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17 叔父の企み

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姉があの者と恋仲になったときは絶望したものだ。
 
貴族である我が一族は、代々この国の大地主で湧いて出るほど金がある。
あとは一族の誰かが王の正室となって権力を握るのがわたしの目標だった。

姉は王族好みの美貌の持ち主で輿入れするには最適者だった。
一族一、透き通った銀眼の虜になる王族も多かったものだ。

それなのに、よりにもよって、暗殺部隊を束ねる部隊長と結婚するだと?
お腹にもすでに子がいると言う。
顔しか取り柄のない姉よ、しでかしてくれたな。
 
まあいい。
まだ手はある。
女子を産んでもらう。
女子なら使い用はいくらでもあるからな。
 
 
数ヶ月後、姉が無事に出産したが……
 
何?
女子の双子?
殺したくない?
  
つくづく面倒をかける姉だな。
しかし、なかなかに美しい赤子だ。
きっと姉に似て美貌の持ち主になるだろう。
うまく育てば姫として王子に輿入れさせることができる。
 
 
二人ともよく聞くのだ。
人目につかぬ遠い場所で双子を育てるといい。
わたしは口が裂けてもこのことは誰にも言わないから心配するな。
 
部隊長よ、感謝などよい。
わたしにとっても、可愛い姪たちなのだから。
 
 
案の定、双子たちは美しく育っていった。
ある時、双子が王族に見つかり殺されかけたと聞いた時は肝が冷えたが、部隊長がうまく処理してくれたようだ。
 
双子の姉の方は期待はずれだったが、侍女の報告によると、妹の方は王太子の心を掴んでいるというではないか。
記憶障害が気掛かりだったが、美貌のおかげか大した問題にはなっていないようだ。
産まれた時、処分しなくて正解だったな。
どちらか一方でいいのだ、正室となるのは。
 
わたしが野望に燃えている中、まことに由々しき報告が入った。
部隊長の隊がまるごと壊滅したという。
信じられぬ。
王国一の精鋭揃いだったはずだ。
しかも、若い頃から名を馳せたあの部隊長まで命を落としたというのか。


仕方あるまい。
このことは姉一家には伏せておく。
 
このまま双子の妹が王太子に見染められ、ことがうまく運ぶことを祈ろう。
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