47 / 49
四十七話 旧い知り合い
しおりを挟む
「ま、まさか……そんな、まさか……」
「アッハッハッハッハッ! おい、亀! まさかもクソもねぇだろ! 俺の手にかかれば人もエルフも一瞬であの世行きだ! こうなることも当然だろうがよ!」
ジャガールはジュデッカに腕を突き刺した体勢のまま、首だけ振り返ってそう笑っていた。
「まさか……」
「だから……ん? なんかおかしいな……」
ジャガールは何か不審に思い、視線を戻した。すると、そこには貫かれたはずのジュデッカの姿は無かった。その光景にジャガールは驚いてしまう。
「な、なに? 俺は確かに小娘を殺したはず……あ、あれは!」
ジャガールの視線のさき。そこに人影が見えた。見覚えのあるその姿にジャガールは激しく動揺してしまう。
「久しぶりだねぇ。ジャガール?」
「お、お前は! なんで生きてる!」
「フェ、フェイレイ! フェイレイじゃないか!」
「おうよ。メイザース。久しぶりだねぇ」
喋る亀の名を呼び、ジュデッカを抱えていない方の手を挙げてフェイレイは軽く挨拶をしたのであった。
「久しぶり過ぎじゃよ。しっかし、変わらないのは驚きじゃわい」
「アハハハ! メイザースも変わってないよ。お互い様だよ」
懐かしく冗談を言い合うフェイレイとメイザース。メイザースの近くにいたジャガールは驚いてメイザースにこう尋ねる。
「お、おい! なんでアイツがここに居るんだ!」
「それはワシが聞きたいわい。フェイレイがまさか生きてるとは……」
感慨深げにメイザースは語り、今度はフェイレイに抱えられているジュデッカに対してこう声をかけた。
「ジュデッカよ。お主を助けてくれたそのドワーフはフェイレイ。ワシの古い二人の友人。そのうちの一人じゃよ」
「え、でも、お亡くなりになってたのでは? 兄弟子たちからもそう聞いて……」
「ワシが会っていた限りでは死んでなどおらん。この世を去っただけじゃ」
「だから、お亡くなりに……」
「この世を去って魔界に旅立っただけじゃよ」
ジュデッカはメイザースの言葉に対して、理解が追いつかない様子を示した。
「…………は?」
「この世に居ても強さに限界がある、と魔界へ旅立っていったのじゃ。気が遠くなるほどの遠い昔の話じゃ」
メイザースの言葉にジャガールはフェイレイとメイザースへ交互に視線を送った。
「マジかよ……正気の沙汰じゃねぇ」
「うむ。ワシもそう思う。それにドワーフの寿命を超越しておる」
「確かに……あの時ですらババァだったぞ?」
「そ、そこ……なに敵同士で仲良く話してるんですか……」
ジュデッカはフェイレイに抱えられたままの体勢で、仲良く話している二人に呆れてしまった様子を見せる。
「は! そうじゃ! そもそもジャガールは敵じゃった! 喜べジャガール! お前が先程欲した相手があそこにおるぞ! お前に勝てる相手がな!」
「ハン! 冗談はよせ! アイツは俺にやられてるんだぞ!」
「試してみるかい?」
「いいのか? お前が俺に迫ってくる間に、俺はこの亀を殺せるぜ?」
ジャガールがそう言ってメイザースをひょいと拾い上げた。すると、フェイレイは肩を竦めてこう答える。
「やっぱやめとくわ。オイラはお前とは戦えない」
「懸命だな。そもそもお前が俺に勝てるわけが無い」
「フェイレイ様! お師匠様を見捨てないでください!」
「はぁ……何勘違いしてるんだ二人とも」
ジャガールとジュデッカの言葉を、フェイレイはため息混じりに否定してからこう続けた。
「人の飼い猫……じゃなかった飼い亀に手を上げたんだ。もう終わってるって話なだけだ」
「な、何を言って……」
ジャガールがそ言いかけると同時に、ドサリ……と何かが落ちる音がした。不思議に思ったジャガールが音のした場所に視線を送ると、そこには自身の身体から離れた腕とメイザースが落ちていた。
「は? お、俺の腕が?」
混乱するジャガールの背後よりしゃがれた声が聞こえてきた。
「久しぶりじゃな、メイザースよ」
「お、おお! 我が師、クロウリー様! お、おひさしぶりでございます!」
「お嬢ちゃん、オイラの後ろに下がってな。ちゃんと捕まってなよ?」
クロウリーとメイザースの様子を見ていたフェイレイは、ジュデッカにそう告げて自分の背後に下ろした。
「は? は、はい!」
ジュデッカがフェイレイにぎゅっと捕まるとほぼ同時だった。クロウリーがジャガールにそう告げたのは。
「さてと、儂のペットに手を上げようとした罪、きちんと償って貰おうか?」
「な、何を言ってぇ……ぇぇええっぇぇえっっぇっぇぇぇぇっぇぇ!」
一瞬後、メイザースの姿がゆらりと掻き消える。そして風が吹き荒れ、その風はジャガールを中心に巨大な竜巻へと姿を変える。天まで届くほどの巨大な竜巻は天を覆った暗雲を、軽々と吸いこんで行ってしまっていた。
その間、数十秒といったところであろうか。全ての暗雲が消え去り、晴々とした空が広がったると同時に、竜巻はまるでその役目を終えたかのように、すぅっと姿を消してしまった。その場に居たはずのジャガールと共に。
「な、なにこれ……」
「お、お師匠様……相変わらずやりすぎです……」
呆然とするジュデッカとメイザース。そのメイザースの言葉に対してクロウリーは下をペロリと出してこう答えた。
「ス、スマン。かなり手加減したつもりだったのじゃが、久々の地上では、これでも強すぎたみたいじゃわい」
「アッハッハッハッハッ! おい、亀! まさかもクソもねぇだろ! 俺の手にかかれば人もエルフも一瞬であの世行きだ! こうなることも当然だろうがよ!」
ジャガールはジュデッカに腕を突き刺した体勢のまま、首だけ振り返ってそう笑っていた。
「まさか……」
「だから……ん? なんかおかしいな……」
ジャガールは何か不審に思い、視線を戻した。すると、そこには貫かれたはずのジュデッカの姿は無かった。その光景にジャガールは驚いてしまう。
「な、なに? 俺は確かに小娘を殺したはず……あ、あれは!」
ジャガールの視線のさき。そこに人影が見えた。見覚えのあるその姿にジャガールは激しく動揺してしまう。
「久しぶりだねぇ。ジャガール?」
「お、お前は! なんで生きてる!」
「フェ、フェイレイ! フェイレイじゃないか!」
「おうよ。メイザース。久しぶりだねぇ」
喋る亀の名を呼び、ジュデッカを抱えていない方の手を挙げてフェイレイは軽く挨拶をしたのであった。
「久しぶり過ぎじゃよ。しっかし、変わらないのは驚きじゃわい」
「アハハハ! メイザースも変わってないよ。お互い様だよ」
懐かしく冗談を言い合うフェイレイとメイザース。メイザースの近くにいたジャガールは驚いてメイザースにこう尋ねる。
「お、おい! なんでアイツがここに居るんだ!」
「それはワシが聞きたいわい。フェイレイがまさか生きてるとは……」
感慨深げにメイザースは語り、今度はフェイレイに抱えられているジュデッカに対してこう声をかけた。
「ジュデッカよ。お主を助けてくれたそのドワーフはフェイレイ。ワシの古い二人の友人。そのうちの一人じゃよ」
「え、でも、お亡くなりになってたのでは? 兄弟子たちからもそう聞いて……」
「ワシが会っていた限りでは死んでなどおらん。この世を去っただけじゃ」
「だから、お亡くなりに……」
「この世を去って魔界に旅立っただけじゃよ」
ジュデッカはメイザースの言葉に対して、理解が追いつかない様子を示した。
「…………は?」
「この世に居ても強さに限界がある、と魔界へ旅立っていったのじゃ。気が遠くなるほどの遠い昔の話じゃ」
メイザースの言葉にジャガールはフェイレイとメイザースへ交互に視線を送った。
「マジかよ……正気の沙汰じゃねぇ」
「うむ。ワシもそう思う。それにドワーフの寿命を超越しておる」
「確かに……あの時ですらババァだったぞ?」
「そ、そこ……なに敵同士で仲良く話してるんですか……」
ジュデッカはフェイレイに抱えられたままの体勢で、仲良く話している二人に呆れてしまった様子を見せる。
「は! そうじゃ! そもそもジャガールは敵じゃった! 喜べジャガール! お前が先程欲した相手があそこにおるぞ! お前に勝てる相手がな!」
「ハン! 冗談はよせ! アイツは俺にやられてるんだぞ!」
「試してみるかい?」
「いいのか? お前が俺に迫ってくる間に、俺はこの亀を殺せるぜ?」
ジャガールがそう言ってメイザースをひょいと拾い上げた。すると、フェイレイは肩を竦めてこう答える。
「やっぱやめとくわ。オイラはお前とは戦えない」
「懸命だな。そもそもお前が俺に勝てるわけが無い」
「フェイレイ様! お師匠様を見捨てないでください!」
「はぁ……何勘違いしてるんだ二人とも」
ジャガールとジュデッカの言葉を、フェイレイはため息混じりに否定してからこう続けた。
「人の飼い猫……じゃなかった飼い亀に手を上げたんだ。もう終わってるって話なだけだ」
「な、何を言って……」
ジャガールがそ言いかけると同時に、ドサリ……と何かが落ちる音がした。不思議に思ったジャガールが音のした場所に視線を送ると、そこには自身の身体から離れた腕とメイザースが落ちていた。
「は? お、俺の腕が?」
混乱するジャガールの背後よりしゃがれた声が聞こえてきた。
「久しぶりじゃな、メイザースよ」
「お、おお! 我が師、クロウリー様! お、おひさしぶりでございます!」
「お嬢ちゃん、オイラの後ろに下がってな。ちゃんと捕まってなよ?」
クロウリーとメイザースの様子を見ていたフェイレイは、ジュデッカにそう告げて自分の背後に下ろした。
「は? は、はい!」
ジュデッカがフェイレイにぎゅっと捕まるとほぼ同時だった。クロウリーがジャガールにそう告げたのは。
「さてと、儂のペットに手を上げようとした罪、きちんと償って貰おうか?」
「な、何を言ってぇ……ぇぇええっぇぇえっっぇっぇぇぇぇっぇぇ!」
一瞬後、メイザースの姿がゆらりと掻き消える。そして風が吹き荒れ、その風はジャガールを中心に巨大な竜巻へと姿を変える。天まで届くほどの巨大な竜巻は天を覆った暗雲を、軽々と吸いこんで行ってしまっていた。
その間、数十秒といったところであろうか。全ての暗雲が消え去り、晴々とした空が広がったると同時に、竜巻はまるでその役目を終えたかのように、すぅっと姿を消してしまった。その場に居たはずのジャガールと共に。
「な、なにこれ……」
「お、お師匠様……相変わらずやりすぎです……」
呆然とするジュデッカとメイザース。そのメイザースの言葉に対してクロウリーは下をペロリと出してこう答えた。
「ス、スマン。かなり手加減したつもりだったのじゃが、久々の地上では、これでも強すぎたみたいじゃわい」
0
お気に入りに追加
787
あなたにおすすめの小説
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
運命の選択が見えるのですが、どちらを選べば幸せになれますか? ~私の人生はバッドエンド率99.99%らしいです~
日之影ソラ
恋愛
第六王女として生を受けたアイリスには運命の選択肢が見える。選んだ選択肢で未来が大きく変わり、最悪の場合は死へ繋がってしまうのだが……彼女は何度も選択を間違え、死んではやり直してを繰り返していた。
女神様曰く、彼女の先祖が大罪を犯したせいで末代まで呪われてしまっているらしい。その呪いによって彼女の未来は、99.99%がバッドエンドに設定されていた。
婚約破棄、暗殺、病気、仲たがい。
あらゆる不幸が彼女を襲う。
果たしてアイリスは幸福な未来にたどり着けるのか?
選択肢を見る力を駆使して運命を切り開け!
救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~
日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。
そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。
優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。
しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
婚約者が継母や妹に陥れられそうになっているので、それを利用して継母たちを陥れることにした
柚木ゆず
恋愛
母フルールの病死による父ドナルドの再婚により、伯爵令嬢アレットは現在継母であるカロル、半分血の繋がらない妹クラリスと共に生活をしていました。
そんなカロルとクラリスはアレットに逆恨みをしていて様々な形で嫌がらせを行い、父ドナルドは二人を溺愛しているため咎めることはありません。それどころかいつもカロル達の味方をして、アレットは理不尽だらけの毎日を過ごしていました。
そしてついにカロル達は、『トドメ』となる悪巧みを計画。アレットの悪事を複数個捏造し、アレットを屋敷から追い出そうとし始めるのですが――。カロル、クラリス、ドナルドも、まだ知りません。
様々な事情により、手出しできずにいたアレットの婚約者オーバン。彼にその行動を利用され、まもなく人生が一変してしまうことを。
※申し訳ございません。タイトルを再変更させていただきました。
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
深い森の奥で
下菊みこと
恋愛
御都合主義のハッピーエンドのSSです。
孤独な魔女と不遇な少年が身を寄せ合って生きるお話です。
小説家になろう様でも投稿しています。
ざまぁは一切ありません。
ひたすらほのぼの暮らすだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる