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偽りの思い。

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アランとローゼの庭園でのイチャつきを見てから、早一ヶ月程が経ったが、アランがエレナの元に来る事は一度たりとない。

エレナからアランの元に行かないのもあるが、それでも以前のアランなら自分からエレナの元へと赴いてくれていたのに関わらず、、、今ではもうアランがエレナの元に姿を表す事はなく、偶にエレナ宛に手紙を送ってくるくらいである。

送られてくる手紙の内容もエレナの気を重くする内容ばかりで、エレナはあれだけアランに会いたくて堪らなかったはずが、会わなくなり二ヶ月も経つ頃にはアランに会うのが億劫だと感じるようになっていた。

アランに会わないでいるとエレナの思考は大分とまともになったのか、使用人達とも普通に話せるようになっており、初めこそおかしかったエレナを気味悪がっていた使用人達も今では普通に接してくるようになった。

ただ、まともに会話が出来るようになったからか、悪意をぶつけてくる者もおり今日も今日とて、「奥様、、今日も旦那様は帰って来ないらしいです!!!」と満面の笑みでやって来た侍女にエレナはため息を吐くのだ。

耳の位置で髪を二つに束ね、まだ幼さを残した侍女は自室で本を読むエレナ唐突にそう言うた。

束ねた髪の片側の枝毛を探しているのか、自身の髪をイジイジと弄りながら言う侍女の口元には笑みが浮かんでおり、侍女がエレナを馬鹿にしに来たのが明白である。

「あら、そうなの?」

本から目を離したエレナが興味なさ気に侍女を見て答えれば
「はい!今日はどうやらお二人で街にデートに行かれるようなんです!」
と興奮からか鼻息を荒くし侍女は続けて話すのだ。

「さっきまで私もローゼ様のお出掛けのお手伝いをさせてもらってたんですけど、ローゼ様って王女様なのに、それを鼻にかける事もなく、私にも優しくしてくれて!!
あっ、この前なんてリルテッド様と二人で手を繋いでデートしてたんですよ?本当の恋人みたいで、とってもとっても素敵だったんです!今日もこれからお二人でお出かけに行くようなので、旦那様を待ってても来ないんです!」とハキハキ答える侍女は
二人の仲睦まじい姿を思い浮かべたのか、夢見心地にうっとりとした顔をしながらエレナに話すのだ。

そんな侍女の話し方は、仮にもエレナの実家がどれだけ貧乏だろうと、侯爵夫人になったエレナに対し使っていいような態度ではない。
態度からして、エレナを馬鹿にする侍女はエレナを己より下に見ているのだろう、終始エレナを小馬鹿にするのだ。

「そう、、それで??貴方は何が言いたくて私の元へ来たの??まさかとは思うけど、そんなどうでもいい事を伝えるだけの為に来たのかしら?」

そんな侍女に対しエレナは優しくするつもりもなく、冷たく言い放てば「奥様!そんな酷い!私は、奥様が可哀想で可哀想で、、、もしかしてお部屋で旦那様を来ないのに待ってるんじゃないかなって思って、、。」と

ウルウルと目に涙を浮かべながら、悲劇のヒロインぶる侍女にエレナはため息を吐いた。
どうやら侍女の中で悪いのは自分になっているらしい。

それに、エレナを馬鹿にするのはこの侍女に限った事でなく、屋敷中の侍女や従者達にとってエレナは、仲睦まじいアランとローゼの仲を切り裂く悪者に見えているのだ。

「あら?ローゼ様と旦那様は只の幼馴染のはずだけど、、、あら?公然と浮気でもされてるのかしら?」

悪者に見えているのならば、とことん相手に嫌な思いをさせてやろうと思い、エレナが言い返せば、侍女はプルプルと肩を震わせながら「旦那様に言いつけてやるんだから!!」と勢いよく部屋を飛び出していくのである。

その後はきっと他の侍女仲間や従者達に、エレナに酷く当たられたなど言って回るのだろう、エレナの元に来るであろうアランからの手紙に綴られる言葉を思い浮かべ、面倒くささからか、はたまた悲しさからか、、重い溜息を吐くのであった。


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