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四話目 E組
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「サシュタイン君の教室はここじゃ」
学園長は一つの教室の前で止まり、振り返ってから俺たちにそう告げた。するとスノウが驚きの声をあげる。
「ここはE組じゃないですか? 学園長、なぜ兄がE組なのですか? 何かの間違いでは?」
「スノウ、どういうことだ? 俺は第一学園のことは全く知らない。何か問題でもあるのか?」
スノウは感情をあらわに学園長を問いただしている。俺は事情も飲み込めないので、何が問題なのかスノウに尋ねた。
「第二学園ではどうだったんですか?」
しかし、逆に俺がスノウに尋ねられてしまう。だが、スノウが何故問題だと思ったのか分からない俺は言葉に詰まった。
「どうもも何も……」
すると学園長が、俺とスノウを交互に見ながら助け舟を出してくれた。
「ここはどちらの学園も知っておる儂が話そう。第二学園は年齢ごとに学年があり、そこでまた組み分けあるんじゃ。じゃが第一学園は年齢関係無く組み分けをされておる。優秀な順にAからDまでな」
だが俺はE組だと言われた。それはつまり……
「つまりE組は成績とは関係無いということですね」
学園長は俺の言葉に黙って頷いた。と同時にスノウがこう続ける。
「ざっくり言うと……E組は問題のある生徒が集められているところです」
なるほど。と思った俺はゆっくりと一つ頷いた。
「ちなみにスノウ君は五年間の学園生活の中で一年目からA組という恐るべき才能の持ち主じゃ。やはりスノウ君の魔法の才は特筆すべきものがある」
その言葉にスノウは両手を顔に当てた。照れてしまったようだった。
「そんなことありませんわ……」
俺はそんなスノウの頬に手をやり軽く撫で、そのまま瞳をじっと見つめてこう告げる。
「スノウ、本当のことなんだから謙遜することは無いよ。俺はスノウが優秀と言われてとても嬉しいよ」
「おにぃ……私もおにぃに褒められてとても嬉しいですわ」
俺から視線を逸らしながらもスノウは真っ白な頬を真っ赤に染めて、愛おしそうに俺の手に頬を擦り付けた。
「あー、ごほんごほん! いいかの? 話を続けて」
学園長咳払いと共にそういうと、スノウは何かを思い出したかのようにハッとした。そして今度は学園長の前にかがみ込み、学園長の手を取って尋ねた。
「そうです! なぜ優秀な兄が私と同じA組じゃないのですか?」
「こらこら、スノウ。そんな我儘を言って学園長をそんなに困らせないであげてくれ。俺がスノウと同じA組で通える訳無いだろう? 同じ学園に通うだけでも相当な我儘なんだよ?」
スノウの圧に戸惑い少し困った表情の学園長を助けようと、俺はスノウを諌めた。すると今度は俺の方に向き直って俺の手を取る。
「おにぃは自分が問題のある生徒だと言われて何も思わないのですか?」
「ああ、特に思わないね。それに……」
俺はそこまで言うと視線をスノウから外し、学園長にその視線を送った。
「問題があるのはE組が……とは限らないからね。ですよね? 学園長?」
「そうじゃな……話が早い」
学園長は真剣な表情で俺を見ていた。やはり俺の予想は当たっているようだ。
「どういうことです?」
スノウは俺と学園長を交互に見る。そんなスノウに俺は優しく語りかける。
「簡単なことだよ。俺が第一学園に来るのを拒んだ理由。それは第二学園以上に差別意識が強いと思ったからだ」
スノウはハッとした表情になった。そんなスノウに俺はこう続けた。
「第二学園を辞めさせられた直接の理由は、俺が妾の子だったから。しかもそんな卑しい身分でなまじ強いのが彼らの気に障ったらしい。学園も制御しきれないと判断したのだろう。だからお払い箱になった。というワケだ」
そしてスノウの手を離し、俺は両手を広げて肩をすくめる。
「第一学園の方がエリートが多い。差別意識の高い連中も多いだろう。そういう連中から守る為と言った側面も大いにあるんだろうね」
「という訳じゃ」
学園長も俺に同意を示してくれた。そして俺はスノウをより安心させるためにより優しい声色で幼子をあやす様にスノウに語りかけた。
「ま、第二学園は逆にねじ曲がった劣等感から来る八つ当たりの面で酷い部分はあっただろうがね。なるほど、ここは思ったよりも悪くなさそうだ。スノウが気にする必要はないと思うよ」
「おにぃがそう仰るのなら……」
まだ少し不満そうな様子ではあるが、これなら多分大丈夫だろう。
「スノウはスノウで不満もあるだろうけど、聞き分けの良い子は好きだよ」
「はい……ありがとうございます……」
そして俺はスノウの頭を軽く撫でながら、優しくこう告げる。
「じゃあ俺は大丈夫だから、自分の所に行きなさい」
「はい、かしこまりました」
スノウは自分の教室に向かっていった。俺と学園長はその背中が見えなくなるまで見送る。すると、学園長が俺に語りかけてきた。
「サシュタイン君……」
「大丈夫ですよ。わかってますって。スノウを安心させる為ですから。話半分ですよ」
そう、問題があるのはE組とは限らないとは言ったが、E組には問題が無いなんて言ってない。
「わかってるなら良いのだが……」
「でもさっき言ったのは本当ですよ? ここは思ったより悪くなさそうだってのはね」
第二学園では周りは全て敵だった。ここはもしかしたら味方を作れるかもしれない。そう思ったのは事実だ。
「さて、そろそろ入りますかね」
俺はそう呟き扉を開いた。
学園長は一つの教室の前で止まり、振り返ってから俺たちにそう告げた。するとスノウが驚きの声をあげる。
「ここはE組じゃないですか? 学園長、なぜ兄がE組なのですか? 何かの間違いでは?」
「スノウ、どういうことだ? 俺は第一学園のことは全く知らない。何か問題でもあるのか?」
スノウは感情をあらわに学園長を問いただしている。俺は事情も飲み込めないので、何が問題なのかスノウに尋ねた。
「第二学園ではどうだったんですか?」
しかし、逆に俺がスノウに尋ねられてしまう。だが、スノウが何故問題だと思ったのか分からない俺は言葉に詰まった。
「どうもも何も……」
すると学園長が、俺とスノウを交互に見ながら助け舟を出してくれた。
「ここはどちらの学園も知っておる儂が話そう。第二学園は年齢ごとに学年があり、そこでまた組み分けあるんじゃ。じゃが第一学園は年齢関係無く組み分けをされておる。優秀な順にAからDまでな」
だが俺はE組だと言われた。それはつまり……
「つまりE組は成績とは関係無いということですね」
学園長は俺の言葉に黙って頷いた。と同時にスノウがこう続ける。
「ざっくり言うと……E組は問題のある生徒が集められているところです」
なるほど。と思った俺はゆっくりと一つ頷いた。
「ちなみにスノウ君は五年間の学園生活の中で一年目からA組という恐るべき才能の持ち主じゃ。やはりスノウ君の魔法の才は特筆すべきものがある」
その言葉にスノウは両手を顔に当てた。照れてしまったようだった。
「そんなことありませんわ……」
俺はそんなスノウの頬に手をやり軽く撫で、そのまま瞳をじっと見つめてこう告げる。
「スノウ、本当のことなんだから謙遜することは無いよ。俺はスノウが優秀と言われてとても嬉しいよ」
「おにぃ……私もおにぃに褒められてとても嬉しいですわ」
俺から視線を逸らしながらもスノウは真っ白な頬を真っ赤に染めて、愛おしそうに俺の手に頬を擦り付けた。
「あー、ごほんごほん! いいかの? 話を続けて」
学園長咳払いと共にそういうと、スノウは何かを思い出したかのようにハッとした。そして今度は学園長の前にかがみ込み、学園長の手を取って尋ねた。
「そうです! なぜ優秀な兄が私と同じA組じゃないのですか?」
「こらこら、スノウ。そんな我儘を言って学園長をそんなに困らせないであげてくれ。俺がスノウと同じA組で通える訳無いだろう? 同じ学園に通うだけでも相当な我儘なんだよ?」
スノウの圧に戸惑い少し困った表情の学園長を助けようと、俺はスノウを諌めた。すると今度は俺の方に向き直って俺の手を取る。
「おにぃは自分が問題のある生徒だと言われて何も思わないのですか?」
「ああ、特に思わないね。それに……」
俺はそこまで言うと視線をスノウから外し、学園長にその視線を送った。
「問題があるのはE組が……とは限らないからね。ですよね? 学園長?」
「そうじゃな……話が早い」
学園長は真剣な表情で俺を見ていた。やはり俺の予想は当たっているようだ。
「どういうことです?」
スノウは俺と学園長を交互に見る。そんなスノウに俺は優しく語りかける。
「簡単なことだよ。俺が第一学園に来るのを拒んだ理由。それは第二学園以上に差別意識が強いと思ったからだ」
スノウはハッとした表情になった。そんなスノウに俺はこう続けた。
「第二学園を辞めさせられた直接の理由は、俺が妾の子だったから。しかもそんな卑しい身分でなまじ強いのが彼らの気に障ったらしい。学園も制御しきれないと判断したのだろう。だからお払い箱になった。というワケだ」
そしてスノウの手を離し、俺は両手を広げて肩をすくめる。
「第一学園の方がエリートが多い。差別意識の高い連中も多いだろう。そういう連中から守る為と言った側面も大いにあるんだろうね」
「という訳じゃ」
学園長も俺に同意を示してくれた。そして俺はスノウをより安心させるためにより優しい声色で幼子をあやす様にスノウに語りかけた。
「ま、第二学園は逆にねじ曲がった劣等感から来る八つ当たりの面で酷い部分はあっただろうがね。なるほど、ここは思ったよりも悪くなさそうだ。スノウが気にする必要はないと思うよ」
「おにぃがそう仰るのなら……」
まだ少し不満そうな様子ではあるが、これなら多分大丈夫だろう。
「スノウはスノウで不満もあるだろうけど、聞き分けの良い子は好きだよ」
「はい……ありがとうございます……」
そして俺はスノウの頭を軽く撫でながら、優しくこう告げる。
「じゃあ俺は大丈夫だから、自分の所に行きなさい」
「はい、かしこまりました」
スノウは自分の教室に向かっていった。俺と学園長はその背中が見えなくなるまで見送る。すると、学園長が俺に語りかけてきた。
「サシュタイン君……」
「大丈夫ですよ。わかってますって。スノウを安心させる為ですから。話半分ですよ」
そう、問題があるのはE組とは限らないとは言ったが、E組には問題が無いなんて言ってない。
「わかってるなら良いのだが……」
「でもさっき言ったのは本当ですよ? ここは思ったより悪くなさそうだってのはね」
第二学園では周りは全て敵だった。ここはもしかしたら味方を作れるかもしれない。そう思ったのは事実だ。
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