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王都フラシュ
殲滅しました
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「……助かった」
「うん!」
ルカに感謝を述べるエミリアの瞳からは幾分激情の色は薄れていた。本気の一撃をブチかました事で多少感情が落ち着いてきていた。
「敵はまだ多いぞ」
「分かってる!」
エミリアはルカの目を見て言い、ルカも彼女の目を真っ直ぐ見て頷いた。
一度背中を合わせて広場と周囲を警戒すると、建物の影に逃れたり、魔物を幾重にも盾にして雷槌の直撃を避け生き延びた魔物たちが次第に集結しつつあった。
「グエ、グエ……女だ」
民家の屋上から這い出てくるカエルの化物。通りを駆け回る二つ頭の狼。中身が空っぽの頭部を失った甲冑デュラハン。ほぼ全裸で色気を振りまくサキュバス。
その他大勢の生き延びた魔族が広場へ押し寄せてくる。
下劣な声と視線を向けながら這い寄る巨大なリザードの首をエミリアの剣が石畳へ串刺しにする。
「一匹も……生かしてはおかんぞ!」
手首を捻ると首を刎ねられたリザードの恨みがましい目をした頭を踏み砕いた。
彼女は怒りの全てをまだ吐き出せてはいない。なのでぶつける対象が続々と大挙してくることは好都合であった。
エミリアの剣が振るわれる毎に魔物の数が減っていく。彼女が得手とする広範囲高威力の魔法剣は広場で戦うルカを巻き込む危険があるので封じているが、斬れ味鋭い斬撃は魔法を宿していなくても一太刀で確実に敵を仕留めていた。
「はあッ!」
魔物を縦一文字に斬り捨てたエミリアに背後から襲いかかるダークウルフ。俊敏な動きで一気に間合いを詰めた魔獣は彼女の首筋に鋭い牙を突き立てる。
だが牙がエミリアの肌を裂くより早く、獣が飛びかかるより疾く、ルカの足蹴りがダークウルフの首を吹き飛ばした。
「ほっ、とっ」
ルカはそのまま動きを止めることなく広場を縦横無尽に駆け回り、進路にいる魔族を次々に薙ぎ倒していく。
時折、ルカが吹き飛ばしたモンスターの一部がホイムの横を掠めていく。
「圧倒的だなあ……」
二人に敵う相手はいない。このままホイムが何もしなくても広場を制圧されることはない。
しかしながら如何せん数が多い。時間を浪費してしまえば城への突入が遅くなり魔人に猶予を与えることになるし、先行したアカネのことも気になる。
幸いなことに保護した五名は気を失っているものの落ち着いた様子であり、傷も癒やした以上もうホイムにできることはない。
「さて」
ルカとエミリアにばかり戦ってもらっていたが、ようやく彼も動き出す。
数十か百……見えないところにまだいるかもしれないが、ひとまずはそれくらいの数であろう。
門を破壊した時と同様に両手に魔力を込める。
小さな回復術士の動きに気付いたかどうかは定かではないが、ルカとエミリアの猛攻の隙を縫って突出した複数のグリフォンが嘴や爪を煌めかせて急降下してくる。
様子に気付いた二人であったが、援護が必要ない事は彼の放つ魔法を見てすぐに悟った。寧ろ、ホイムの攻撃が彼女たちの援護となったのだった。
「デュアルキュア【多重追矢】!」
合掌した腕を左右に開くと同時に呪文を唱えれば、両掌から無数の光の帯が拡散する。
ただ単にホイムの手から飛び出したわけではない。その光一つ一つが意志を持つように急激に向きを変え、ホイム目がけて襲いかかっていたグリフォンは勿論、広場にてルカとエミリアが相手をしていた大勢の魔物だけを狙い雨霰のように降り注いで貫いた。
広範囲に渡り敵だけを狙い撃つマルチロックチェイスアロー。普通の術士が使えば膨大な魔力を消費する術も、ホイムにかかればキュア二回分の魔力で済む省エネ魔法と化す。
「……ひとまず目につく敵は全部片付いたと思います」
ホイムの言う通り、広場に見える範囲で動いている魔族は一匹たりともいなかった。
ピョンとホイムの傍に跳んで戻ってきたルカは目をキラキラさせている。
「今の流れ星みたい! もう一回やって!」
「敵がいないとできないよ……」
初めて見た魔法をリクエストするルカに困った表情を浮かべるホイムのもとに、階段を上がってきたエミリアが納刀しながら声をかける。
「今ので大分早く片付いた」
暴れたことで感情が落ち着いたか、エミリアの瞳に宿っていた怒りの色は幾らか薄らいでいたが、並んで横たわっている騎士団の女性たちに視線が落ちた時には酷く悲壮な色が顔に表れていた。
「すぐにお城へ向かいたいところですが」
「……このまま放っておくわけにはいくまい」
ようやく保護できた彼女たちを野外に晒したままにしておくことはできない。まだ魔族の一部が闇の中から機会を伺っているかもしれない。せめて姿を隠せる屋内にでも運び入れておきたいという想いがあった。
「んん……? ん? んん? ホイムホイム!」
どうしたものかと思案していたホイムの頭をルカがペチペチ叩いてくる。
何事かと顔を上げたホイムがルカの指し示す方を見ると、広場へと駆けつけてくる数名の人影があった。
敵意を持った魔族ではなく、屋内に身を潜めていた町に住む女性たちであった。
「うん!」
ルカに感謝を述べるエミリアの瞳からは幾分激情の色は薄れていた。本気の一撃をブチかました事で多少感情が落ち着いてきていた。
「敵はまだ多いぞ」
「分かってる!」
エミリアはルカの目を見て言い、ルカも彼女の目を真っ直ぐ見て頷いた。
一度背中を合わせて広場と周囲を警戒すると、建物の影に逃れたり、魔物を幾重にも盾にして雷槌の直撃を避け生き延びた魔物たちが次第に集結しつつあった。
「グエ、グエ……女だ」
民家の屋上から這い出てくるカエルの化物。通りを駆け回る二つ頭の狼。中身が空っぽの頭部を失った甲冑デュラハン。ほぼ全裸で色気を振りまくサキュバス。
その他大勢の生き延びた魔族が広場へ押し寄せてくる。
下劣な声と視線を向けながら這い寄る巨大なリザードの首をエミリアの剣が石畳へ串刺しにする。
「一匹も……生かしてはおかんぞ!」
手首を捻ると首を刎ねられたリザードの恨みがましい目をした頭を踏み砕いた。
彼女は怒りの全てをまだ吐き出せてはいない。なのでぶつける対象が続々と大挙してくることは好都合であった。
エミリアの剣が振るわれる毎に魔物の数が減っていく。彼女が得手とする広範囲高威力の魔法剣は広場で戦うルカを巻き込む危険があるので封じているが、斬れ味鋭い斬撃は魔法を宿していなくても一太刀で確実に敵を仕留めていた。
「はあッ!」
魔物を縦一文字に斬り捨てたエミリアに背後から襲いかかるダークウルフ。俊敏な動きで一気に間合いを詰めた魔獣は彼女の首筋に鋭い牙を突き立てる。
だが牙がエミリアの肌を裂くより早く、獣が飛びかかるより疾く、ルカの足蹴りがダークウルフの首を吹き飛ばした。
「ほっ、とっ」
ルカはそのまま動きを止めることなく広場を縦横無尽に駆け回り、進路にいる魔族を次々に薙ぎ倒していく。
時折、ルカが吹き飛ばしたモンスターの一部がホイムの横を掠めていく。
「圧倒的だなあ……」
二人に敵う相手はいない。このままホイムが何もしなくても広場を制圧されることはない。
しかしながら如何せん数が多い。時間を浪費してしまえば城への突入が遅くなり魔人に猶予を与えることになるし、先行したアカネのことも気になる。
幸いなことに保護した五名は気を失っているものの落ち着いた様子であり、傷も癒やした以上もうホイムにできることはない。
「さて」
ルカとエミリアにばかり戦ってもらっていたが、ようやく彼も動き出す。
数十か百……見えないところにまだいるかもしれないが、ひとまずはそれくらいの数であろう。
門を破壊した時と同様に両手に魔力を込める。
小さな回復術士の動きに気付いたかどうかは定かではないが、ルカとエミリアの猛攻の隙を縫って突出した複数のグリフォンが嘴や爪を煌めかせて急降下してくる。
様子に気付いた二人であったが、援護が必要ない事は彼の放つ魔法を見てすぐに悟った。寧ろ、ホイムの攻撃が彼女たちの援護となったのだった。
「デュアルキュア【多重追矢】!」
合掌した腕を左右に開くと同時に呪文を唱えれば、両掌から無数の光の帯が拡散する。
ただ単にホイムの手から飛び出したわけではない。その光一つ一つが意志を持つように急激に向きを変え、ホイム目がけて襲いかかっていたグリフォンは勿論、広場にてルカとエミリアが相手をしていた大勢の魔物だけを狙い雨霰のように降り注いで貫いた。
広範囲に渡り敵だけを狙い撃つマルチロックチェイスアロー。普通の術士が使えば膨大な魔力を消費する術も、ホイムにかかればキュア二回分の魔力で済む省エネ魔法と化す。
「……ひとまず目につく敵は全部片付いたと思います」
ホイムの言う通り、広場に見える範囲で動いている魔族は一匹たりともいなかった。
ピョンとホイムの傍に跳んで戻ってきたルカは目をキラキラさせている。
「今の流れ星みたい! もう一回やって!」
「敵がいないとできないよ……」
初めて見た魔法をリクエストするルカに困った表情を浮かべるホイムのもとに、階段を上がってきたエミリアが納刀しながら声をかける。
「今ので大分早く片付いた」
暴れたことで感情が落ち着いたか、エミリアの瞳に宿っていた怒りの色は幾らか薄らいでいたが、並んで横たわっている騎士団の女性たちに視線が落ちた時には酷く悲壮な色が顔に表れていた。
「すぐにお城へ向かいたいところですが」
「……このまま放っておくわけにはいくまい」
ようやく保護できた彼女たちを野外に晒したままにしておくことはできない。まだ魔族の一部が闇の中から機会を伺っているかもしれない。せめて姿を隠せる屋内にでも運び入れておきたいという想いがあった。
「んん……? ん? んん? ホイムホイム!」
どうしたものかと思案していたホイムの頭をルカがペチペチ叩いてくる。
何事かと顔を上げたホイムがルカの指し示す方を見ると、広場へと駆けつけてくる数名の人影があった。
敵意を持った魔族ではなく、屋内に身を潜めていた町に住む女性たちであった。
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