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七話 囮にされた少女
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「ダメだ! キラースネークに追いつかれる! 今度はお前だ! 最期くらいは役に立ってくれよ! レイラ!」
その言葉と共にレイラと呼ばれた少女は馬車の荷台から突き落とされた。
馬車の通った道には転々と様々な食べ物が転がっていた。
「ま、待って! 待って下さい!」
レイラは必死になって馬車を追いかけようと立ち上がるが、すぐにバランスを崩してまた倒れてしまった。
「痛!」
レイラは激痛に顔を歪めた。レイラは激痛が走った右足に目をやった。そこは赤く腫れ上がってしまっていた。どうやら突き落とされた拍子に痛めてしまったようだった。
「あ、ああ……嫌……嫌……」
立つことの出来ないレイラは、必死に這いつくばって逃げようともがいた。が、当然逃げることなど出来ず、すぐに追いつかれてしまった。レイラの数倍はあろうか、と言うほどの巨大な蛇に。キラースネークに。
キラースネークは餌として馬車から投げ捨てられた食べ物には脇目もふらず、一直線にレイラの元へ向かってきていた。
「いや、いや……食べないで! お、美味しくなんかないから!」
レイラは必死に抵抗しようと泣きながら石を拾って投げつけるが、キラースネークには全く効いている様子などない。何度も投げ付けられる石に意を返すことなどないキラースネークは、レイラに興味を示しまるで品定めをするようにレイラをジロジロと眺めている。
レイラを舐め回すように見ていたキラースネークは、暫くするとレイラのことをとぐろを巻いて囲ってしまった。囲まれたレイラには逃げ場などない。
「あ、ああ……」
絶望に包まれたレイラはもう言葉を発することなど出来ない。キラースネークのとぐろの隙間から漏れ出る光が、レイラの恐怖をよりいっそう引き立てていた。
そしてキラースネークはレイラを食べようと大きく口を広げた。いや、飲み込もうとした、という方が的確だろうか。
大きく広げた口には巨大な二本の牙が妖しく光り、その牙の先からポタッ、ポタッと涎が滴り落ちる。そしてその涎は、ジュゥゥ……と地面を溶かしたのだった。
「いやーーーーーーー!!!!」
レイラは叫び声をあげて、ギュッと目を瞑って下を向いた。そして脳裏に浮かぶのは直後に訪れる死の光景だった。身体は涎で溶かされ全身が激痛に包まれる。巨大な二本の牙に身体を貫かれ、流れ出る大量の血。そしてまだ息があるのに飲み込まれ、体内で朽ちていく姿。
死の瞬間、時が止まったように感じるらしい。レイラに訪れたのは永遠のように感じる時間であった。余りにもその時が永いと感じたレイラはふと目を開けてしまう。
「あ、あれ。明るい」
下を向いていたレイラは周囲が明るくなっていたことに気づいた。先程まではキラースネークに巻かれ、闇に包まれていたはずなのに。
不思議に思ったレイラがふと顔を上げると、キラースネークの尻尾を片手で掴んで軽々とぶん回している眼鏡をかけた一人の青年が立っていたのだった。
その言葉と共にレイラと呼ばれた少女は馬車の荷台から突き落とされた。
馬車の通った道には転々と様々な食べ物が転がっていた。
「ま、待って! 待って下さい!」
レイラは必死になって馬車を追いかけようと立ち上がるが、すぐにバランスを崩してまた倒れてしまった。
「痛!」
レイラは激痛に顔を歪めた。レイラは激痛が走った右足に目をやった。そこは赤く腫れ上がってしまっていた。どうやら突き落とされた拍子に痛めてしまったようだった。
「あ、ああ……嫌……嫌……」
立つことの出来ないレイラは、必死に這いつくばって逃げようともがいた。が、当然逃げることなど出来ず、すぐに追いつかれてしまった。レイラの数倍はあろうか、と言うほどの巨大な蛇に。キラースネークに。
キラースネークは餌として馬車から投げ捨てられた食べ物には脇目もふらず、一直線にレイラの元へ向かってきていた。
「いや、いや……食べないで! お、美味しくなんかないから!」
レイラは必死に抵抗しようと泣きながら石を拾って投げつけるが、キラースネークには全く効いている様子などない。何度も投げ付けられる石に意を返すことなどないキラースネークは、レイラに興味を示しまるで品定めをするようにレイラをジロジロと眺めている。
レイラを舐め回すように見ていたキラースネークは、暫くするとレイラのことをとぐろを巻いて囲ってしまった。囲まれたレイラには逃げ場などない。
「あ、ああ……」
絶望に包まれたレイラはもう言葉を発することなど出来ない。キラースネークのとぐろの隙間から漏れ出る光が、レイラの恐怖をよりいっそう引き立てていた。
そしてキラースネークはレイラを食べようと大きく口を広げた。いや、飲み込もうとした、という方が的確だろうか。
大きく広げた口には巨大な二本の牙が妖しく光り、その牙の先からポタッ、ポタッと涎が滴り落ちる。そしてその涎は、ジュゥゥ……と地面を溶かしたのだった。
「いやーーーーーーー!!!!」
レイラは叫び声をあげて、ギュッと目を瞑って下を向いた。そして脳裏に浮かぶのは直後に訪れる死の光景だった。身体は涎で溶かされ全身が激痛に包まれる。巨大な二本の牙に身体を貫かれ、流れ出る大量の血。そしてまだ息があるのに飲み込まれ、体内で朽ちていく姿。
死の瞬間、時が止まったように感じるらしい。レイラに訪れたのは永遠のように感じる時間であった。余りにもその時が永いと感じたレイラはふと目を開けてしまう。
「あ、あれ。明るい」
下を向いていたレイラは周囲が明るくなっていたことに気づいた。先程まではキラースネークに巻かれ、闇に包まれていたはずなのに。
不思議に思ったレイラがふと顔を上げると、キラースネークの尻尾を片手で掴んで軽々とぶん回している眼鏡をかけた一人の青年が立っていたのだった。
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