上 下
90 / 297
第4章 白仮面編

第90話「バレる秘密」

しおりを挟む
放課後の風紀委員室で、若月達に、白仮面を捕まえたことと、その経緯を話した守里。



守里: それで、話を戻しますけど。


若月: まだ何かあるのか?


櫻宮: 下手なこと言うと、また美月火山が噴火するよ笑


美月: ジーー


守里: だ、大丈夫だと思います。


若月: で、何なんだ?


守里: 例の集会がいつどこで行われるか、なんですけど、その情報を得られるかもしれない場所が1つあります。


櫻宮: え?どこ。


守里: 三高です。


美月: っ!!…


若月: 確かに、西条を薬に誘ったのは、三高の奴だったが…


守里: 正確には、三高の生徒の江口誠です。


若月: ほう…


櫻宮: 誰?


守里: 鴨田良介君に薬の購入を勧めた人物です。


櫻宮: でも、それだけだったら、被害者の可能性が高いし、白仮面の情報なんて持ってないと思うけど。


守里: 問題は、良介君に薬を勧めた日付です。それが、白仮面が薬の取引をし始めた日と、全く同じなんです。


若月: ということは、鴨田君は白仮面の第1の被害者の可能性が高く、その江口は白仮面の仲間の可能性が高いと?


守里: はい。


櫻宮: なるほどね~


若月: じゃあ、三高に乗り込まないとだな。


守里: え?何もそこまでしなくても…


若月: いや、直接学校に行った方が簡単で、確実でしょ。


櫻宮: まぁ良いんじゃない?話を聞くだけ、ならね。


若月: 分かってるって。だから今回は血の気の多いやつらは連れてかないよ。葵波とか愛衣とか。あと…



若月は壁に背をつけ、腕を組んで話を黙って聞いていた梅澤を見る。



梅澤: 私は行きますから。


若月: え?


櫻宮: …大人しくできる?


梅澤: はい。


若月: はぁ…最近は変わってきたから、別に大丈夫か。頼んだよ、梅。


梅澤: もちろんです。


櫻宮: じゃあ、梅ちゃんは決定で、あとは若月も決定ね。それと、守里も。


若月: うん。


守里: はい。


櫻宮: あとは…美月、行ける?


美月: …


守里: 美月?


美月: …行けます。


櫻宮: 無理はしなくて良いからね。


美月: 大丈夫です。


守里: …あっ…



そういえば、美月をいじめてた奴らは、三高だったか。

だから、美月は…



守里: 美月、本当に大丈夫なんだね?


美月: うん…


守里: そうか…



美月の意思は固そうだ。

立ち向かおうとしてるんだな。



若月: 今のところ、4人だが…


櫻宮: それぐらいで良いんじゃない?何も殴り込みに行くわけじゃないし。学校の方から連絡は通すし。


若月: まぁそうだな。


守里: …いや、あと2人ぐらい巻き込んじゃいましょう。


若月: 2人?どういうこと?



守里は扉の方に向かう。



守里: おそらく、ずっと聞き耳を立ててた、この2人ですよ。



ガラガラ!!


扉を勢いよく開けると…



「うわっ」


「ヤバい!」



教室に2人が倒れ込む。



若月: 珠美と優太じゃないか。


珠美: もう!守里先輩ヒドイですよ!!


守里: いや、聞き耳立ててた方が悪いから笑


新里: すみません!!聞くつもりは無かったんですが、見回りの報告に来たら、先輩方が話し込んでたので、後にしようと僕は思ったんですけど、珠美が…


珠美: 最近、ずっと珠美達に隠し事してるから、どうしても聞きたくて!!


若月: はぁ…


櫻宮: よし、珠美と新里君も行こう。


珠美: ほんとですか?!やった!!


新里: マジすか…


守里: うん。一緒に頑張ろう笑


珠美: はい!!!!


新里: はい。


若月: 1年生を連れて行くのか…


櫻宮: 気が進まない?でも、結構話を聞いちゃったみたいだし、このまま隠し続けると、珠美は何するか分からないよ。


若月: …まぁ、そうだな。私も梅もいるし、なんとかなるか。


珠美: 絶対に邪魔になるようなことはしませんから!!


新里: 役に立って見せます!!


若月: 分かった。三高にはこの6人で行く。学校の都合にもよるが、来週の月曜日の昼に訪問しようと思ってるから、そのつもりで頼んだぞ。


梅澤: うっす!


美月: はい!


珠美: はい!!!


守里: 了解です。


新里: 分かりました。


櫻宮: なら、私は早速、職員室に行ってこようかな。


若月: 私も行くよ。みんな、今日はこれで解散。



そうして、櫻宮と若月が風紀委員室を出て行く。



珠美: 他の学校に乗り込むなんて、ワクワクしますね!!


新里: いや、話を聞きに行くだけだから。


梅澤: …でも、三高はかなり治安が悪いから、やり合う展開になるかもしれないぞ。


新里: それはよく聞きますけど、実際のところ、どんな感じなんですか?


守里: う~ん…全校生徒の内、3分の1がヤンチャって感じかな。


珠美: あぁ!!梅澤先輩みたいな人がいっぱいいるってことですね!!!!


新里: っ!!!!ちょっ、珠美!!


守里: 笑


梅澤: …まぁ、あながち間違ってねぇよ。昔はよく三高の奴らとやり合ってたからな。


珠美: やっぱ、梅澤先輩って強いんですね!!!頼もしいです!!


梅澤: ///チッ、そんなんじゃねぇよ。



褒められると照れる香蓮は、真っ直ぐ人を褒める珠美には、弱いだろうな笑



梅澤: それに、私はそんな強くねぇ。


守里: ?



まだ、アンチ達に負けたことを引き摺ってるのか?



珠美: いえ、少なくとも珠美達よりは強いんですから、頼もしいことには違いないです!!!ね、優太!!


新里: は、はい。すごく頼もしいです!!


梅澤: そ、そうかよ。ならあんまチョロチョロすんじゃねぇぞ。


珠美: はい!!


美月: …


守里: ねぇ、美月。今から櫻宮さんと若月さんに、行けないって言っても良いんだよ。


美月: …大丈夫。私はもう伊衛能高校の2年、風紀委員で、守里の家族なんだから。


守里: やっぱり、美月はすごいな。勇気ある1歩をちゃんと踏み出してる。


美月: 笑、何言ってるの?それは、守里もでしょ。


守里: …いや、僕は…


梅澤: おい、守里。



守里の言葉を梅澤が遮る。



梅澤: ちょっと、ついてこい。


守里: え?



そう言って、梅澤が風紀委員室を出て行く。



美月: ほら、守里。呼ばれてるよ!


新里: 行かないと、何されるか分かんないですよ!


珠美: 守里先輩!ファイティン!!


守里: う、うん。



背中を押され、守里は梅澤の後を追った。




特別教室校舎屋上



梅澤: ここなら、誰も来ないだろう。


守里: それで、何なの?



守里と梅澤は、昼に守里が来た場所へとやって来る。



梅澤: 単刀直入に聞く。お前と防衛団の関係はなんだ?


守里: …



え、なんで、香蓮が防衛団のことを?


守里は驚きの感情を、なんとか顔に出さずに抑え込む。


いや、そんなことよりも、とにかく誤魔化さないと。


防衛団の存在が、香蓮に知られたことは、もうどうしようもない。


だけど、僕と防衛団に関わりがあることを知られるのはマズい。

香蓮が他の誰かに喋るとは思ってないけど、こういうのは、知ってる人が少なければ少ないほど良いから…



守里: 防衛団?なんのこと?


梅澤: …まず、私はお前に謝らないといけない。


守里: ?


梅澤: この前の見回りの時に、勝手に携帯を見て、お前が白仮面を捕まえに行くのについて行ってた。


守里: っ!!!



ということは、僕が森田さん達と一緒にいるのを見られてたのか。



梅澤: そこで、敵が守里と一緒にいた人達のことを、防衛団と言っていたのを聞いたんだ。すまなかった。


守里: …



これは、誤魔化しようがないか…


香蓮1人になら、言っても大丈夫なはず。

元々、ずっと誰にもバレずに、隠し通せるとは思ってなかったからな…

しっかりと口止めをすれば、なんとかなる。


守里が覚悟を決め、話そうとした瞬間…



梅澤: …いいや。やっぱ、答えなくていい。



守里の表情を、じっと見ていた梅澤がそう言う。



守里: え?


梅澤: 誰にでも秘密はあるからな。私もこのことは黙っとく。


守里: …ありがとう。


梅澤: 笑、1つ言うと、私は防衛団に大きな恩があるんだよ。だから、いつか、その恩を防衛団に返せたらと思っているんだ。


守里: …


梅澤: まっ、その恩については、秘密だけどな。じゃ、今度頑張ろうぜ。



そう言って、梅澤は屋上を去る。



守里: はぁ~緊張した…



屋上を囲む柵に手をかける。


まさか、つけられてたとは。

集中してて、全く気づかなかった。


でも、あの言い方だと、あの現場を見るよりも前に、防衛団のことは知ってたみたいだ。

恩があるとも言ってたし。


香蓮と一緒になって、もう2週間ぐらい経つけど、あんまり香蓮の昔のことは知らないな…

好きな食べ物とか、大食いなこととか、意外と照れ屋ってことは、分かったけど。

過去のことは、話したくなさそうだし、僕らもわざわざ聞かないから…

それが、僕が踏み込んでいいところなのかは、分からないし…


でも、もっと仲良くなりたいよな。

いつまで、一緒に見回りするかは分からないけど、僕も一緒にやってて楽しいし、美月も楽しそうだし。

ちょっとずつ、近づいていければ良いか。



守里: まぁでも…



柵から手を離し、扉の方を向く。



守里: まずは、この件を片付けてからだ。




to be continued


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。

春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。 それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。 にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...