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王女様。

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「では、近々予定を立てようか。」

くしゃくしゃと私の頭を撫で回し、ロアンお兄様が優しく言ってくれる。

折角髪を綺麗にしたのに、そんなに撫で回されたらクシャクシャになってしまうのでは?とも思うが、ロアンお兄様に触ってもらえるのなら何でも良いかとすら思ってしまう。

「楽しみ。私、こんなに楽しみなのは初めて!!」

嬉しくてまたロアンお兄様に抱きつきそうになるのをグッと堪え、ロアンお兄様に笑みだけ贈れば、ロアンお兄様も優しく笑い返してくれる。

思い合えなくても、この時がずっと続けばと思うのに、人生そうは甘くない。

「ロアン!!もう!ずっと待っていたのに、中々戻ってこないから探しに来たじゃない!」

プリプリと頬を膨らませ、この会場にいる誰よりもきっと豪華で美しいドレスを着た、可愛い少女が私とロアンお兄様の元へと向かってくる。

「あぁ、ごめんね。メリア。」

「もう!私の誕生日なのに!ロアンの馬鹿!」

ごめんね。と謝るロアンお兄様に、その少女、、、王女様はロアンお兄様にギュッと抱きついた。

抱きつかれても、私とは違い引き剥がされる事はなく、その現実に私は胸がチクリと痛んだ。

「ほらほら、そんなに怒らないで。」

自分のお腹周りに抱きつく王女様の頭をロアンお兄様が撫でてあげれば、王女様は満更でもないのであろう、頬を赤らめながら「もう!こんなんで許さないんだから!」と怒っている。

目の前でイチャつく二人は誰が見てもきっとお似合いの二人なのだ。

見目麗しい二人は、勿論私から見たってとてもお似合いである。
だからこそ、余計に胸が痛んだ。

何故好きな人がイチャつく姿を目の前で見ないでいけないのか。
これこそ、拷問以外の何者でもない。

暫く二人で話した後、王女様は私に気づいたのか、ロアンお兄様に抱きついたまま、にっこりとその美しい顔に笑みを作った。

「ロアンに聞いてますわ。妹の様に可愛がっている子がいるって。貴方の事でしたのね?えーっと確か。」

うーんと首を捻り何かを考え出したかと思えばポンっと手と手を叩き、何かを閃いた仕草をした。

「そう!!そうだわ!ロヴェリディア伯爵家の子よね!」

思い出した様にいい無邪気に微笑む彼女はとても愛らしい。

「お見知り頂き、とても光栄です王女様。」

その場で礼をすれば、王女様はまた微笑む。

「国の事を知っておく事は当たり前のことですわ。それに、いつも私のロアンと仲良くしていただいているんですもの。ロアンはこの通り素敵でしょう?だから、誰かに取られるんではないかって、私不安で。不安で。」

絶対不安がってなどいないだろう。
王の命令の元婚約者になっているのだ。
ロアンお兄様が断れるわけもなければ、ロアンお兄様に手を出せる物など、いるはずもないのだ。

「だから!私、貴方の様に兄弟の様に仲の良い二人の事も初めは心配していたのですが、今日見て安心致しました。二人は私から見ても兄弟にしか見えないんですもの!」

王女様のその言葉に、悪気は一切ないのであろう。
ただ、見て思った事を言っただけなのだ。
なのに、私の胸はキリキリと痛む。

「メリア、、もう行こう。」
ロアンお兄様が王女様の手を取り、会場に戻る様に忠が、王女様はその手をそっと払い、私の元に近づいたかと思えば、私の手をギュッと握った。

「私も、貴方とお友達になりたいわ!」

嫌だ、、友達になんてなりたくない。
好きな人の婚約者と友達になるなんて、何の地獄かと、
そうは思っても、そんな事言えるはずもなく、「光栄です。王女様。」と返すしかない。

私の返事と共に「キャァ!嬉しい!」と王女様は抱きついた。
無邪気に喜ぶ王女様は、本当に可愛らしい。そう思ったのも束の間、「暗い夜道には気をつけてね。」と冷たい冷たい声で王女様は、私の耳に囁いた。 

王女様は私とお兄様の関係をよく思っていないと、その言葉を聞けばすぐにわかる。

王女様からその様な事を言われると思っていなかった私は、目を見開き驚けば、王女様は可愛いらしい笑みを作り、「またね!レイラ!」とロアンお兄様にベッタリと引っ付きその場を後にするのだ。
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