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38 丘

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記憶の底に眠っていた一つの風景が浮かび上がる。
 
 
懐かしい丘だ。
私と姉姫が育った場所だ。
 
 
男の子がこちらを見ている。
王族のような高貴な服を着て。
私と目が合うと、驚いた顔をした。
 
 
そうだ、父上以外には姿を見られてはいけないと言われていたのだった。
 
 
男の子が隠れろと叫んでいる。
王子、と呼ぶ声が響く。
誰か来たのだろうか?
 
男の子は私の元へ駆け寄ると、私と姉姫の手を引き小屋の中に隠した。
 
 
──静かにしているんだよ。
ここにいれば大丈夫だからね。
 
 
最後にやわらかい笑みを残し、男の子は小屋の外に出て行った。
 
あの日助けてくれた、まだ小さかった背中は──
 
 
 
 
────私は産まれて初めて、幸せに満ちた目覚めを感じた。
 
目を開くと、やわらかく微笑む王太子の顔がそこにあった。
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