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23 かたき

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刺客の隙をついて、ちょっとだけ姫に会ってみたんだけど、どうしたんだろう。
 
姫は僕を見た途端、大きな叫び声をあげて切り付けてきた。
危なかった。
腕は鈍ってなかったね。
 
姫、頭が混乱してる?
余計なこと思い出しちゃったみたいだね。
薬が強すぎたかな。
あの刺客が来て残念だったけど、相変わらず綺麗だったよ。
その目が好きなんだ。
光を集めたような、銀色の。
もう少しの辛抱だよ。
将来、僕の正室にしてあげるね。
 
そういえば、ここ数日、爺の姿が見えないな。
作りたいものがあると言ってた。
研究熱心だね。
本当は爺にも手伝って欲しかったけど。

待っててね、姫。
今、準備してるんだ。



 
〝シチ〟が来た。
 
姫の叫び声で寝室に駆けつけると、〝シチ〟と姫は刃をまじえていた。
 
ここ数日、姫は混濁状態が続いていたはずだが、本能が危機を察知したのだろうか?
さすが姫だな。
あらためて惚れるよ。
 
姫の周りで御殿医と警護兵が数名、絶命していた。
〝シチ〟の仕業だな。
俺は人の役に立っている人間を簡単に殺す輩は嫌いだ。
 
〝シチ〟は俺が追い払ったが、えらい厄介者に好かれてしまったようだな、姫。
姫に恋するまともな人間は俺だけじゃないか。
 
 
 
 
少年がきた。
 
少年の名前は覚えていない。
昔そばにいた気がする。
 
でも味方ではない。
 
遠くに行かなければならない。
あの子のいない遠くに。
 
父上、私を連れていって。
あの子の手の届かない遠くへ。
あの日のように──
 
 
頭は働かない。
でも体が勝手に動く。
 
父上が残してくれた技。
習得するまで何度も鍛えてくれた技。
私がぐずってもぐずっても、父上は諦めずに……
 
父上はもういないけど、父上が残してくれた技が私を支えてくれている。
 
 
────と、どうして私は知っている????
 
 
頭が痛い!
痛い!
痛い!
 
 
血を吐いた父上の顔がよぎる。
私は苦しくてうずくまる。
あの時、倒れた父上を見下ろしていたのは ──


焦点が合い始める。
輪郭がくっきりと浮かび上がる。



よくも……
よくも父上を……


少年。
目の前にいるこの少年が。

 
父上の仇!!

死ね!!
 
 
 
〝シチ〟!!!!
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