12 / 25
第一部
第12話「新人魔現師の戦い 3」
しおりを挟む
「おっと!」
ボンッ!
中衛である人族の瑞葉楓が、前衛である小人族の向井汐を助けるために放った、3つの水の刃を、後退しつつ、先程と同じぐらいの火で打ち消す。
「ん……さっきのよりも弱い……なるほど。速度と強度が反比例してるのか。」
と、千躰が楓の水の刃を分析している間に…
「まだ諦めるには早いよ!私が援護するから!パッパと体勢を立て直して攻撃して!」
「う、うん!」
「あと、あなたはどんなことをするの?教えて。」
「分かった。」
リタイア宣告をされかけた向井を励まし、後衛で杖を構えている鳥人族の吉田来栖に質問を擦る。
「今、私がやろうとしていることは範囲デバフで、場合によっては、千躰さんの動きを完全に封じることができるかもなんだけど、発現までに時間がかかるの。」
「ターゲットの指定は?」
「できないから、私の発現の時には、千躰さんから離れて欲しい。」
「了解。いけるなら合図を。」
「OK。時間稼ぎ頼んだよ。」
聞きたいことを聞けた楓は、向井の援護に集中し、伝えたいことを伝えられた吉田は、楓の後ろで杖を構え、魔力の操作に集中する。
「はぁ!てりゃ!とぉ!」
声を出しながら、向井は千躰に向かって大斧を振り回す。
ブンッ!!ブンッ!!ブンッ!!
ズドンッ!!
大斧を着地させて、向井が次の連撃へと移行する間に、楓が短剣を振る。
ビュンッ!!ビュンッ!!ビュンッ!!
迫り来る大斧を華麗に避け、反撃のタイミングを伺う千躰は、飛んでくる高速の水の刃を簡単に打ち消し、再び振るわれる大斧を回避する。
別にやろうと思えば、炎を纏わせた棒を地面に叩きつけ、爆発させることで、向井と無理やり距離を取り、先に楓と吉田を倒しにかかることもできるのだが、全員の実力を見ておきたい千躰は、それをしない。
向井は、いつまで大斧を振り続けられるのか、持っている天能は実際にはどんなものなのか。
楓は、他にできることがないのか。
吉田は、何を準備しているのか。
これらのことを探るために、千躰は今の状況を保ち続ける。
「くっ…」
「う~ん、連撃のパターンが全部出ちゃったかな。」
と、向井の攻撃が完全に見切られてしまったところで…
「いけるよ!!」
吉田の声が響いた。
「千躰さんから離れて!!」
続いて、楓の指示も聞いた向井は、千躰の傍から跳び、楓の隣に着地する。
それを確認した吉田は、およそ1分かけて準備した現象を引き起こした。
「やっとか笑……さて、何が起こるの……っ!!」
演習場の中心から半径およそ20mの円の領域が白く光る。
その領域内にいた千躰が持っていた棒は、右手から落ち…
ゴンッ!
着地と同時に大きな音を鳴らす。
「ふぅ…良かった。当たりを引けたみたい。」
そんな千躰の様子を見て、吉田はそう言って安堵の表情になった。
「これは……重力の増加……いや、空気自体に圧迫感を感じるというか、圧力が増したような……」
自分の体が動かしにくくなっていることと、若干の呼吸のしずらさ、胸に感じる圧迫感から、今起きている現象、吉田の天能の力を分析し……
「ま、いいや。あの子の力も見ることができたし。後ろもあるから、終わらせちゃおう。」
終わる前に、模擬戦を終わらせることを決心した千躰は、身体能力強化をさらに強める。
「2人とも、領域内に入らないように攻撃して。多分、重くなってるから、発現なら強度はかなり高めで。」
「分かった。やるよ!」
「うん!」
吉田の指示を受けて、楓は短剣に水を纏わせ、向井は大斧を投げつけようと構える。
が…
「ワンテンポ遅かったね笑」
その小さな呟きの間に、棒を拾って地面を蹴った千躰が、領域を抜け出して、固まっている3人の元へと移動した。
「なっ!」
「はっや…」
「うそ……重くなってたはずなのに…」
「笑、あのぐらいじゃ、一瞬だけしか動きは止められないよ。ってことで、降参?それともまだやる?」
という千躰の言葉に、3人はそれぞれの反応を示した。
「…」
「ど、どうする?」
「やります!」
楓は黙り込み、吉田は周りを見て、向井はすぐにやる気を見せる。
「そっか。2人は?」
「……私もやります。」
「じゃあ私も。」
「笑、良いね。なら、再開ってことで!!」
その後、再び戦いが始まったものの、模擬戦を終わらせる方向にシフトした千躰に、3人が敵うわけもなく、10秒も経たないうちに、地面に倒れるか、優愛に受け止められるかされたのだった。
「いや~見応えのある試合だったね。」
「だね。3人ともちゃんと自分の役割を分かってた。」
観客席から勇輝と共に模擬戦を見ていた刀花と未良が、その感想を言う。
「何より、人族の子の動きが良かったよ。前衛と後衛の間を取りまとめつつ、前衛の援護と後衛の攻撃までの時間稼ぎを行う。どこかで魔現師達が戦ってるのを見たか、学んだのかな。」
「うん。勇輝、今さっきの模擬戦はしっかりと覚えといてね。あれが魔現師の本来の戦い方だから。」
「本来の戦い方?」
「そう。魔現師はそれぞれに得意分野を持ってるから、チームで動くことが多いの。魔物と戦う時も、探索をする時も。で、魔物や敵と戦う時には今さっきみたいに、近距離攻撃を仕掛けたり、敵の攻撃を受け止める前衛、前衛の援護や、後衛の手助けを行う中衛、遠距離攻撃をしたり、味方の補助を行う後衛、って感じで役割分担をするんだ。」
「なら、1人で戦うことは無いんですか?」
「そりゃあ、場合によってはあるよ。なんなら、人によっては1人で戦う方が良いって言う人も、1人でそれらの役割全てを担える人もいるからね。」
「へぇ~」
「笑、その、1人で全部の役割を担える人っていうので、1番分かりやすい例は、未良だよ。」
「あ、確かに。ピージョとかオルジイさん、ドラさんと一緒に戦えば、他の魔現師と一緒に戦うのと同じですもんね。」
「まぁね。」
「ほんと、未良がいれば依頼が楽になって、助かるんだ笑」
「それはお互い様でしょ笑」
「え、そう?笑」
と、笑い合う2人を見ながら、仲良しだな~と思いつつ、勇輝は再び舞台に視線を戻す。
「よし、次にいくよ。」
模擬戦を終えた3人が、観客席に座ったのを見て、千躰がそう言う。
「ねぇ、そろそろ交代しない?連火も少しは疲れてるだろうし。」
と、3戦連続で戦おうとする千躰を、優愛が止めた。
「別に全然大丈夫だけど……そうだね。交代した方が良いか。」
「うん。さ、連火はこっちに座って。」
「笑、分かったから。」
そうして、位置を入れ替わるように、千躰は観客席に座り、優愛は舞台の中央に立つ。
「じゃ、次に戦う人を呼ぶよ!まずは、"騎道美波"ちゃん!あと、"岩本天弥"君と"岩本輝愛"ちゃん!」
「はい。」
「おう!」
「はーい!」
優愛に名前を呼ばれて、長剣を背負った長身の人族の女性…騎道美波はゆっくりと堂々とした足取りで。
虎のような丸い耳と尻尾、頬に黒い縞模様が入っている獣人族、"虎人族"の兄妹…岩本天弥と岩本輝愛は、元気よく返事をして観客席から舞台にジャンプした。
「よっしゃ!やっと出番だ!」
「え~優愛さん!なんでバカ兄貴と一緒なんですか!」
「なっ…それはこっちのセリフだ!」
「はぁ?」
「ちょっと、喧嘩はやめてよ~」
喧嘩をする兄妹を、困った表情の優愛が止めようとするが…
「マジで妹の癖に生意気なんだよ!」
「たった1つしか変わらないのに、偉そうに言っちゃって、ダッサ!」
言い合いを止める様子が全くない。
「この前から兄妹喧嘩が激しいとは思ってたけど……どうしよう…」
「はぁ……」
そんな状況を見て、優愛の次の指示を黙って待っていた騎道が、痺れを切らした。
「2人ともやめなさい!!」
「「っ!!は、はい!」」
強烈なプレッシャーと共に発せられた大声に、喧嘩をしていた2人は驚き、咄嗟に返事をする。
「ここまで来て喧嘩をするな。誇りある虎人族の名が廃るぞ。」
「「す、すみません…」」
騎道の言葉で、兄妹は大人しくなり、優愛は安心した表情になる。
「ありがとね、騎道ちゃん。」
「いえ。こちらこそすみません。」
「笑、真面目なんだね、騎道ちゃんは。」
「//…さ、早く始めましょう。」
「うん。3人とも準備は良い?」
「はい。」
騎道は背中から長剣を抜き、両手で持つ。
「はい!」
「もちろんだぜ!」
ビビっていた兄妹も、模擬戦が始まるということで、戦うことが好きな虎人族らしく、テンションを上げて、それぞれの得物を構えた。
「じゃ、連火!よろしく!」
「はいよ。では、模擬戦始め!」
という、千躰の合図を聞き、優愛は盾を構え、騎道はそんな優愛から一旦距離を取り、3人で作戦を立てようと考えていたのだが…
「さっきはダメなところを見せた分!ここで取り戻すぜ!!」
「優愛さん!覚悟ーー!!」
虎人族の兄妹は、笑顔で優愛に突っ込んで行った。
「嘘でしょ…」
「笑、元気が良いね。さぁ、かかって来い!」
「おりゃあ!!」
まずは、空中に跳び上がった天弥が、虎人族が持つ五指の爪を、優愛に振り下ろす。
それと同時に、輝愛は両手に持つ2本の短い槍の片方を、突き出した。
ガキンッ!!
優愛は、輝愛の槍を半身になることで避け、天弥の爪を盾で受け止めた。
「はぁぁ!!」
「オラオラオラァ!!」
それに構うことなく、天弥は優愛の周りを跳び回りながら、爪を振り下ろし、輝愛は天弥の体で死角になるところを、的確に槍で突いていく。
ガキンッ!!ガキンッ!!
「さすが兄妹。良い連携だね笑」
「全然!そんなこと!ないです!」
「連携じゃなくて!ただやりたいようにやってるだけだ!!」
絶え間なく攻撃を仕掛け、それを受けながら会話をする。
「じゃあ、連携のつもりがなくても、連携攻撃になっちゃうぐらいに息が合ってるんだよ。仲良しだね~笑」
優愛は本当に思ったことを笑顔で言っただけだったのだが、それは岩本兄妹の攻撃を単調にするような結果を生んだ。
「そんなんじゃねぇよ!!」
「仲良くないです!こんなヤツと!」
これまでは、お互いの隙を埋めるように攻撃を仕掛けていたのが、否定の言葉と共に同時攻撃を仕掛けてしまった。
「そうは見えないんだけどな~笑。仕切り直そっか。」
ガンッ!!!
優愛はそう言って、同時に盾に受けた爪と槍を弾き、天弥と輝愛を後方に飛ばす。
「くぅ~ダメか…」
「もう!バカ兄貴のせいだよ!」
「は?!ふざけんな!お前のせいだ!」
「違う!バカ兄貴のせい!」
と、着地した先で2人が言い合っていると…
「いい加減にしなさい!!」
舞台に騎道の声と波が広がった。
to be continued
ボンッ!
中衛である人族の瑞葉楓が、前衛である小人族の向井汐を助けるために放った、3つの水の刃を、後退しつつ、先程と同じぐらいの火で打ち消す。
「ん……さっきのよりも弱い……なるほど。速度と強度が反比例してるのか。」
と、千躰が楓の水の刃を分析している間に…
「まだ諦めるには早いよ!私が援護するから!パッパと体勢を立て直して攻撃して!」
「う、うん!」
「あと、あなたはどんなことをするの?教えて。」
「分かった。」
リタイア宣告をされかけた向井を励まし、後衛で杖を構えている鳥人族の吉田来栖に質問を擦る。
「今、私がやろうとしていることは範囲デバフで、場合によっては、千躰さんの動きを完全に封じることができるかもなんだけど、発現までに時間がかかるの。」
「ターゲットの指定は?」
「できないから、私の発現の時には、千躰さんから離れて欲しい。」
「了解。いけるなら合図を。」
「OK。時間稼ぎ頼んだよ。」
聞きたいことを聞けた楓は、向井の援護に集中し、伝えたいことを伝えられた吉田は、楓の後ろで杖を構え、魔力の操作に集中する。
「はぁ!てりゃ!とぉ!」
声を出しながら、向井は千躰に向かって大斧を振り回す。
ブンッ!!ブンッ!!ブンッ!!
ズドンッ!!
大斧を着地させて、向井が次の連撃へと移行する間に、楓が短剣を振る。
ビュンッ!!ビュンッ!!ビュンッ!!
迫り来る大斧を華麗に避け、反撃のタイミングを伺う千躰は、飛んでくる高速の水の刃を簡単に打ち消し、再び振るわれる大斧を回避する。
別にやろうと思えば、炎を纏わせた棒を地面に叩きつけ、爆発させることで、向井と無理やり距離を取り、先に楓と吉田を倒しにかかることもできるのだが、全員の実力を見ておきたい千躰は、それをしない。
向井は、いつまで大斧を振り続けられるのか、持っている天能は実際にはどんなものなのか。
楓は、他にできることがないのか。
吉田は、何を準備しているのか。
これらのことを探るために、千躰は今の状況を保ち続ける。
「くっ…」
「う~ん、連撃のパターンが全部出ちゃったかな。」
と、向井の攻撃が完全に見切られてしまったところで…
「いけるよ!!」
吉田の声が響いた。
「千躰さんから離れて!!」
続いて、楓の指示も聞いた向井は、千躰の傍から跳び、楓の隣に着地する。
それを確認した吉田は、およそ1分かけて準備した現象を引き起こした。
「やっとか笑……さて、何が起こるの……っ!!」
演習場の中心から半径およそ20mの円の領域が白く光る。
その領域内にいた千躰が持っていた棒は、右手から落ち…
ゴンッ!
着地と同時に大きな音を鳴らす。
「ふぅ…良かった。当たりを引けたみたい。」
そんな千躰の様子を見て、吉田はそう言って安堵の表情になった。
「これは……重力の増加……いや、空気自体に圧迫感を感じるというか、圧力が増したような……」
自分の体が動かしにくくなっていることと、若干の呼吸のしずらさ、胸に感じる圧迫感から、今起きている現象、吉田の天能の力を分析し……
「ま、いいや。あの子の力も見ることができたし。後ろもあるから、終わらせちゃおう。」
終わる前に、模擬戦を終わらせることを決心した千躰は、身体能力強化をさらに強める。
「2人とも、領域内に入らないように攻撃して。多分、重くなってるから、発現なら強度はかなり高めで。」
「分かった。やるよ!」
「うん!」
吉田の指示を受けて、楓は短剣に水を纏わせ、向井は大斧を投げつけようと構える。
が…
「ワンテンポ遅かったね笑」
その小さな呟きの間に、棒を拾って地面を蹴った千躰が、領域を抜け出して、固まっている3人の元へと移動した。
「なっ!」
「はっや…」
「うそ……重くなってたはずなのに…」
「笑、あのぐらいじゃ、一瞬だけしか動きは止められないよ。ってことで、降参?それともまだやる?」
という千躰の言葉に、3人はそれぞれの反応を示した。
「…」
「ど、どうする?」
「やります!」
楓は黙り込み、吉田は周りを見て、向井はすぐにやる気を見せる。
「そっか。2人は?」
「……私もやります。」
「じゃあ私も。」
「笑、良いね。なら、再開ってことで!!」
その後、再び戦いが始まったものの、模擬戦を終わらせる方向にシフトした千躰に、3人が敵うわけもなく、10秒も経たないうちに、地面に倒れるか、優愛に受け止められるかされたのだった。
「いや~見応えのある試合だったね。」
「だね。3人ともちゃんと自分の役割を分かってた。」
観客席から勇輝と共に模擬戦を見ていた刀花と未良が、その感想を言う。
「何より、人族の子の動きが良かったよ。前衛と後衛の間を取りまとめつつ、前衛の援護と後衛の攻撃までの時間稼ぎを行う。どこかで魔現師達が戦ってるのを見たか、学んだのかな。」
「うん。勇輝、今さっきの模擬戦はしっかりと覚えといてね。あれが魔現師の本来の戦い方だから。」
「本来の戦い方?」
「そう。魔現師はそれぞれに得意分野を持ってるから、チームで動くことが多いの。魔物と戦う時も、探索をする時も。で、魔物や敵と戦う時には今さっきみたいに、近距離攻撃を仕掛けたり、敵の攻撃を受け止める前衛、前衛の援護や、後衛の手助けを行う中衛、遠距離攻撃をしたり、味方の補助を行う後衛、って感じで役割分担をするんだ。」
「なら、1人で戦うことは無いんですか?」
「そりゃあ、場合によってはあるよ。なんなら、人によっては1人で戦う方が良いって言う人も、1人でそれらの役割全てを担える人もいるからね。」
「へぇ~」
「笑、その、1人で全部の役割を担える人っていうので、1番分かりやすい例は、未良だよ。」
「あ、確かに。ピージョとかオルジイさん、ドラさんと一緒に戦えば、他の魔現師と一緒に戦うのと同じですもんね。」
「まぁね。」
「ほんと、未良がいれば依頼が楽になって、助かるんだ笑」
「それはお互い様でしょ笑」
「え、そう?笑」
と、笑い合う2人を見ながら、仲良しだな~と思いつつ、勇輝は再び舞台に視線を戻す。
「よし、次にいくよ。」
模擬戦を終えた3人が、観客席に座ったのを見て、千躰がそう言う。
「ねぇ、そろそろ交代しない?連火も少しは疲れてるだろうし。」
と、3戦連続で戦おうとする千躰を、優愛が止めた。
「別に全然大丈夫だけど……そうだね。交代した方が良いか。」
「うん。さ、連火はこっちに座って。」
「笑、分かったから。」
そうして、位置を入れ替わるように、千躰は観客席に座り、優愛は舞台の中央に立つ。
「じゃ、次に戦う人を呼ぶよ!まずは、"騎道美波"ちゃん!あと、"岩本天弥"君と"岩本輝愛"ちゃん!」
「はい。」
「おう!」
「はーい!」
優愛に名前を呼ばれて、長剣を背負った長身の人族の女性…騎道美波はゆっくりと堂々とした足取りで。
虎のような丸い耳と尻尾、頬に黒い縞模様が入っている獣人族、"虎人族"の兄妹…岩本天弥と岩本輝愛は、元気よく返事をして観客席から舞台にジャンプした。
「よっしゃ!やっと出番だ!」
「え~優愛さん!なんでバカ兄貴と一緒なんですか!」
「なっ…それはこっちのセリフだ!」
「はぁ?」
「ちょっと、喧嘩はやめてよ~」
喧嘩をする兄妹を、困った表情の優愛が止めようとするが…
「マジで妹の癖に生意気なんだよ!」
「たった1つしか変わらないのに、偉そうに言っちゃって、ダッサ!」
言い合いを止める様子が全くない。
「この前から兄妹喧嘩が激しいとは思ってたけど……どうしよう…」
「はぁ……」
そんな状況を見て、優愛の次の指示を黙って待っていた騎道が、痺れを切らした。
「2人ともやめなさい!!」
「「っ!!は、はい!」」
強烈なプレッシャーと共に発せられた大声に、喧嘩をしていた2人は驚き、咄嗟に返事をする。
「ここまで来て喧嘩をするな。誇りある虎人族の名が廃るぞ。」
「「す、すみません…」」
騎道の言葉で、兄妹は大人しくなり、優愛は安心した表情になる。
「ありがとね、騎道ちゃん。」
「いえ。こちらこそすみません。」
「笑、真面目なんだね、騎道ちゃんは。」
「//…さ、早く始めましょう。」
「うん。3人とも準備は良い?」
「はい。」
騎道は背中から長剣を抜き、両手で持つ。
「はい!」
「もちろんだぜ!」
ビビっていた兄妹も、模擬戦が始まるということで、戦うことが好きな虎人族らしく、テンションを上げて、それぞれの得物を構えた。
「じゃ、連火!よろしく!」
「はいよ。では、模擬戦始め!」
という、千躰の合図を聞き、優愛は盾を構え、騎道はそんな優愛から一旦距離を取り、3人で作戦を立てようと考えていたのだが…
「さっきはダメなところを見せた分!ここで取り戻すぜ!!」
「優愛さん!覚悟ーー!!」
虎人族の兄妹は、笑顔で優愛に突っ込んで行った。
「嘘でしょ…」
「笑、元気が良いね。さぁ、かかって来い!」
「おりゃあ!!」
まずは、空中に跳び上がった天弥が、虎人族が持つ五指の爪を、優愛に振り下ろす。
それと同時に、輝愛は両手に持つ2本の短い槍の片方を、突き出した。
ガキンッ!!
優愛は、輝愛の槍を半身になることで避け、天弥の爪を盾で受け止めた。
「はぁぁ!!」
「オラオラオラァ!!」
それに構うことなく、天弥は優愛の周りを跳び回りながら、爪を振り下ろし、輝愛は天弥の体で死角になるところを、的確に槍で突いていく。
ガキンッ!!ガキンッ!!
「さすが兄妹。良い連携だね笑」
「全然!そんなこと!ないです!」
「連携じゃなくて!ただやりたいようにやってるだけだ!!」
絶え間なく攻撃を仕掛け、それを受けながら会話をする。
「じゃあ、連携のつもりがなくても、連携攻撃になっちゃうぐらいに息が合ってるんだよ。仲良しだね~笑」
優愛は本当に思ったことを笑顔で言っただけだったのだが、それは岩本兄妹の攻撃を単調にするような結果を生んだ。
「そんなんじゃねぇよ!!」
「仲良くないです!こんなヤツと!」
これまでは、お互いの隙を埋めるように攻撃を仕掛けていたのが、否定の言葉と共に同時攻撃を仕掛けてしまった。
「そうは見えないんだけどな~笑。仕切り直そっか。」
ガンッ!!!
優愛はそう言って、同時に盾に受けた爪と槍を弾き、天弥と輝愛を後方に飛ばす。
「くぅ~ダメか…」
「もう!バカ兄貴のせいだよ!」
「は?!ふざけんな!お前のせいだ!」
「違う!バカ兄貴のせい!」
と、着地した先で2人が言い合っていると…
「いい加減にしなさい!!」
舞台に騎道の声と波が広がった。
to be continued
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる