは」「わたしたちは」

「リス様を守っています」「リス様を守っています」

「リス様?」

 俺が聞いたことの無い名に疑問の声をあげると、背後からスノウが答えてくれた。

「教頭アルファポのことです」

「あア、ナルほど」

 教頭のアルファポはあのリス家の人間だったのか。なら俺たちのことをより一層ゴミ扱いするのもわからんでもない。知る人ぞ知る過激的な家柄だ。

 俺がそんなことを考えていると、俺たちの言葉が耳に入ったのか、ダブルシャインがこちらの方を見てきた。

「誰かそこにいるのですね」「誰かそこにいるのですね」

「人の気配が感じられます」「人の気配が感じられます」

 ま、隠れていても仕方ない。と、俺はツカツカと二人の前まで歩き、こう言い放った。

「俺か? 今日入ったE組のサシュタイン・ベルウノです」

「ここはゴミの来るような所ではありません」「ここはクズの来るような所ではありません」

 予想通りの反応だ。だが、ちょっとだけセリフが変わった。間違えたのか?

「立ち去りなさいっ!」「立ち去りなさいっ!」

「そうは言っても、アルファポに話をしないといけないらしいからなぁ」

 俺がそう呟いて頭をかいていると、周囲の気温が急激に下がっていくのを感じた。特に背後が……

「おにぃをゴミとかクズとか……」

 焦って振り向くと、俯いて髪を垂らしたスノウがそこに居た。表情はうかがい知ることができないが、怒りが篭っているであろうことは容易に想像出来る。

「いい加減にしなさい!」

 スノウはバッと顔を上げ右手をかざした。俺はまさかと思ってダブルシャインに視線を送るとそこ・・には生気の抜かれたまるで人形のような二人が立っていた。

「ワタシタチハ」「ワタシタチハ」

「おい、スノウさん? やり過ぎじゃないか?」

 しかし、俺の言葉にスノウはなにごとも無かったかのように

「大丈夫です。暫くの間だけです。すぐに意識を取り戻すでしょう」

「ま、生徒の魔法にかかってしまうのも情けない。問題ないじゃろ」

 学園長まで問題無いと言っている。が、俺にはそう見えない。しかし、スノウにここまでの洗脳する魔力があったとは……

「リスサマヲマモッテイマス」「リスサマヲマモッテイマス」

「ホントに大丈夫なのか?」

 そう言いながら俺は二人を覗き込むように代わる代わる見た。

「ムッツノオーブヲキンノカンムリノダイザニササゲタトキ……」「セカイジュウニチラバルムッツノオーブヲキンノダイザニササゲタトキ……」

「六つのオーブ? まぁよくわからんが、学園長がそう言うなら仕方ない。行きましょう」

 そう答えた俺を見て学園長は一つ頷き、ダブルシャインをその場に残して教頭室の中へ入っていった。
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