上 下
5 / 36

旦那様の溺愛が凄い。2

しおりを挟む
結婚してから、エレナはアランの重すぎる愛を痛い程に感じてきた。

ある時はエレナが星が綺麗と言っただけで、煌びやかな宝石のついた天体望遠鏡を買ってきたかと思えば、「これで毎日好きな時に好きな星が一緒に見れるな。」と言われ。

「何が好きだ?」と聞かれたエレナは、昔飼っていたポムを思い出し「犬が好きです。」と答えたのだが、それを聞いたアランが次の日犬を飼いに行こうと言った為それを全力で止める事になった。

ある日、アランが着ていた服がとてもアランに似合っており、「とっても似合ってます。」と褒めたら、「そうか!」と喜んだ次の日から「そろそろ違う服が見たいです。」とエレナが言うまでの数日間、同じ服を着ていた。

他にもまだまだ、アランがエレナを好きすぎると感じる部分は沢山あるのだが、その重すぎる愛にエレナは少し困っていた。

困っている理由は沢山ある。
今だって、無駄遣い(アランにとっては必要な出費でも。)をどれだけ注意しても辞めてくれない。

エレナの気持ちをちっとも分かってくれない。
自分の気持ちばかり押し付けて、それをエレナが喜んでくれると信じて疑わない。

このままでは、、

「私は、嫌いになってしまいそう。」

ぽつりと呟いた心の声は、声に出して言ってしまっており、ハッと口元を抑えた時には遅かった。

聞こえてしまっただろうか、、と恐る恐るアランを見れば、青い瞳を揺らし、顔を引き攣らせたアランと目が合った。
「、、私はこんなにも好きなのにか?」

今にも吸い込まれそうな青い瞳は、薄らと浮かんだ涙によりゆらゆらと揺れている。

とても綺麗で、何もかも見透かされてしまいそうな瞳から逃れたく、顔を逸らすが、頬を片手で掴まれ、逃れる事は許されない。

「あっ、、違うの。今のは、その言葉のあやで。。」

「なら、私を好きって言って。」

いつもよりワントーン低い声は、聞いただけで怒っているのがわかるほどに冷たい。

顔を掴まれたまま、青い瞳から逃げようと視線を彷徨わせるが、「エレナ。」と冷たい声で名前を呼ばれれば、エレナはその瞳から逃れられない。

透けるように青い瞳とジッと目が合うが、その目からは怒りも悲しみも喜びも、何も感じられない。

ただジッとエレナを見つめるのだ。

、、あぁ、駄目。きてしまう。
アランの目を見てると、おかしくなってしまうのに。なのに、アランの瞳に吸い込まれるように見つめられれば、もうエレナはアランの瞳から逃れる事は出来ない。

暫く見つめ合ううち、エレナはニコニコと嬉しそうに笑い出した。

頬を強くアランに掴まれているにも関わらず、ニコニコニコニコと幸せそうにアランを見上げ、微笑むのだ。

その笑顔を見たアランは、同じようにニコッと微笑んだ。その笑みを見て嬉しくなったエレナはアランの体に飛びついたかと思えば
「好き好き!旦那様!世界一好きぃ!」と、屋敷中に響き渡るほど大きな声でそう叫ぶのである。

「プレゼント嬉しいか?」

アランが問えば、エレナはコクコクと力一杯頷いた。

「旦那様がくれる物なんでも嬉しい!ねっ、キスして!旦那様!早く早くキスして!」

女性から求めるのはあまり良くないと聞いた事があるが、そんなのどうでもよかった。

ただ早く、その形の良い唇に触れ合いたくて、アランの背中に腕を回し、顔を上にあげて、んーっとねだれば、アランの形の良い唇が自分の唇に当たった。

ふにっと一度だけ、一瞬だけアランの唇が当たったのだが、そんなので足りるわけがなく
「たりない、、もっと。ねっ、アランもっと。」と虚な目でエレナはアランを求める。

なのに、「、、私が嫌いなのだろう?嫌いな相手とのキスは嫌だろ。」とそっけなく返された。

エレナは目に涙をいっぱい溜めイヤイヤと首を振り、「違うもん!好きだもん!アラン好き!」と子供のように駄々を捏ね、ギュゥギュゥと力一杯アランの体を抱きしめるのだ。

「あぁ、可愛いな。私の妻は。」

目に涙を溜め駄々を捏ねるエレナの頬をアランがそっと撫でてやる。

アランの大きな手に触れられるだけで、エレナの胸は満たされ、アランが好きだと言う気持ちでいっぱいになるのだ。

そして、アランが好きだと言う気持ちでいっぱいになれば、今度は不安な気持ちに押し潰されそうになる。

アランはもしかしたら私の事を好きでは無いのかも。
アランが他の女性の元に行ってしまうかも。
アランが私を嫌いになるかも。と不安が押し寄せる。
「アラン好きって言って。エレナの事を好きって!ねぇ、好きって言ってよぅ。」

グズグズと涙を溢しながらアランに縋る。

いつもならばアランがその言葉を求める側であるが、今は逆であった。

グズグズと泣きながらアランに愛を求めるエレナを見ながら、アランは恍惚に笑みを浮かべるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

夫に離縁が切り出せません

えんどう
恋愛
 初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。  妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

生まれたときから今日まで無かったことにしてください。

はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。 物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。 週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。 当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。 家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。 でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。 家族の中心は姉だから。 決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。 ………… 処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。 本編完結。 番外編数話続きます。 続編(2章) 『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。 そちらもよろしくお願いします。

利用されるだけの人生に、さよならを。

ふまさ
恋愛
 公爵令嬢のアラーナは、婚約者である第一王子のエイベルと、実妹のアヴリルの不貞行為を目撃してしまう。けれど二人は悪びれるどころか、平然としている。どころか二人の仲は、アラーナの両親も承知していた。  アラーナの努力は、全てアヴリルのためだった。それを理解してしまったアラーナは、糸が切れたように、頑張れなくなってしまう。でも、頑張れないアラーナに、居場所はない。  アラーナは自害を決意し、実行する。だが、それを知った家族の反応は、残酷なものだった。  ──しかし。  運命の歯車は確実に、ゆっくりと、狂っていく。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

処理中です...