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第三章

彼が狂った理由。3

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アスランは元々余り笑わない子ではあった。

デラクスの不倫のせいで、シェリアはいつも寝たきりであり、そんなシェリアを安心させる為にアスランは毎日、ニッコリと微笑んでみせた。

アスランはキチンと笑えているつもりでいたが、無理やり造られた笑みは口角が酷く吊り上がり少し不気味である。

最初こそわざと作っていた笑みも、気づけばアスランはその不気味な笑みを自然としてしまうようになっていた事に、気づいてはいなかった。

笑わないでいると愛人の女に鞭で打たれる。
愛人の女はそのあと父に何と言ったのか、何かを聞きつけ激昂した父に今度は打たれると言った日々がしばらく続いていた。

愛人の女と違い、デラクスは目に見える場所でも気にせず鞭で打った。
そして、その傷が癒えぬまで、外に出される事はなかった。
部屋に閉じ込められ、食事だけを与えられる生活。 

時間を持て余すアスランは、その時間を筋肉作りの時間として活用した。

「アスラン様!素敵!」と自分に笑みを向け抱きついてくるルディリアナを想像すれば、自然と不気味な笑みを浮かべており、「あぁ、、早く会いたいなぁ。」と呟くのを見た侍女は部屋に閉じ込められたアスランに哀れみの視線を送っていた。

だがそんな監禁のような生活が続いたある日、マリンに適当に笑みを作れば、マリンは大層機嫌が良くなり、笑みを作った日は2人から打たれる事はなく、寧ろ頭を撫でられ褒められた。

何だ、、こんな簡単な事でよかったのかと気づいた時から、アスランは2人の喜ぶように笑ってやるのであった。

アスランは傷が癒え、ルディリアナ好みの筋肉もついた頃、ルディリアナを王宮の一室へと連れてきた。

既にデラクスと良好な関係を築いていたので、大切な人を大事にする為に、練習台が必要なのです。と適当な嘘をつけば、デラクスは「そうだな、いい考えだ。」とルディリアナを連れてきた事に賛成してくれた。

マリンもそれに何かを言う事は特になかった。

「あぁああ。僕のルディリアナ。僕のルーナ。」

目の前にずっと会いたかったルディリアナがいる。
そう思うだけで既にアスランの頭はおかしくなってしまいそうだ。

「なっ、、なんで今頃。」怯えながら言うルディリアナを見ると、アスランはとっても申し訳のない気持ちになってしまう。

自分のせいで愛しいルディリアナに寂しい思いをさせてしまっていたのだと思うと、悲しくて胸が苦しくなった。

謝罪の意味も込め、チュッとその口にキスしてやるとルディリアナの唇は驚くほど柔らかく、アスランは幸せでどうにかなってしまいそうである。

閉じ込められている間、まだ幼いアスランにとって、ルディリアナと過ごす事だけを考える事が、彼の心を救っていたのだ。

目の前にいるルディリアナは、アスランにとって尊い存在になっている。

「好きじゃないです。怖いです!」とルディリアナは言うが、自分が長い間待たせたせいでそんなふうに言うのだと、アスランにはわかっている。

だって、アスランがこんなにも思っているのだ。だから、ルディリアナはこんなにも思われて、自分を好きではないなんてあり得るはずがないのだ。

キスをした後、眠ってしまったルディリアナを抱きしめると、「んんっ、、。」と身じろぎ何とも可愛い声を出すものだから、そっと抱き締めてやると、その体は筋肉のついた自分と違い柔らかい。

ルディリアナからは甘い花のような香りがしアスランは己を抑え込んだ。

「ダメダメダメダメ、ルディにはまだ手を出さない。そう、大切に大切にするんだ。あぁ、ルディ、ごめんよこんな不甲斐ない僕で。きっと君を幸せにするから、ごめんよルディ。」とルディリアナが眠っているのをいい事にアスランは1人でにつぶやいた。

この時のアスランはとっても幸せであった。

デラクスとマリンが手を出してくるといけないので、外には余り出してはやれないが、ルディリアナならわかってくれるだろうと、何故外に出せないのか説明をする事もなく、部屋に監禁した。

だって、思いあってるのだ。全てを言わなくてもわかってくれるだろう。

早くルディリアナと幸せになる為に、アスランは毎日マリンとデラクスに気に入られるよう、媚を売ってやる。

アスランの計画は順調に進んでいる。

全てはルディリアナとの幸せな未来の為に。順調に進んでいたはずなのに、、、今目の前にいるルディリアナは、アスランを愛してると言った彼女ではない。

「あの、、、だれですか?」と怯える表情でアスランをみる愛しい愛しいルディリアナがいる。

そんなルディリアナを見て、アスランは「何故、、、。」と思った事を口に出してしまっており、そしてその目からはツーッと涙が溢れていた。

誰か教えてほしい。僕は何を間違えてしまったのか。全てはルディの為なのに。 
彼女は何故自分を忘れるの?こんなにも愛してるのに。何故?

アスランの問いに答えるものは、誰もいなかった。

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