1 / 5
第1章 聖国ミネルヴァと開放のエイネリア
始まりのエイネリア
しおりを挟む
「お願い……私に力を下さい!」
アルティがそう叫びながら使者の持つ結晶に手をかざし力を込める。その瞳には、今までの辛い日々と、どうしてもエイネリアとして認められたいという強い決意が宿っていた。
これで何も起きなければエイネリアになることは二度とできない。それはエイネンに選ばなかった普通の人間として生きていくということ。
彼女はそれを望んでいない。親友と一緒にエイネリアとなり人のために生きていく人生を送りたい。
これが最後のチャンス。
そう思った瞬間、結晶は徐々に淡い光を放ち始め、次第にその輝きは強さを増し、まるで生きているかのように脈打っていた。
アルティの心臓もその光と共に高鳴り、部屋中が神聖な雰囲気に包まれていく。
周りにいたアルティの両親や親友のリリー、そして騎士団からやってきていた使者は光に視界を奪われる。
また突然のことに使者は手にもっていた結晶をアルティの足元に落としてしまった。
光は次第に強さを増し木造の家の隙間から光が漏れるほどに輝きを放つ。
「いったい何が起こったというのだ」
使者は経験した事がない事態に間抜けな声を上げている。
「アルティ、大丈夫か?」
「アルティちゃん! 怪我はない!?」
アルティの父、そしてリリーがアルティのいた方へ尋ねる。
「私は大丈夫だよ。それにこの光。なんだか暖かくて安心するんだ」
アルティがそう答えると部屋にあったどよめきが小さくなる。
光が放つ安心感を皆も感じることが出来たらしい。
そうしているうちに光は次第に弱まり、皆が目を開く。
と、そこには信じられない光景が待ち受けていた。
「誰じゃワシのことを無理やり呼び出したのは……」
焦げ茶色の鱗に小さな翼を持ったドラゴンの幼体が結晶のあった場所に座り、欠伸をしている。
見た目はぬいぐるみのようだが、その態度には威厳とわずかな苛立ちが見え隠れしていた。
「こ、これは……召喚したのか? 君が、ドラゴンを!?」
使者は目の前で起きた信じられない現象に冷静さを欠いており、うろたえながらアルティの肩を掴みその小さな体を強く揺らし始める。
アルティは肩を握る力の強さに痛みを覚え苦悶の表情を浮かべるが使者はそれに気づかず彼女の肩を揺らし続けている。
その表情は嬉々としているが、同時に非現実を見たというようなある意味では恐怖とも呼べる色を浮かべている。
「ちょ、痛いです……」
アルティはとうとう痛みが我慢の限界を超え小さく声を出す。
なんとかその声は使者に届いたらしく、彼は申し訳ないと一礼しアルティの肩から手を離した。
「まったく、人間という種族はどうしてこうも身勝手なのじゃ。悠久の眠りからワシを呼び起こした挙句、無視して話を進めておるわい」
「しゃ、喋った⁉︎」
周りの人間はドラゴンの起こした行動に戸惑いを隠せていない。ドラゴンの甲高い声は部屋中に響き渡り、その存在感を誇示していた。
しかしドラゴンの方はそんなことに目もくれず甲高い声からは想像ができないほど流暢に話し、小さな羽をパタパタと動かし浮遊を始める。
どうやらドラゴンは自身の扱いに対し不満を覚えているらしい。
それを見たアルティはドラゴンに目線を合わせ、大きくつぶらな瞳を見つめる。
「なんじゃお主は……ふむ、どうやらワシを呼び起こしたのはお主のようじゃな」
ドラゴンはアルティを見つめ返し、自身の召喚者が彼女であることを告げるも、当のアルティは全く聞いておらず満面の笑みを浮かべている。
「か……」
「か?」
「かわいい!」
相変わらずな態度の竜に対しアルティは甘い声を上げながらその小さい体を目いっぱい抱きしめる。
そしてドラゴンの頭や角や羽を矢継ぎ早に撫で始める。
「の、のおおおおおお!」
ドラゴンは形容しがたい声を上げながらジタバタと抵抗しているが、アルティの愛撫はとどまることを知らず、次第にドラゴンもその絶妙な力加減の感覚に身を委ねている。
こうなると、ただのぬいぐるみと変わらないように見えてしまうのも無理がない。
「本当に私がドラゴンさんを召喚したのね!」
アルティは嬉々とした表情を浮かべ抱きかかえているドラゴンに話しかける。
自身を撫でる手が止まったことが少し不満なのかドラゴンは少し眉間にしわを寄せ口を開いた。
「ん……むふぅ、そうじゃ。正真正銘、ワシはお主のエイネンに繋がれて現界へと繋げられておる……ふにゃあ」
ドラゴンがそう説明した後アルティがまた愛撫を始めると同時にその顔が砕ける。
それを聞いていた使者はドラゴンとアルティの様子に戸惑いを隠せていないようではあるが、召喚されたドラゴンが言うからには確実と口を開く。
「うむ。極めて稀な例ではあるが協力者の召喚に成功したということ、そなたにエイネンの適合があるとみて間違いない。よって、アルティ=ノーラをエイネン適合者として王立エイネリア騎士団の訓練生としての資格を与える」
その言葉を聞いて一番喜んだのはアルティではなく、親友のリリーだった。
「アルティちゃんやったね、私たちまた一緒の学校にいけるんだ! 本当に良かった適合おめでとう!」
リリーは、喜びで目を輝かせながら、ブロンドのおさげを揺らしアルティに飛びついた。その顔には安心と嬉しさが満ち溢れていた。
「よかった……本当に良かった。アルティ、おめでとう」
アルティの両親は目を潤ませながら、心からの安堵と誇りを感じていた。
父は固く握りしめた拳を胸に当て、母は静かに涙を拭いながら、娘の成長を見守っていた。
「ありがとう、お父さんお母さん、リリーちゃん。ドラゴンさんも」
そう言ってアルティはドラゴンを抱きしめる力をさらに強くする。
「の、のほおおおおおお」
アルティとリリーの両名に抱きつかれ、静かではなかったのは召喚者に抱かれるドラゴンのみだった。
アルティがそう叫びながら使者の持つ結晶に手をかざし力を込める。その瞳には、今までの辛い日々と、どうしてもエイネリアとして認められたいという強い決意が宿っていた。
これで何も起きなければエイネリアになることは二度とできない。それはエイネンに選ばなかった普通の人間として生きていくということ。
彼女はそれを望んでいない。親友と一緒にエイネリアとなり人のために生きていく人生を送りたい。
これが最後のチャンス。
そう思った瞬間、結晶は徐々に淡い光を放ち始め、次第にその輝きは強さを増し、まるで生きているかのように脈打っていた。
アルティの心臓もその光と共に高鳴り、部屋中が神聖な雰囲気に包まれていく。
周りにいたアルティの両親や親友のリリー、そして騎士団からやってきていた使者は光に視界を奪われる。
また突然のことに使者は手にもっていた結晶をアルティの足元に落としてしまった。
光は次第に強さを増し木造の家の隙間から光が漏れるほどに輝きを放つ。
「いったい何が起こったというのだ」
使者は経験した事がない事態に間抜けな声を上げている。
「アルティ、大丈夫か?」
「アルティちゃん! 怪我はない!?」
アルティの父、そしてリリーがアルティのいた方へ尋ねる。
「私は大丈夫だよ。それにこの光。なんだか暖かくて安心するんだ」
アルティがそう答えると部屋にあったどよめきが小さくなる。
光が放つ安心感を皆も感じることが出来たらしい。
そうしているうちに光は次第に弱まり、皆が目を開く。
と、そこには信じられない光景が待ち受けていた。
「誰じゃワシのことを無理やり呼び出したのは……」
焦げ茶色の鱗に小さな翼を持ったドラゴンの幼体が結晶のあった場所に座り、欠伸をしている。
見た目はぬいぐるみのようだが、その態度には威厳とわずかな苛立ちが見え隠れしていた。
「こ、これは……召喚したのか? 君が、ドラゴンを!?」
使者は目の前で起きた信じられない現象に冷静さを欠いており、うろたえながらアルティの肩を掴みその小さな体を強く揺らし始める。
アルティは肩を握る力の強さに痛みを覚え苦悶の表情を浮かべるが使者はそれに気づかず彼女の肩を揺らし続けている。
その表情は嬉々としているが、同時に非現実を見たというようなある意味では恐怖とも呼べる色を浮かべている。
「ちょ、痛いです……」
アルティはとうとう痛みが我慢の限界を超え小さく声を出す。
なんとかその声は使者に届いたらしく、彼は申し訳ないと一礼しアルティの肩から手を離した。
「まったく、人間という種族はどうしてこうも身勝手なのじゃ。悠久の眠りからワシを呼び起こした挙句、無視して話を進めておるわい」
「しゃ、喋った⁉︎」
周りの人間はドラゴンの起こした行動に戸惑いを隠せていない。ドラゴンの甲高い声は部屋中に響き渡り、その存在感を誇示していた。
しかしドラゴンの方はそんなことに目もくれず甲高い声からは想像ができないほど流暢に話し、小さな羽をパタパタと動かし浮遊を始める。
どうやらドラゴンは自身の扱いに対し不満を覚えているらしい。
それを見たアルティはドラゴンに目線を合わせ、大きくつぶらな瞳を見つめる。
「なんじゃお主は……ふむ、どうやらワシを呼び起こしたのはお主のようじゃな」
ドラゴンはアルティを見つめ返し、自身の召喚者が彼女であることを告げるも、当のアルティは全く聞いておらず満面の笑みを浮かべている。
「か……」
「か?」
「かわいい!」
相変わらずな態度の竜に対しアルティは甘い声を上げながらその小さい体を目いっぱい抱きしめる。
そしてドラゴンの頭や角や羽を矢継ぎ早に撫で始める。
「の、のおおおおおお!」
ドラゴンは形容しがたい声を上げながらジタバタと抵抗しているが、アルティの愛撫はとどまることを知らず、次第にドラゴンもその絶妙な力加減の感覚に身を委ねている。
こうなると、ただのぬいぐるみと変わらないように見えてしまうのも無理がない。
「本当に私がドラゴンさんを召喚したのね!」
アルティは嬉々とした表情を浮かべ抱きかかえているドラゴンに話しかける。
自身を撫でる手が止まったことが少し不満なのかドラゴンは少し眉間にしわを寄せ口を開いた。
「ん……むふぅ、そうじゃ。正真正銘、ワシはお主のエイネンに繋がれて現界へと繋げられておる……ふにゃあ」
ドラゴンがそう説明した後アルティがまた愛撫を始めると同時にその顔が砕ける。
それを聞いていた使者はドラゴンとアルティの様子に戸惑いを隠せていないようではあるが、召喚されたドラゴンが言うからには確実と口を開く。
「うむ。極めて稀な例ではあるが協力者の召喚に成功したということ、そなたにエイネンの適合があるとみて間違いない。よって、アルティ=ノーラをエイネン適合者として王立エイネリア騎士団の訓練生としての資格を与える」
その言葉を聞いて一番喜んだのはアルティではなく、親友のリリーだった。
「アルティちゃんやったね、私たちまた一緒の学校にいけるんだ! 本当に良かった適合おめでとう!」
リリーは、喜びで目を輝かせながら、ブロンドのおさげを揺らしアルティに飛びついた。その顔には安心と嬉しさが満ち溢れていた。
「よかった……本当に良かった。アルティ、おめでとう」
アルティの両親は目を潤ませながら、心からの安堵と誇りを感じていた。
父は固く握りしめた拳を胸に当て、母は静かに涙を拭いながら、娘の成長を見守っていた。
「ありがとう、お父さんお母さん、リリーちゃん。ドラゴンさんも」
そう言ってアルティはドラゴンを抱きしめる力をさらに強くする。
「の、のほおおおおおお」
アルティとリリーの両名に抱きつかれ、静かではなかったのは召喚者に抱かれるドラゴンのみだった。
1
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる