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  作るのはヒノキ風呂にしよう。少し広めに、男女別にそれぞれ十人交替で入れるくらいがいいか。

  各種強化全開で、ヒノキを探し回り持ち帰りとしていたら、いつの間にか昼になっていた。



  飯の準備をしながら大型ヒノキ風呂の話をしたら、皆が食いついた。
  会議で風呂の話が出たときは皆、五右衛門風呂の様な一人用の小さいのだと思っていたらしい。
  各グループから支障の出ない程度の人数を都合してくれるようだ。
  俺一人でやるつもりだったが、皆早く入りたいとのことだ。

  特に女性陣の目がヤバい。あの気迫は巨大狼が尻尾を股に挟んで腹を見せるぞ!



  今日の昼食は蛇肉だ。

  蛇肉はシンプルに炒め物でいい。
  道具が無いからじゃなく、単純に炒めて食べると美味しいからだ。
  塩と、野ネギ、小松菜、アクセントに砕いた松の実なんかを入れる。

  これだけでいい。これだけが、いい。

  便利なココナッツオイルを引いて、先ずは炒める。
  魔物はどうかわからないが、地球の蛇には寄生虫がいた。だからしっかりと火を通す。

  火を半分くらい通らせたら、細かく切った野ネギを入れて、馴染ませる様に混ぜる。
  混ざったら落とし蓋用の葉を被せる。鍋ではないが、蛇肉には水分が多いため逃がさないようにだ。
  少し火力を落として、中まで火が通るように時間を掛け蒸し焼く。
  十分に火が通ったら蓋を取り火力を戻し、小松菜を入れてサッと炒める。
  そこへ塩と砕いた松の実を入れ、混ざったら完成だ。



  プリッとした肉を摘まみ、口の中へ。

  噛むと、他のどの肉にも似ていない、不思議な食感が返ってくる。
  肉そのものにはそこまで強い味は感じない。
  ただ、噛めば噛む程じわっじわっと、内包された水分と共に、『蛇肉』の味が染み出る。これは実際に食べないとわからないだろう。
  そしてやや淡白なきらいのある蛇肉を、野ネギと松の実が左右から支えている。
  このハーレム蛇野郎め。

  蛇と聞いて顔をしかめていた殆どの女性陣に爆弾を投下。

  蛇肉って美容にいいんだぜ?

  奪い合いが始まりました。
  はしたないから止めなさい。まだまだあるから!



  腹も満ちたし、風呂作りの再開だ。

  シゲ爺もヒノキの加工を手伝ってくれるらしいので、そっちは任せる。
  俺や派遣されてきた手伝いさん達は、すのこや風呂用の壁を作る。

  風呂場は天井は無しになった。星や月を見ながら入りたいらしい。

  作業していると、オタトリオから派遣されてきたダイが話しかけてきた。


「兄貴、水はどうするッスか?」

「あ~、暫くは川から汲んできたのを沸かすか、俺が熱湯で出すかだな。いずれは水路を作って水を引っ張って来たいな」

「魔物を解体した時に出た魔石ってとってあるッスよね?」

「おう。街に行ったときの換金用に取ってあるぞ」

「水系の魔物の魔石を使えば水出せないッスかね?」

「え?」


  どうもこれもファンタジー知識であるようだが、魔石に魔力を流す事で、それぞれの属性に適した効果が出るのでは?ということらしい。

  色々試した結果、水を出すことは可能だった。

  魔力を指から流しながら魔石をつつけば、滲み出すように出てくるのだ。
  同じように魔力を指から流しながら魔石をつつくと、今度は水が止まる。
  オンオフ出来るのは助かる。ただ他の融通が効かない。

  まず水温。俺が冷たいイメージや熱いイメージを魔石に送っても、常に同じ水温で出てくる。
  味も何とも言えない。美味しい水のイメージを送っても効果は表れない。

  結論は、魔石の効果は固定されている。
  それと魔物の強さのランクによって出力や魔力の貯蔵量などが違っている。
  ダイはそう推論していた。

  何にせよこれは助かる。まだ魔法を覚えていない人でも少し魔力を込めてつつくだけで使えるのだ。
  俺が居ないときは活用してほしい。
  居るときは俺が風呂を入れよう。魔法の鍛練になるからな。



  現在の時刻は恐らく三時。
  全体休憩のついでにそれぞれの進捗を確認する。

  シゲ爺グループはもうヒノキの加工を半分終わらせたらしい。
  後二時間程で終わるので、それで今日はあがるとのことだ。まさにジジイ無双。

  オタトリオ達のグループは、一切のひび割れの無い窯が完成したとのこと。
  今は女の子達が思い思いの作品を作っているらしい。陶芸教室みたいに意外とそれもいい気晴らしになっていそうだ。
  交代で全員に一つずつ作って貰ったらどうだ?

  亮のグループは既に全員を収容できる数の小屋を建てたようで、掘、柵グループの助っ人に入っているらしい。
  そちらは今日一日では終わらないらしいが、トイレと柵の方は設置済みとのこと。

  俺の方は卓球台を完成させている。
  台と板は普通に木で、球はなるべく軽く丸い木の実を、中を抜いた後樹脂で接着し、更に音が出ないように周りも樹脂でコーティングし、多少の弾力をだした。
  あのカコッカコッて音がいいのはわかってる。でも流石に音が響くから妥協だ。



  そして俺は今から強制で三時間ほど睡眠だ。
  皆交代でしっかり寝ているので俺も寝ろとさ。

  狩猟中は三日間くらい起きてるとかザラだったんだが?
  そう言ったが、拠点中からため息の合唱が返ってきた。

  なんだってんだ?

  寝ればいいんだろ寝れば!
  おやすみなさい。
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