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26 貴族たちの陰謀
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「平民上がりの男爵令嬢を将来の王妃になど、誰が許すものか──!」
貴族の間ではリアナを追い落とそうとする動きがさらに渦巻き始めていた。自分たちが優位に立てる身分の差を盾に王やランスロットにリアナを拒絶する進言を重ねていた。
リアナの毎日は針のむしろだった。
「男爵令嬢が王妃になったことなどこの国では前例がないのに」
「あつかましいにも程がありますな。普通なら自分から辞退するものを」
貴族たちはわざとリアナに聞こえるように声高らかに噂しあった。
先日助けてくれたと思っていたタリオンも味方ではなかった。リアナは森の屋敷からきてくれた侍女や侍従以外、誰も信用できなくなっていた。
幼いセレナにさえ見下した冷たい視線を送ってくる貴族たちにリアナはどうすることもできなかった。
「私が元平民だからこんな扱いを受けるの…?」
リアナはセレナを守るように王宮の部屋に閉じこもるようになった。
タリオンはリアナに手を差し伸べたい衝動に何度もかられたが、貴族たちの手前ふんぎりがつかないでいた。
「ははは、引き込もりの平民女が」
うっぷん晴らしに思う存分リアナを罵倒していた貴族たちにある日衝撃の一報が入った。
「か、懐妊──!!??」
もちろん一番怒り狂ったのはテレーゼである。
あの女に、王太子の子という武器を手にさせてしまった!もう時間がないわ…!
「目にもの見せてくれる」
テレーゼの目は魔王の如く怒りに釣り上がっていた。
∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵
「王子だろうか、王女だろうか?」
ベッドで横になっているリアナに添い寝しているランスロットが愛おしそうにリアナのお腹を撫でている。
「名前、考えておいてくださいね」
リアナはつわりがひどく、ベッドから離れられない日々が続いていた。
「もちろんだ。セレナも兄弟ができて嬉しいか?」
歩くのがすっかり上手になったセレナを抱き上げ、ランスロットがセレナの頬にキスをした。
お優しい殿下…でも私とセレナは無事この先も過ごせるのだろうか…?
貴族たちの拒絶を前に、懐妊したとしてもリアナは不安を払拭できないでいた。
「お父様、お母様──」
リアナは引き出しから写真を取り出した。そこには、リアナの父と母とまだ幼いリアナが写っていた。
「かわいいな。小さい頃のリアナはセレナにそっくりだ」
ランスロットが微笑む。
「これはお母上か?」
父の隣の女性を指差したランスロットの問いにリアナは寂しそうに答えた。
「はい。遠い異国から来て父と結婚したそうです。私が幼い頃、病気で亡くなってしまいました。名前もちょっと珍しくて──」
「リアナによく似ている。きっと聡明な女性だったのだろうな」
しっかりして見えても、父も母もすでにこの世におらず、まだ幼子を抱えて生きるリアナの横顔にランスロットは胸がいっぱいになった。
貴族たちは毎日のように「示談金を払ってリアナを王宮から追い出すよう」進言してくる。王が病にふしているので彼らは尚更強気だった。
妬みとは、厄介なものだな。
ランスロットは貴族たちの猛烈な進言を振り切れない自分に不甲斐なさを感じていた。
∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵
ランスロットが急用で視察に出かけている最中、リアナの元にテレーゼから誘いがきた。
『つわりがおつらいとお聞きしています。気晴らしに闘鶏のショーをご覧になりませんか?セレナお嬢様もぜひご一緒に──』
リアナはここのところ何度もテレーゼの招待を断っていたので正直後ろめたさを感じていた。
闘鶏、といったら、ニワトリよね?それくらいなら大丈夫よね?
「テレーゼ様に出席するってお伝えして。ショーを観覧したら、またしばらく部屋にこもるわ」
侍女に使いを頼み、つわりに効くと言うお茶を飲みながらリアナは息を吐いた。
リアナとセレナに最大の危険が迫っていることも知らず──
貴族の間ではリアナを追い落とそうとする動きがさらに渦巻き始めていた。自分たちが優位に立てる身分の差を盾に王やランスロットにリアナを拒絶する進言を重ねていた。
リアナの毎日は針のむしろだった。
「男爵令嬢が王妃になったことなどこの国では前例がないのに」
「あつかましいにも程がありますな。普通なら自分から辞退するものを」
貴族たちはわざとリアナに聞こえるように声高らかに噂しあった。
先日助けてくれたと思っていたタリオンも味方ではなかった。リアナは森の屋敷からきてくれた侍女や侍従以外、誰も信用できなくなっていた。
幼いセレナにさえ見下した冷たい視線を送ってくる貴族たちにリアナはどうすることもできなかった。
「私が元平民だからこんな扱いを受けるの…?」
リアナはセレナを守るように王宮の部屋に閉じこもるようになった。
タリオンはリアナに手を差し伸べたい衝動に何度もかられたが、貴族たちの手前ふんぎりがつかないでいた。
「ははは、引き込もりの平民女が」
うっぷん晴らしに思う存分リアナを罵倒していた貴族たちにある日衝撃の一報が入った。
「か、懐妊──!!??」
もちろん一番怒り狂ったのはテレーゼである。
あの女に、王太子の子という武器を手にさせてしまった!もう時間がないわ…!
「目にもの見せてくれる」
テレーゼの目は魔王の如く怒りに釣り上がっていた。
∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵
「王子だろうか、王女だろうか?」
ベッドで横になっているリアナに添い寝しているランスロットが愛おしそうにリアナのお腹を撫でている。
「名前、考えておいてくださいね」
リアナはつわりがひどく、ベッドから離れられない日々が続いていた。
「もちろんだ。セレナも兄弟ができて嬉しいか?」
歩くのがすっかり上手になったセレナを抱き上げ、ランスロットがセレナの頬にキスをした。
お優しい殿下…でも私とセレナは無事この先も過ごせるのだろうか…?
貴族たちの拒絶を前に、懐妊したとしてもリアナは不安を払拭できないでいた。
「お父様、お母様──」
リアナは引き出しから写真を取り出した。そこには、リアナの父と母とまだ幼いリアナが写っていた。
「かわいいな。小さい頃のリアナはセレナにそっくりだ」
ランスロットが微笑む。
「これはお母上か?」
父の隣の女性を指差したランスロットの問いにリアナは寂しそうに答えた。
「はい。遠い異国から来て父と結婚したそうです。私が幼い頃、病気で亡くなってしまいました。名前もちょっと珍しくて──」
「リアナによく似ている。きっと聡明な女性だったのだろうな」
しっかりして見えても、父も母もすでにこの世におらず、まだ幼子を抱えて生きるリアナの横顔にランスロットは胸がいっぱいになった。
貴族たちは毎日のように「示談金を払ってリアナを王宮から追い出すよう」進言してくる。王が病にふしているので彼らは尚更強気だった。
妬みとは、厄介なものだな。
ランスロットは貴族たちの猛烈な進言を振り切れない自分に不甲斐なさを感じていた。
∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵
ランスロットが急用で視察に出かけている最中、リアナの元にテレーゼから誘いがきた。
『つわりがおつらいとお聞きしています。気晴らしに闘鶏のショーをご覧になりませんか?セレナお嬢様もぜひご一緒に──』
リアナはここのところ何度もテレーゼの招待を断っていたので正直後ろめたさを感じていた。
闘鶏、といったら、ニワトリよね?それくらいなら大丈夫よね?
「テレーゼ様に出席するってお伝えして。ショーを観覧したら、またしばらく部屋にこもるわ」
侍女に使いを頼み、つわりに効くと言うお茶を飲みながらリアナは息を吐いた。
リアナとセレナに最大の危険が迫っていることも知らず──
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