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四十三話 降臨

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「アハハハハハハ……」

 柄を天にかざしたアネイルは笑い続けた。しかし……

「ん?」

 違和感を覚えたゲイルは少しだけ首をかしげる。追ってアネイルも高笑いを止めた。異変に気づいたのは一瞬だけゲイルが早かった。

「魔法が使えない……? なんでだ?」

 アネイルは首をかしげてそう呟いた。先程、雷を落とせたのだから宝具が壊れたからではないことは明白だった。
 アネイルの呟きを受けて、ゲイルもこう呟いた。

「マナもチャクラも見えなくなってる……魔法が使えないんじゃない。宝具が使えなくなってるんだ!」

 ゲイルは眼鏡を通した光景が今までと一変していることに気がついた。今まで世界に溢れていたマナが見えなくなっていたのである。

「なんで宝具が使えなくなってんだよぉぉ! 誰だよ! 邪魔してるヤツはよぉ!」

 アネイルは苛立ちを隠さず、怒鳴り声を張り上げる。と同時にアネイルの背後からしゃがれた声が聞こえた。

『それは我だ。穢れしモノよ』

 アネイルはその声に導かれて振り向く。そこには背中を丸めた老人が樫の杖を片手にポツリと立っていた。

「は? 誰だお前は?」

『我は✦‧✧̣̥̇‧✲゚✧✽*✼✼✽*』

「なんだかよく聞こえねぇよ! でも、邪魔してくれた礼はしねぇとな!」

 その老人は自身の名を発するが、アネイルには何を言ってるのかわからなかった。だが、宝具を使えなくなった礼をするとアネイルは返して、その老人に飛びかかる。
 アネイルが老人に掴みかかるとした瞬間、一瞬だけその老人が光を放つ。

『愚かな』

 次の瞬間、アネイルの下半身はどさり、と崩れ落ちる。直前にあったはずの上半身は一欠片すら残っていなかった。

「ア、アネイルが一瞬で……何者……?」

 目の前でアネイルが一瞬で殺されて、ゲイルは驚きの声を漏らす。すると老人はその声に光景答えた。

『我は✦‧✧̣̥̇‧✲゚✧✽*✼✼✽*。と言っても穢れしモノには我が名は届かぬか。ふむ。この世界を創りし存在と言った方がよいか』

「この世界を創ったって? まさか、神様? でも、だからといって宝具を使えなくしたってのは……」

『我のことは好きに呼ぶがいい。そうだな。この世界は穢れすぎた。だから我は穢れしモノ共を消し去り、新しく清らかなモノを創る。だから宝具を使えなくしたのだ』

「は……?」

 ゲイルは話を理解出来ない、と言ったような表情を見せていた。しかし神はそんなゲイルに構うことなくこう続ける。

『宝具は我が与えた物だ。誰でも楽に魔法を使えるように。そして、宝具が無ければ魔法が使えぬように。事実、宝具に頼りきった穢れしモノ共は、我が宝具の力を消し去った今、もう魔法を使うことは出来ぬ。そして穢れしモノ共はお互いで醜く殺し合い、愚かにも疲弊し切った。時が来た。各地で我が遣いが既に粛清を始めている。間もなく、この世界には静寂の時が訪れるであろう』

 そして神が杖を翳すと、天は大きな雲に包まれ、雷鳴が轟いたのだった。
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